某ギターメーカー社長室

ギターメーカー社長の色々な出来事

ポリとウレタンは違うんです。

2005-10-31 12:42:23 | 楽器
塗装の質問や指定で"ポリ塗装"と"ウレタン塗装"が"="になっている方が多いんですよね、確かに"ポリウレタン"と言う塗料で塗装致しますので当らずとも遠からずではあるんですけど(笑)

一般的に"ポリ塗装=分厚くて安い"と言うイメージの物は"ポリウレタン"ではなく"ポリエステル"塗装なんですよ。

安価なギターでぶつけたりするとボロッと塗装が"欠ける"あれですね。
ところが同じポリでも"ウレタン"はかなりラッカー寄りで塗装も非常に薄い物が殆どなんです。
塗装の厚みが違うのは塗料の"硬化スピード"の違いにより塗装方法が異なるからです。

ポリエステルと言う塗料は硬化の時間が非常に短く硬質に仕上がります。
ですから一度に分厚く塗装しても硬化スピードが速いので空気に触れている表面と生地に近い中側との"硬化のタイムラグ"が無いんですね。

このタイムラグが大きいと表面が乾ききってしまう為に中側がいつまでたっても乾燥しなかったり、ピンホールや気泡等発生してしまうのです。

ですから量産品は工程の少なくて済む"ポリエステル塗装"をしているんですね。
対して"ウレタン"は硬化スピードがあまり速くないので厚塗りをしてしまいますと上記のようなトラブルが発生してしまいます。

ですから"ウレタン塗装"に関してはラッカーと同じように薄く吹き重ねて塗装を致しますので"無駄な吹き着け"が無く薄い仕上がりになっているんです。

しかも塗料自体はラッカーよりも高価なんですよ(笑)

では何故ラッカーの方が値段が高いのか?
やはりウレタンもラッカーと比べれば塗膜は硬質なので組み込み時や作業する際の扱いが楽なのと、ラッカーよりも硬化スピードが早い為にちょっとだけ塗膜は厚いんです、ですから作業工程も多少効率的ではあるんですね。

でも、ほんのちょっと厚いだけですよ、0.何㍉と言う世界でほぼ同じ程度の厚みなんです。
それこそポリエステル塗装ですと3㍉位あるのでは?これはもはや"コーティングでは?"と思ってしまう位の物がありますので其処まで行ってしまいますと明らかに"生鳴り"に違いが出てしまいますが、ウレタンでしたら出音は殆ど変わらないと考えて頂いて大丈夫なのです!

ワイルドタイガー入荷

2005-10-30 00:14:48 | 楽器
今週トップ材用の"ワイルドタイガー"が入荷しました~♪
スジトラは結構良い物が入荷しますが、今回のようなうねったトラ目はナカナカ無いんですよね。

もう少し早ければショー用に使えたのに残念ですな!

ソフトメイプルと言うのは個体差があって結構"木自体"に色が付いている物が多いんですよ。
黄色い物や茶色っぽい物とかね。

材料が材料だけに"シースルー系"の色に使用するので、青とかだとナカナカ使えるのが無いんです。
黄色っぽい物にシースルーブルーを吹き付けると緑色になるんですよ(笑)
絵の具とか混ぜて色作るのと同じなんですね。

ですから当然"白い物"の方が発色も良いですしどんな色目でも大丈夫なんですよ。
で、今回入荷した物はかなり"白い"上物でした♪
結構嬉しいですね~良い材料入荷すると得した気分です!!!とは言え自分のギターになる訳ではないんですよね(笑)

ショーモデルのギター

2005-10-29 00:22:38 | 楽器
現在ギターショーに向けてギター&ベースの製作に追われております(汗)
この時間になっても先が見えずにまだ会社・・・・しかも私は立場的に仕方の無い事としても、私だけではなく皆残って作業してくれてます、頭が下がります(汗)

で、今日もNEWギターが完成!これもショーモデルだけあって”度派手!”に仕上がりましたよ♪
今回は”マーブルカラー”に挑戦!そう、あのジェームズタイラーでお馴染みの極めてアメリカチックな色ですな。

塗装方法は極めて原始的で数色のメタリックカラーを重ねて吹きつけ、あとはサンドペーパーでランダムに磨き塗装を落とす!
これの難しいところは”どんな柄になるか想像し難いところ”何です。
塗装を落としながら感覚でやるもんで自爆する事も考えられるんですよね(笑)

収集付かなくてやり直しみたいな(汗)
しかし、今回は何とか一発で着地成功~♪それっぽく仕上がりましたよ。

余談ですがメタリックのカラーって塗り方が2種類あるんです。
またの機会にお話しますね!

ネック調整での”アイロン”は効果的か?

2005-10-27 23:36:41 | 楽器
ネック調整の依頼時に”アイロン”をかけて欲しいとの要望を受ける事が良くあります。
まるで”アイロンをかければ何でも直る”位の”神話”でもあるかのごとく、ロッド調整だけでは無理ならアイロンでと依頼されるのですが、これは間違いです。

確かに効果が無い訳ではないですし、クラシックギターのように”トラスロッド”が入っていない場合は調製のしようが無いので仕方が無いとは思いますがね。

昔のギターは接着剤として”ニカワ”を使用しておりました。
ニカワは熱をかけると溶けますので、アイロンを当てながらクランプ等でしっかりと固定しておくと反ったネックと指板を接着しているニカワが溶け”ズレ”を起こします。

そしてズレた状態でアイロンのタイマーが切れ、冷めるとズレた状態で固まりネックの反りが改善されると言う理屈なのですが、最近のギターは”接着剤”を使用しております、ちなみに弊社は”タイトボンド”と言う輸入品です。

で、このボンド等は熱をかけても溶けないんです。
すなわちネックと指板がズレる事が無いんですね。

と言う事は単に熱をかけてクランプにて力をかける事により強制的に”変形”させているのと同じとお考え下さい。
竹細工の籠みたいなもんです。

しかしこれではネックの反りの元凶”指板とネック材の伸縮の不均等”とでも言いましょうか、これを直した事にはならないんですよね。
強引に変形させるだけだとすぐに同じ状態に陥り、いくら直してもそれを繰り返す事となってしまう事が多いのですよ。

我々もアイロンを使う事はあります。
但しそれは指板張替え&ロッド入れ直し修理の時、ロッド等を仕込む前にアイロンにて強制し、ある程度真っ直ぐにした状態でロッドを仕込み指板を接着致します。

これですとズレる訳ではありませんが、ネックを真っ直ぐにしてから改めて指板を張るのですから、結果的にはズレたのと同じ事となりますよね?

では、タチの悪い反りを起こした場合はロッド入れ替えになるか?と言うとそんな事は稀であると考えて大丈夫です。
7割方はすり合わせ、残り3割の内殆どが指板調整&リフレットまでで何とかなります!

魂"kuon-guitar"

2005-10-26 16:37:14 | 楽器
ついに!"魂/kuon-guitar"完成!ですです。
ショー用で国内初お目見えですね~♪

まだ日本国内での販売予定は未定で、非売品ですが価格は¥1,200,000-となります。
ホンジュラスローズボディー&ネック、ハードメイプルトップ、ハカランダ指板でメキシコアワビのインレイバリバリ~!

ブラシペイントで度迫力の金剛力士、PUカバーに般若&金閣寺の彫金をしてあります♪
エスカッション・SWノブ・VOL&TONE・ウラパネ・トレモロパネル・トラスロッドカバー・・・全てハカランダ製と言うこれ以上無い位贅沢な仕様となっております!!!!

ギターショー用ベース完成!

2005-10-25 14:32:01 | 楽器
11月3・4・5・6日にパシフィコ横浜にて行われるギターショー用のNEWベースが何とか完成!6弦ベースです”Mega BASS”としました。
結構カッコ良いのではないかと思わず自画自賛!

ウチはなんとなく”ギターメーカー”のイメージが強いらしく”ベース作れるのでしょうか?”と言う質問をされる事が少なくないんですよ(笑)
ここらで一発気合の入った新製品でベースなんぞ作ってみようかと試行錯誤し完成させました~♪

まぁTVや雑誌に出るのがどうしてもギターなので仕方が無いですが、ベースも良い音するんですよ(笑)
興味のある方は会場にお越し下さいね!

本日のベース修理

2005-10-25 06:12:00 | 楽器
さてさて、ここ何日か”自分で~”シリーズにてネック調整の話をしてきたので、今日実際にあったお話をしますかね~♪
これも良くあるパターンなんですが”トラスロッドの締め過ぎ!”が原因で大きな修理に発展するケースです。

ビューレットナットでブロックポジションマークの楽器で起こるのですがトラスロッドを締め過ぎて”指板剥がれ”と”ポジションマーク浮き”そして”指板&ポジションマーク割れ”を併発と言う文章で書くと末期的な印象すら受ける恐ろしい事態になる事が良くあるんです(汗)

これはトラスロッドの構造とブロックポジ&ビューレットのネックの構造によるものなんですね。
トラスロッドは締める事によりトラスロッド本体にネジが切ってある為、外側に引っ張り出される形となります。

この際、ネック内にロッドは湾曲して埋め込まれている為に曲がった部分が真っ直ぐになりネックの反りが治ると言う仕組みなんですが(この辺りは後日詳しく説明しましょう)、これはロッドの”ナット”がネック内に埋め込まれている金属のプレートに当たっている為にナットではなくロッドが外側に引っ張られる事になるんです。

つまり、ロッドを引っ張る際にその負荷は全て金属のプレートに掛かる訳ですね。
ロッドの湾曲具合に余裕があれば問題無いのですが、真っ直ぐに伸びきっているにもかかわらずロッドを締め付けてしまいますと”トラスロッドナット(キャップ)””ロッド本体””プレート”これ全て金属です。

対するネックは当然”木”となりますから強度的には金属が圧勝!
すると負荷がかかっているプレートが木にどんどんめり込んで行き、ネックが変形してしまい上記のような恐ろしい事態に発展してしまいます。

無理な調整は控えましょうね。
特に70sタイプの物は埋め込まれている金属プレート部分の強度がビューレットやブロックポジの為にやや弱いですから気をつけましょう!

自分でギターやベースの不具合を特定しよう!四

2005-10-24 23:19:35 | 楽器
さてさて、四回目は”ハイ跳ね”についてです。
これも非常に簡単です、15フットから最終フレットまで単音で弾くだけ!

トラスロッドは構造上15フレット位までしか効きません、ですからこの”ハイフレット部分”で音が詰まったりビリ付いた場合は”調整”が出来ませんので無条件で”すり合わせ”となってしまうケースが多いです(汗)

その原因の殆どはネックポケットの状態に関係ある場合とフレット浮きとなります。
ネックポケットは通常ネックに角度を付ける為にボディーに対して水平ではなく”やや斜め”になっているのですが、量産品の”シム(スペーサー)”を挟む事によってその厚みの分角度を付けていたりします。

またシムを挟まなくても多くの物は塗装後のセットアップ時に”ポケット整形”をしていないのが現状で、ポケットに塗装が乗っていたりします。

そこにネックを取り付けてネジでボディーに締め付けて固定する訳ですから、スペーサーや塗装の厚み分ネックが歪んで取り付けられてしまうのです。

軽症ですとポケットを整形する事によって改善されますが、製作してから時間が経っていますとネックに癖が付いてしまいポケット整形だけでは治りません。
良くて”すり合わせ”最悪”リフレット&指板調整”が必要となります。

この状態に陥ってしまうと”すり合わせ”だけ行ったのでは暫くするとまた元通りになっちゃうんですよ・・・・問題の”大元”はそのままですからね。
ですからポケット調整も併せて行う必用がありますので費用的にはかなり行ってしまいます!

皆さんのギターやベースは大丈夫でしたか?(笑)

自分でギターやベースの不具合を特定しよう!参

2005-10-23 11:21:00 | 楽器
その弐で隙間が開いている方が居たようですね(笑)では前回で透き間が開いていなかった方々!まだ安心してはいけませんよ♪

今度は波打ちのチェックをしないといけません。
もうお解かりと思いますがこの一連の方法は”弦は常に直線”と言うのを利用した判別方法なんですね。
ですからこの”特長”を活かし”浪打”をチェックしましょう。

これは前回で隙間があった方、無かった方、どちらの方々も行って下さい。
やり方は前回と同じなんですが前回右手は”最終フレット”を押さえましたが今回は12フレット以降を押さえます。

まず12フレット辺りを右手で押さえ、左手はそのまま。
そして7フレット辺りを叩く。
終わったら7フレット辺りを押さえ3フレット~4フレット辺りを見てみる。
これを6弦~1弦まで順次行う、見方も前回と一緒で隙間があれば”順反り”叩いて音がしなければ”逆反り”となります。

前回では隙間があり”叩いて音がしなかった”のに”今回は音がする”とか、もしくは”その逆”。
つまり叩くポジションによって”順反り部分”と”逆反り部分”が一本のネックに混在する場合は浪打ですとなります。

トラスロッドは基本的に1本のネックに対して”順逆”どちらか一方の反りにしか対応していませんから”浪打”を調整するのはナカナカ大変ですね。

まぁ、12フレットの隙間と3フレット辺りの隙間が”同じ”なんて事はありませんが、深刻なのは12フレットを確認した時には1ミリ位隙間があったのに7フレットから3フレット辺りは弦がフレットにピッタリくっついており全く音がしない!の様に極端にポジションによって異なる場合ですけれどね。

ただ”浪打”と確認できた場合はかなりの高確率ですり合わせが必要になりますので出費は覚悟して下さい(笑)

さぁ、次回はハイ跳ねのお話ですね♪