某ギターメーカー社長室

ギターメーカー社長の色々な出来事

ギターとベースのグレードアップⅢ

2006-02-24 19:38:48 | 楽器
さて、続きです!
本体の鳴り方にはネックの状態も関係してまいります。
ネックの按排が良くないという判断をする場合、音がつまるとかビリつくとか色々あると思います。

が、ビリツキ等が無くとも具合が悪い事があるのです。
厳密に言えばビリツキが音として聞こえていないだけで、実際は弦が振幅する際にかすかにフレットに当たって振動を殺してしまっているケースがございます。

ちなみに弊社では弦高を1弦12フレットで1.2ミリ程度にセットアップ致します。
ここで、同じ1.2ミリの弦高でも実際は0.8ミリまで弦高を下げても問題無く弾ける物と1ミリまでしか下げられない物、同じ1.2ミリにセッティングしたとすると、より低いセッティングが出来るようになっている物の方が良くなります。

1.2ミリでどちらもビリツキが出ていないとしても鳴り方が違うのです。
すり合わせ=ビリツキが出てしまうときに行う修理と言う事だけでは無いんですね♪
良い鳴り方をさせる為に、たとえビリツキが無くともすり合わせをすると良いと思います。
結構変わりますよ。

すり合わせをする際にナットの交換もやってしまうと良いでしょう。
ナットを取り付ける溝は製作する工程の関係で指板Rと同じRが付いている物が殆どとなります。
もちろんLPの様に異なる物もございますが、ヘッド角度無しのネックの物は基本的に溝の底にRが付いているとお考え下さい。

その為に当然の事ながらナットの底の部分にもRをつけて取り付ける事になるのですが、量産品はこのRがあっていない物が結構多いのです。
ナットの中央部分とかでナットが折れてしまうのは、Rが合っていないとR部分の頂点に近づくにつれ隙間が出来て、強度的に弱い為にそこが折れてしまうのです。

弦振動がネックに伝わるのは支点部分となっている”ナット”ですから、これがネックに隙間が開いている状態で着いているのでは、しっかりと振動を伝える事が出来ません。

音質向上並びにチューニングの安定を図る為にもキチンとしたナット取付けを行わなければなりません!

続きは明日

ギターとベースをグレードアップ

2006-02-23 19:40:16 | 楽器
さてさて、昨日の続きです、2大テーマについて具体的に考えましょう。
まず隙間(空間)に絡めて振動の伝わり方を考えましょう。

10センチ角の立方体が2つあると仮定して下さい。
とりあえず立方体A(以下A)と立方体C(以下C)とします。

今、Aが振動しています、Cは振動していません。
Aの振動をCに効率良く伝えるにはどうするか?AとCをくっつけます。
同じ大きさの物がぴったりとくっついておりますから言ってしまえば横20センチ縦と奥行きが10センチの直方体となります。

そうです、この状態だと1つの塊になりますので当然隙間は0で振動のロスも0です。
ではAとCの間に1センチ角の立方体B(以下B)を挟むとどうでしょう?
AとCが接している部分は各々Bの平面1平方センチのみとなります。

残りの99平方センチは隙間です。
この状態でももちろん振動は伝わりますが、1と2が直接ついている場合はAの1000立方センチの振動がそのまま伝わるのですが間にBが入ってしまいますとまずAの1000立方センチの振動がBの1立方センチの物体を振動させます。

次にBの1立方センチの振動でCの1000立方センチの物体を振動させなければなりません、これは非常に大きいロスとなります。

振動をよりロス無く伝えるには密着面をいかに増やすか?隙間をいかに少なくするか?が大切と言う事がお解かり頂けたでしょうか?

実例を挙げますと皆様良くご存知の”ディープジョイント”これなどは上記内容を加味した最高の例題ですね♪

ネックがボディーに深く入ると言う事はネックの材料とボディーの材料の密着する面の面積が増えます。
ネックの振動をボディーに、ボディーの振動をネックに伝えるにあたって非常に有効な方法ですね。

また、ST等でトレモロを固定してしまう方法も同じです。
弦振動がブリッジを振動させその振動をボディーに伝達する際、イナーシャブロックの前後を埋めてしまう事によりブリッジとボディーの接する面積が格段に大きくなります。

前々回書いたFRTのお勧め改造方は上記内容の実例です。

弊社で推奨しておりますボルトオンのポケット部分の整形等も上記内容を考慮した改造方法です。
この部分はブリッジサドルの高さセッティングによるテンションの変化も絡んでの話ですが、ボディーとネックの密着の面積を増やすと言う意味合いも多く含んでおります。

ネックと言うのはボディーに対して水平に付いている訳では有りません、角度が付いております。
これはブリッジの厚みとの関係となります。
水平に付けてしまいますとネックエンド部分のボディーから指板面の高さよりもブリッジの厚みの方がありますので弦を張りますと物凄く弦高があがってしまいます。

目一杯サドルを低くした所でサドルからナットまで真っ直ぐに弦が通りますのでどうしても弦高が高くなります。
これを解消する為にネックには必ず角度が付いております、図を見て頂ければ一目瞭然でしょう。

で、この角度を付けるにあたって”シム”と言うはさみ物をしているケースが非常に多いです。
ジョイント部分にちょっとした厚みの紙等を挟んで、その厚み分角度がつきます。
しかし、挟み物をする事により角度が付くのですから当然その厚み分ポケットに隙間が開きます。

これは完全にNGです、隙間を開けずに角度を付けるにはポケット自体を綺麗に平面出しをしながら斜めに削って角度を付けなければなりません。
ポケットに角度が付いていれば完全に”面”でネックとボディーが接する事となります。

ただし、この作業は非常に手間が掛かるので、この”挟み物”と言う方法は良し悪しは別として合理的な発想ですよね(汗)
生産性を追及した結果でしょう。

また、ポケットに塗装が乗っている物も多いです。
当然乗っている所と乗っていない所では塗装の厚み分で凹凸が出来ます。
まっ平な物をそこに取り付けた場合、当然隙間が開きますので全て除去する必要があります!

う~ん、書き出したは良いが物凄い回数に分けないといけませんね・・・・続きは明日。

ギター&ベースグレードアップ

2006-02-22 18:38:43 | 楽器
お手持ちのギターやベースをより良くしたい!と思われる方は当然多い事でしょうね、その為に色々な改造用パーツが有るのですからそう考えるのは当然です!

グレードアップの方法には大きく分けますと2通りの方法があります。
楽器本体をアップグレードする方法とハードウェア(電装パーツ含む)を交換する方法です。

普通は雑誌広告や店頭等で見かけるハードウェアに目がいってしまい、交換をご希望なさる方々が多いのですが、果たしてそれが一番効果的なのでしょうか?

折角改造なさるならより”効率良く効果的”に改造した方がお得です。
それには改造をする”順序”が大切となります。

この順序を間違えてしまいますと、折角大枚を払って改造しても思った程の効果が得られないケースや、ハードウェア本来の持つ性能をフルに発揮できない事が殆どとなります。

まず伝送系のパーツを考えましょう。
一番ご依頼が多いのはピックアップ交換です。

そもそもピックアップと言う物は一般的な音を拾うマイクとは異なり音を拾うと言うよりは”振動”を拾う物となります。
現にアンプにつないでピックアップの前で歌を歌ってもアンプからは音が出ませんよね?

この”振動”とは当然”生鳴り”の事です。
この話は一度ここで終わります、後でまた持ち出しますが一旦終わりです!

仕切りなおして今度はブリッジやナット他のハードウェアを考えましょう。
まず、何の為にハードウェアを交換するのか?
例えば人気のチタンサドル等はその硬質な材質ゆえ音質の変化はもちろん、振動の伝わり方等が変わってまいります。

では、音質が変わるのはなぜか?
”材料が硬いから”と言う答えでは三角なんです。
その硬い音質はどう言う順番でピックアップが拾って音になっているかを考えなければなりません。

上でも述べたようにピックアップは振動を拾います。
つまりサドルで音が変わります、音は”波(振動)”ですから、それがボディーやネックに伝わります。

最終的にピックアップで振動を拾ってアンプから音が出ます。
つまり”鳴り”がしっかりしているからこそ交換したハードウェアの特徴が前面に出て参ります。

ボディーやネックが何で出来ているか?
これも同じです。
ボディーやネックが振動する為に作っている材料の持つ音質が前に出てきます。
振動しないのであれば何で作られていても同じですからね。

このようにハードウェアの構造や材質の変化によって出音が変化するのはボディーやネックがしっかり鳴ってこそとなります。

つまり鳴らない楽器ではハードウェアの特性等をフルに発揮する事が出来ないと言う事ですね。

では、どうすれば生鳴りが良くなるのか?
それは弦の振動をいかに殺さず、ボディーやネックに伝達するかを工夫しなければなりません。

それには2つの大きなテーマがあるんです。

まずひとつは”空間は振動が伝わらない”と言う事です。
振動は触れている部分からしか伝わりません。

そして2つ目は”振動の妨げになる物を削除する”です。

ハッキリ言って当たり前の事ですね(汗)ただ奥が深いんですよ(笑)
次回以降は具体的にどんな事があるのか?この2大テーマについて考えていきたいと思います♪


最近人気のFRT

2006-02-20 18:42:39 | 楽器
なんか久しぶりの更新で大変恐縮であります(汗)
なんと更新する為に必要なパスワードとIDまで忘れている始末・・・・信じられないような話でございますな。

さて、最近80年代のHR/HMがまた息を吹き返して参りましたね、オーダーメイドでギターを作っているとかなり顕著にその時々の流行という物がご依頼内容に反映されているので面白いです(笑)

ここのところブリッジにFRTのご指定を頂く事が多く、ギターも80年代!と言ったような仕様が目立ちます。
一般的にはFRTは音が良くない!などと言われる事も少なくは無いのですが、実際はそんな事はありません。

まぁシンクロ等と比較してしまいますとテンションが柔らかい為に鳴り方は若干劣りますがセットアップ次第ではかなり太い鳴り方を致します。
それには”トレモロアップ”を犠牲にしなければなりませんが、案外ダウンは多用するもののアップは無くても何とかなるのですよね。

FRT付きのギターですとVH仕様以外はほぼ100%アップが出来るようになっておりますので、無くても平気な方はお勧めの改造がございます。
イナーシャブロックの前側とボディーの隙間を木材にて埋めてしまうのです。

前側だけですのでダウンは今まで通り可能ですし、イナーシャブロックの”鳴り”がボディーにダイレクトに伝わりますのでかなり変わります。
あわせてスチール製のブロック等に交換致しますとハイの倍音の出方が変わりますので芯のある太い鳴り方になりますのでお勧めです。

ちなみに私のギターも当然そのようにしています(笑)
これはFRTに限らずシンクロ等でも同様の事が言えますのでお試し下さい。

前側を固定する事により弦交換もかなり楽になります、これは弦の張力とスプリングの張力の均衡を図る必要がありませんので、アップを使用しない方は一挙両得です!

その際お勧めのセッティングは5弦をベンドした時にかすかにブリッジが持ち上がる位に裏のスプリングを調整いたしますと非常に気持ち良い鳴り方です。
私はスプリングを3本使用し、上記程度の張力にして使用しております。

まぁ若干アームダウンが重い感じはございますが、音が太いので我慢しましょう。
アームの効き具合は変わりませんから、本人が頑張れば機能上の問題は全くございません!

音重視!アームはダウンだけでOK!弦交換が大変・・・・と思っているあなた!結構具合良いですよ♪