水銀党本部執務室

冬月のブログです。水銀党本部の活動や、政治社会問題、日常の中で感じた事など様々なテーマで不定期に更新されております。

まきまき17参加を終えて

2013-05-13 02:41:10 | Weblog
日本中がローゼンメイデン第二期トロイメントの放送に沸いていた平成17年、ネット上での小説公開を目的とし「水銀党文庫」は産声を上げた。水銀党本部の結成はその前年の平成16年のことだが、当時の水銀党本部は掲示板とチャットルームのみで、友人のサイトを間借りしての公開だった。平成18年、冬月執筆による、水銀燈へのレスペクトをテーマとしつつ従来のローゼン二次創作の概念にこだわらないオリジナル世界観・シリアス系SF軍事サスペンスという新機軸の小説『Black Alice』シリーズの連載がスタート。同じ年、現在の水銀党本部サイトが完成した。

来年で、水銀党本部は創設10周年を迎える。だが、その間の道程は決して平坦なものではなかった。水銀党本部サイトの完成直後、ローゼンメイデンは長い冬の時代に入る。
平成19年、当時幻冬舎の月刊コミックバーズで連載されていた旧「Rozen Maiden」が唐突に打ち切られる事件が発生。元来一部のマニアしか存在を知らないアングラ誌だったバーズの名を広く世に知らしめ、政治家・麻生太郎氏をはじめ各界の著名人からも愛好された看板作品の結末としてはあまりに不合理なその打ち切りに際して、関係各所からファンに対し理由の説明は一切なかった。「幻冬舎の担当が原稿を紛失したため原作者と決裂した」など幻冬舎の不祥事という情報が流れ、ファンの不信感が増大する中で、当事者であるはずの幻冬舎は説明責任を果たさず沈黙を続ける。原作者はブログでファンに不安と心配をかけたことについて謝罪したが、幻冬舎は今日に至るもこの事件について購読者であるローゼンファンに対し公式な釈明・謝罪等を一切行っていない。結局原作は翌年、集英社に移籍し週刊ヤングジャンプで新生「ローゼンメイデン」として連載を再開したものの、幻冬舎打ち切り事件から約一年間に及んだ異常事態が残した爪痕は大きかった。
原作者監修のもと優れた脚本と見事な声優陣の演技、鮮烈な主題歌でローゼンメイデン旋風を巻き起こしたアニメ版は平成18年に第二期トロイメントが放送終了、同年12月には前日談に当たる特別編オーベルテューレが放送されたが、平成19年の原作打ち切りと並行して、続編制作の情報が途絶えた。
「第二期の最終話では真紅が蒼星石と雛苺の蘇生を今後の目標に掲げ、ラストには新たな敵役として雪華綺晶が姿のみ登場するなど、続編の制作が強く示唆されていました。2話付け足された特別編もビフォアストーリーで、アニメ版での水銀燈と真紅の過去を説明するものでしかなかった。逆に言えばここまでの放送でアニメ版のストーリーが完結したとは言い難い、不完全燃焼の状態だったんです(冬月)」
アニメに付随して制作され好評だったラジオCD『水銀燈の今宵もアンニュ〜イ』も、予定されていた平成19年4月の続編発売が急きょ延期された末、中止となった。いずれも原作の打ち切り・移籍による権利関係のトラブルが影響した可能性が高い。

情勢が厳しさを増す中で、水銀党本部は考えた。
「とにかく、このままではいけないと。愛する作品のために、我々ファンに何ができるのか。ファンサイトは、どんなサービスを提供すべきなのか(冬月)」
ローゼンメイデンの強みは何か。それは、個性豊かなドールズの物語、その魅力にひかれた一過性でないコアなファン達の根強い支持、ファン活動の質ではないのか。
ならば、ファン相互の絆を育み、輪を広げ、結束して冬を乗り越えられる強い組織をつくろう。ローゼンファンには、打てば響くとてつもなく強い底力がある。双方向に刺激を与え、ローゼンというジャンルを元気に盛り上げる「場」を創ろう。
幻冬舎打ち切り事件の同じ年、水銀党本部はファンの新たなコミュニティ『水銀燈後援会』、二次創作の祭典『水銀党本部フェスティバル』と、ファンが交流・情報発信できる新企画を矢継ぎ早に立ち上げた。情熱と意欲に満ちたファンが全国から集まり、水銀党本部は多くのオンライン作家が集まり創作活動を行う創作交流組織へと変貌した。こうして平成20年、「水銀党文庫」の独立管理団体として有志の作家からなる「水銀党ペンクラブ」が発足。「水銀党文庫」は単なる水銀党本部の小説コーナーではなく、広く水銀党・ローゼンファンのための小説投稿の場となる。
「ペンクラブは水銀党の機動部隊という位置付けですが、絵師さんは北陸、小説家は四国と、正に全国の叡智が結集している。エールを送り合う同志ということなら台湾にもドイツにもいます。オタクが日本の三大都市にしかいないというのは大間違いです。ネットとオフを駆使してこれからも世界中のローゼンファンの底力を引き出していきます(冬月)」

そして平成21年から、ローゼンメイデンオンリーイベント「まきますか?まきませんか?」への参加を開始。平成23年10月のまきまき14で、「水銀党ペンクラブ」発の同人誌「水銀党文庫2011」を発刊・頒布した。渾身のイラストと書き下ろしの小説で、薄い本と呼ぶにはボリュームのある100ページ超。誕生から6年、「水銀党文庫」は本になった。
その年の3月11日に起きた東日本大震災。被災した人々の中には、水銀党本部を応援し支えてきてくれたローゼンファンの同志も数多く含まれていた。
「私が住んでいる東京でも被害が出ましたが、私個人が被った直接の損害といえばワインのボトルが落ちて割れた程度です。東北の仲間と全く連絡が取れない、そのことにただ心を奪われていました。こんな時にローゼンなんてと私自身思っていなかったといえば嘘になる。ですが、ようやく安否確認ができたとき、これからも水銀党の活動を頑張って下さいと、何人もの人から逆に激励された。身体が震えました(冬月)」
震災後メディア文化が萎縮する空気の中で、それまで培ってきた水銀党のグループ力を総動員し、同人誌に挑んだ。
あれから1年半を経た、今回のまきまき17。開催前には、新ローゼンメイデンTVアニメ放送が発表され、ローゼンメイデンは歴史的な転換点を迎えた。旧アニメ版の放送終了・幻冬舎打ち切り事件からおよそ7年、ローゼンメイデンの再興を信じてファン活動を続けてきた冬月は、オフィシャル・同人ともに、確かな手応えを感じている。
「今回のまきまき17は、『ローゼンメイデンの復権』を内外に強く印象づけるイベントになりました。前回までのまきまきでは、アニメの話がこない、原作が膠着している中で、正直言って閉塞した空気が漂っていましたが、今は力強い風が吹いている。新アニメへの期待を感じます。発表が直前だったのでサークル参加総数こそ約60と前回とそう変わりませんが、それでも最近参加しておられなかった懐かしいサークルさんが戻ってこられたのがちらほら。また、新アニメ化記念で新刊を頑張って出したというサークルさんを多く見かけました。ペンクラブはメンバーの大半が社会人ということもあり、ファン活動は継続性が命ですので、メンバーのワークライフバランスを崩さないよう年一刊・秋という原則でやってもらっていたのですが、コピー本といえど今回無理をして新刊を出した甲斐がありました。一般参加者数は明らかに増加し、ブース訪問がほとんど途切れない。久々に会場が熱気に包まれた。もう『まきまきに行ったけど閑散としていた』なんて言わせません(冬月)」
「ペンクラブに限って言えば、オフイベントというフィールドで、同人サークルとしてようやく認知されてきた感じですね。本を毎度手にとって下さる顔見知りの参加者の方がついてきたのが嬉しい。「ここが良かった」と感想を下さったり「もっとこうしたら良い」とアドバイスを貰えると、本当にやってて良かったなと思います。いよいよこれからですね。新アニメの放送終了直後の10月まきまき12月冬コミ、新アニメを視聴して新たにファンになって同人に参入される方が本格的に出てこられる来年5月まきまき以降に向けて、今回のまきまきで参加者の方々から頂いた貴重な声も踏まえ、より良い同人誌を作るためにアクセルをふかしていきたい(冬月)」
水銀党ペンクラブは創刊号の「水銀党文庫2011」、昨年の「水銀党文庫Ⅱ」に続き、新規書下ろしを含む短編小説2・長編小説1作品収録のアニメ化記念コピー本「水銀党文庫2.5」を発刊・頒布したところ、完売となった。新刊が1回のイベントで完売したのは、今回が初めてだ。しかしこれが決して実力によるものとはいえず、アニメ化決定の熱気による一種のバブルが影響していることを冷静に受け止める必要がある。
「私事ですが、不動産屋としてリーマンショックによる長い冬の時代を経験しました。昨日までは当たり前だったことが覆されて二度と戻らず、いつこの苦境から抜け出せるのか出口が見えず、このまま悪くなるだけなのかと、本当に苦しかった。それがアベノミクスで潮目が変わって、今はそのさなかです。しかし我々はぶれてはいけない、目的を見失ってはバブルの過ちを繰り返すだけです。これは安倍さんだけではなく、ローゼンファンも同じ。アニメ化が決まっても、浮かれず今まで通り原作そして新アニメともに物語としての良き完結を願い応援していく、新アニメのファンを仲間としてあたたかく迎える、何より自分達が楽しくやる、趣味ですから。これが大事かなと思います(冬月)」

水銀党ペンクラブには、創設者冬月の掲げる標語がある。それは「人生はマラソンである」。
「私は子どもの頃から運動音痴なんですが、持久走だけはどういうわけか得意だったんです。会社でもマラソン部に参加して駅伝に出たりしています。マラソンというのは、勿論体力は必要ですが、咄嗟の運動神経で優劣が決まる他のスポーツとは違って、戦略的なものです。まずコースを事前に入念に下調べをしておく、できれば何回も走る。それでコーナーを曲がる時にいかに最短で曲がるか、いかに足に負担をかけないか、コースと身体の疲労蓄積を計算してラストスパートの余力をいかに残しておくか作戦を立てる。瞬発力ではなく、頭を使い工夫して、継続性をもって最後まで長い時間頑張るのが好きな人間に向いているスポーツです。だから短距離走で自分より速い奴に、私のような運動音痴が勝てる可能性が出てくる。だから面白い。人生は正にマラソンだと私は思います。私は学校でも会社でも頭が悪くて身体も鈍い自覚があったが、私から見て私よりはるかに優秀な尊敬すべき人達が脱落していくのを何度も見てきました。偉そうなことはいえない、私自身、何回か大きな挫折を経験しました。大抵が焦って失敗する。ローゼンメイデンも、腰を据えて応援していきます。何よりも大事なのは継続性ですから。そうやって、皆でローゼンファンを最後まで完走したい(冬月)」
『マラソン』、つまり遠距離走。一方で、遠くであれゴールが存在することの比喩でもある。来年で創設10周年となる水銀党本部、そして水銀党文庫・ペンクラブにとって、ゴールとは何なのか。それはファンとして切実に願う、原作・アニメを問わないローゼンメイデンという物語の良き完結だ。
「たまに勘違いされることがありますが、我々はファン組織だからといって決して作品の永続に恋々としているのではない。むしろファンだからこそ、完結を見据えたいのです。大人の事情で、パソコンも携帯電話も無かったような昔から今日まで何十年もサザエさん方式で連載が続いている作品、中には作者が亡くなられたのに法人化して大勢の人の生活がかかっているから作品にピリオドを打てないようなところもあります。そうした作品を決してけなすつもりはないが、ローゼンメイデンに我々が求めているものではありません。そういう「ネバーエンディングストーリー」が幅を利かせている一方で、世の中には様々な事情で物語が完結することなく途中で去らねばならず、忘れられていった無念の作品が星の数ほどある。ローゼンファンは、ローゼンメイデンも後一歩でそうなるところだったのを体験しました。地獄の淵を垣間見ているんです。だから、我々の合言葉は「良き完結のために」。ローゼンメイデンが原作・アニメともに物語としてきちんとした完結を迎え、水銀党本部のようなファン組織が役割を終えるその日まで、燈(ともしび)を絶やさず、守り抜く。それが我々の使命なのです(冬月)」

最後に、まきまき17でお世話になった全ての方に、心から感謝を。

水銀党本部
http://www.mercuryparty.com/

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