突然ですが、【 わたしの貴婦人 】 という言葉から、何を連想されますか?
…???
タイトルに【貴婦人】とありますが、今回は、ベルねたではない小ネタでございます。
休日出勤を覚悟していた12月のとある日、前日になって行かずにすむことになり、思いがけなく時間があいたので、ここに行ってまいりました。
http://museumlab.jp/index.html
大日本印刷 ( DNP ) さんという会社の五反田にあるビルで行われている、ちょっとユニークな展覧会です。
ルーブル美術館とDNPが共同して、最新技術を駆使した新しい美術体験のプロジェクトを開発しているのだそうです。
題して、『 ミュージアム・ラボ 』
3回目になるらしいのですが、今回の作品はティツィアーノの 『 うさぎの聖母 』 という絵画です。
ルーブル美術館からやってきた 『 うさぎの聖母 』 の本物が展示されています。
(警備員さんが、厳重に守っておられます。)
作品はこの一つだけなのですが、この作品をめぐる世界…ティツィアーノの生涯や当時のヴェネツィアを中心としたヨーロッパ世界のこと、作品に描かれている世界のこと、作品の背景にある世界のこと…等々が、豊富な映像で紹介されています。
音声でこれらを 『 案内 』 してくださるのが、ルーヴル美術館絵画部門主任学芸員のジャン・アベールさん。
実は、実際に行くまで、いまひとつどんな内容の展示なのかわからなかったのですが、予想を超えて楽しくて、長居してしまいました。
完全予約制で、予約した時間に受付に行くと、電子チケットと骨伝導の音声ガイダンスを準備してくださいます。
その際、言語を日本語、フランス語、英語から選べることが判明。
専門用語が飛び交うことが予想されたので ( もちろん、筆者のフランス語自体が危ないですし) 、日本語でお願いしたのですが、吹き替えの日本語音声の間から聞こえてくるフランス語が結構聞きやすく、興味深かったので、日本語で観覧した後、フランス語で登録しなおしてもう一巡しました。
英語も聞きたかったのですが、一巡で2時間近くかかるので、断念しました。
帰るとき、係の方が、HPのフォームに電子チケットの番号をインプットすると、展覧会の音声が聞けるということを教えてくださいました。
DNPの皆さま、とてもご親切に、いろいろとありがとうございました。
帰宅して音声を再び聞いてみて、音質のよさにびっくり!
日本語、フランス語、英語の3言語での音声ガイダンスが聞けます。
DNPさん、なんて太っ腹なの! 感激です。
フランス語、英語、そして美術の勉強にとっても素敵な教材になりますよ~
ちなみに、この展覧会、予約は必要ですが、このクオリティで驚きの無料です。
DNPさん、本当に太っ腹!!素晴らしい!!
( 【 貴婦人 】 を話題にしながら、庶民な筆者)
さて、ここまでは前振りで、本題は実はここから。
この展覧会の日本語、フランス語、英語それぞれのページを見ていて、「おお!」と思ったことがあります。
それは、『 マリアさま 』 を表現する語について、です。
日本語では、この作品は 『 うさぎの聖母 』 。マリアさまのことを 【 聖母 】 と呼んでいます。
フランス語では 『 La Vierge au lapin 』 、【 la Vierge 】 ですね。
英語での題名は、『 The Madonna of the Rabbit 』 、こちらは 【 the Madonna 】 です。
Madonna はイタリア語の ma donna が語源です。フランス語でも Madone という単語がありますが、フランスではあまり使われていないようです。
ma donna は ma dame 、 my lady と同じ語です。
直訳すると 【 わたしの貴婦人 】 ですね。
でも、ここでの ma や my は尊敬を表しているようなので、日本語の 【 わたしの 】 とはちょっと違うような気がします。
なお、英語での題名は 『 The Madonna of the Rabbit 』ですが、英語音声ガイドでは the Madonna とは言わず、the Virgin と言っています。
これらのどこに興味を引かれたのかといいますと…
日本語の【 聖母 】は、【 母 】であるマリアのイメージが強いと思いませんか?
それに対して【 la Vierge 】 【 the Virgin 】 は 【 処女 】=【 乙女 】=【 娘 】
une jeune fille であるマリアのイメージが強いように思います。
ちなみに、日本語の【乙女】の乙(おと) は、オトヒメ、オトウトの【オト】で【若い】という意味です。【オトメ】には【処女】と【若い女】=【娘】の両義が内包されています。
そして、【 the Madonna 】 は【 貴婦人 】 つまり(尊敬に値する)【 女性 】 のイメージが主であるような。
固有名詞ですので、語源から連想される語感は薄くなっているかもしれません。
ネイティヴの方にうかがってみないと、本当のところはわかりませんけれど。
でも、【 母 】 【 娘 】 【 女性 】って、一人の女性を示している言葉であっても、それぞれから受けるイメージは、少しずつ異なるのではないでしょうか?
また、固有名詞だからこそ、無意識のうちにイメージが形成されているような気がします。
おそらく、この la Vierge Marie :マリアさま 以外の語や表現でも、気づかぬうちに同様のことが起こっているのでしょうね。
同じ作品を見ていながら、聞いている(音声ガイダンスの)言語によって、受けるイメージは実は違う (可能性がある) 。
とても興味深いことだなぁ…と、改めて思いました。
外国語を学ぶ時、仏和辞典、英和辞典、○和辞典…でなく、仏仏辞典、英英辞典、○○辞典を使う必要性…も、こういうところにもあるのでしょうね。
…去年、「 自分へのクリスマスプレゼント
」 と思って買った Petit Larousse illustré 2007 をほとんど開かずに ( だって、重くて持ち運びにくいんですもの
) 今年を終わろうとする自分に、ちょっぴり反省でございます。
なお、ミュージアム・ラボ、12月中の予約はもう受け付けていないようですが、3月までこの展示が見られます。
小ネタ、といいつつ、今回も結構長くなってしまいました。失礼!
辞書を見なくても分かります。
びるぜん、まりあ 分かりますか? つまり
英語で言うと、バージン、マリア virgem Maria
キリシタンも分かるまで少し掛かりましたが
英語のクリスチャンですね、私は勘が悪いのかな
キリシタン用語を少し集めて私のHPに載せて
あります。
キリシタンの言葉では、マリアさまは“びるぜん まりあ”さまなのですか!
フランスと同じ“娘系”ですね。
本家イタリア(?)に対して、ポルトガル語とフランス語が同じ系統の発想って、興味深いです。
キリシタンの方々にとっては“娘系”マリアさまだったのが、今、日本では“母系”マリアさま。
不思議ですね。
キリシタンの方々の間では“マリア観音”さまがあったとお聞きしています。
観音様って、“母系”のイメージがありますけど、そう思っているのは私だけでしょうか…?
そういえば、ビートルズの“ Let It Be ”には“Mother Mary”が出てきますよね。
てっきり“聖母マリア”さまだと思っていたら、ポール・マッカートニーは「僕の母メアリー」だと言っているそうです。(Wikipedia)
言葉って、本当に興味が尽きないですね。
よろしければ、CarlosさまのHPのアドも教えて下さいませ。
私は、クレチエンで毎週 エグリーズに行っています。ただしカトリックではないので、マリア様とは言いませんが、毎週唱える信仰告白には、「主は聖霊によりやどり、処女マリア(オトメ、マリア)より生まれ」という言葉は出てきます。フランス語でも、ノートルダムnotre dame も聖母という意味だったと思います。ma dame とはちがいますね。違うと言えば、ポルトガル語のセニョールとフランス語のモン、セニエールとはぜんぜん違いますね。
HPご紹介下さり、どうもありがとうございました。
キリシタン用語、興味深いです!
【ばてれん】が【 padre 】だったとは驚きました!
私は幼稚園がキリスト教系だったので、その影響で小学校の頃までイエスさまにお祈りしておりました。
ただし、「我らの【日常】の糧を今日我らに与え給え」とか、間違って覚えていたところが多々あります。
(正しくは、【日用】ですね;;)
聖書で「主の嬰児(みどりご)イエス」という言葉を覚えたため、漢字テストで「嬰児(えいじ)」の読み仮名を「みどりご」と書いて×をもらったこともありました。