La Rose Bleue

『ベルばら』でフランス語、ハリポタで英語をお勉強

二人の関係 ① 父と子 その1

2006-04-25 00:04:45 | tu と vous

 『 ベルサイユのばら 』 のオリジナル・テキスト(日本語版)では、

父:ジャルジェ将軍 は、子:オスカル・フランソワ のことを、

おまえ」 と呼んでいます。

 また、常に 「目下扱い」 して話しています。

 

 オスカル・フランソワは、父に対して敬語を使っています。

 

 これは、日本/日本語での伝統的な親子関係から見ると、ごく普通のことです。

 

 さて、フランス語版 ( Kana 版 ) では、どのようになっているのでしょうか。

 18世紀の貴族の家庭ですので、2人は、vous  「あなた」で話しています。

 

 父:ジャルジェ将軍 → 子:オスカル・フランソワ  vous

 子:オスカル・フランソワ → 父:ジャルジェ将軍    vous

 

 ② 家族間では、tu を使う。→ × 

 お互いに、vous を使い、「ていねいな表現」 「尊敬の表現」そして、 「距離を置いた表現」 で話していると言えます。

 

  使い分けには、次のような条件もありました。

 ③ 子どもには tu を使う。→ ×

 しかし、子:オスカル・フランソワが11歳の時の場面で、すでに父:ジャルジェ将軍は、vous を使っています。

 やがてフランスの王太子妃になるかもしれないマリー・アントワネットをまもる日のために励めと、父:ジャルジェ将軍が子:オスカル・フランソワに命ずるシーンの父の言葉です。

Oscar, mon fils, votre tâche serait alors...

(オスカル,モン フィス,ヴォートル タッシュ スレ  アロール…

...de la protéger,

  …ド  ラ  プロテジェ,

comme si votre vie en dépendait.

     コム  シ ヴォートル ヴィ アン デパンデ

Entrainez-vous en pensant à ce jour.

   アントレネ    ヴー ザン   パンセ    ア ス ジュール)

(Tome1) 

 「オスカル、我が息子よ、あなたの使命はあなたの命をかけて彼女(マリー・アントワネット)を護ることになることでしょう。その日のことを考えながら、(剣の)訓練をして下さい。」

オリジナル・テキスト(OT)

「オスカル!そのかたは、おまえが身をていして 

おまもりし おつかえもうしあげるかたになるだろう。

いまから心して その日のためにはげむのだぞ!」

 

 ド・ゲメネ公爵との決闘騒動で謹慎になり、領地視察から戻ってきたオスカル・フランソワを派手にひっぱたいて怒鳴りつける場面でも、父は子に vous で話しています。

 床に倒れたオスカル・フランソワに対して、容赦なく父はこのように言います。

Relevez-vous, Oscar !!!

(   ルルヴェ ヴー,  オスカル!!! )

 「立って下さい,オスカル!!!」

(Tome1)

OT:「立てい!! オスカル」

 

 そして、長い逡巡の後、ついにオスカル・フランソワがブイエ将軍の命令に、そして国王に従うことを拒否し、ジェローデル率いる近衛隊を阻止した時。

 帰宅したオスカル・フランソワに対して、抜き身の剣を携えた父は、このように叫びます。

Enleverz vos décorations et vos grades militaires !!

( アンルヴェ ヴォ    デコラシオン    エ ヴォ  グラード  ミリテール!!)

あなたの勲章とあなたの陸軍階級章をはずして下さい!!」

(Tome2)

OT:「勲章と階級章をはずして そこへなおれ!!」

 

  このように、貴族として親子でありながらどんな興奮状態でも、子を vous で呼ぶ父。

 ところが、『 ベルサイユのばら 』 Kana 版 の中に、

父:ジャルジェ将軍が、子:オスカル・フランソワを tu で呼んでいる場面

が、4つあるのです。

 

 次回は、それを見ていこうと思います。

 

 


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