アジア映画巡礼

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王兵作品とその研究書「ドキュメンタリー作家 王兵 現代中国の叛史」

2020-04-16 | 中国語圏映画

先日、力作のご本をいただきました。土屋昌明、鈴木一誌編著「ドキュメンタリー作家 王兵<ワン・ビン> 現代中国の叛史」(ポット出版プラス、¥3,600+税)という研究書で、中国の映画監督王兵とその作品を、王兵監督自身へのインタビューもまじえながら紹介・分析した労作です。目次を書いておきましょう。

「ドキュメンタリー作家 王兵<ワン・ビン> 現代中国の叛史」

中国全図と王兵監督作品の撮影地
『鳳鳴 中国の記憶』に関連する中国現代史年表
『鳳鳴 中国の記憶』は王兵監督作品の背骨である=土屋昌明
  「はじめに」に代えて

第1部 王兵監督が/を語る
 王兵監督インタビュー①  聞き手・文責=土屋昌明
   『鳳鳴』『無言歌』から『死霊魂』への思いと映画の可能性
 ドキュメンタリー撮影ノート ― 王兵監督との対話から=文平
 王兵監督インタビュー②  聞き手・構成=樋口裕子
   歴史の空白を描くことから、いま、激変する中国を撮る

第2部 『鳳鳴 中国の記憶』を読み解く=山根貞男・土屋昌明・鈴木一誌
 映画『鳳鳴 中国の記憶』と中国現代史

第3部 作品の核心に向かって
 王兵という〈試し〉― 『鉄西区』から『収容病棟』まで=藤井仁子
 ワン・ビン作品における視線のポリティクス ― 見る/見られるの非対称性を巡って=劉文兵
 中国のインディペンデント・ドキュメンタリー=中山大樹
 記憶の居場所 ― 王兵と<難民>=鈴木一誌

第4部 創作の軌跡 ― 王兵監督フィルモグラフィ=山口俊洋・土屋昌明

フィルモグラフィ参考文献一覧 他 

Bing Wang

王兵監督(上写真はIMDb「Bing Wang」より)は1967年、中国の陜西省西安(シーアン)生まれ。『鉄西区』(2003)を皮切りに22本の作品を撮っていますが、『無言歌』(2010)、『苦い銭』(2016)とビデオアート作品を除いて、ほとんどがドキュメンタリー映画です。3部構成になっているドキュメンタリー映画『鉄西区』は、各部がそれぞれ240分、175分、130分となっており、合計545分、つまり9時間5分のドキュメンタリー作品ということで、人々を驚かせました。日本でも2003年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映され、見事大賞を受賞したのですが、この時から日本に、王兵ファンがどっと生まれたのです。続く2作目のドキュメンタリー『鳳鳴 中国の記憶』(2007)も、2007年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で183分版が上映されて、再び大賞を獲得しました。そして、この作品は配給会社ムヴィオラによって日本公開され、以後中心的な作品は、ドキュメンタリー映画、劇映画ともに日本公開がなされています。公開の前に山形国際ドキュメンタリー映画祭や東京フィルメックスで上映された作品もあり、王兵監督も何度か来日を果たしました。

実は今回も、王兵監督作品のドキュメンタリー映画『死霊魂』(2018)が4月4日(土)から公開されるはずでした。上は試写状で、ご覧いただくとおわかりのように、これも3部構成で合計8時間26分という超長尺作品です。試写で一部だけでも見たいと思ったのですが、なぜかどの日も他作品の試写や用事があったりして結局は見に行けず、そのせいでこのブログでは作品紹介ができませんでした。そんなことから私はてっきり公開されたのだと思っていて、こちらの記事「公開延期作品」でも取り上げなかったのですが、公開直前に「6月27日(土)よりシアター・イメージフォーラムで公開」に変更されたそうです。よかったですね。公式サイトはこちらです。ついでに下に、予告編を付けておきます。(最後の公開期日が訂正されていませんが、ご理解下さい)

ワン・ビン監督『死霊魂』予告編(6月27日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開)

 

ただ、土屋先生(いつもよく専修大学で開催される中国のドキュメンタリー映画の上映をご案内していますが、その主催者でもある専修大学教授で、中国文学や中国語ドキュメンタリーゼミなどを担当しておられます)たちのこの本は、「本書の着想は、2009年初頭、『石炭、金』をポンピドゥーで見たあと、近くのカフェで王兵監督と話したときに思いついた」と「『はじめに』に代えて」にも書かれているように、今の時期の発売となったのは偶然のようです。着想から11年、内容がぎっちり詰まった素晴らしい本が完成したことを喜びたいと思います。もし、アマゾン沼でお求めの時は、こちらからどうぞ。王兵作品のソフトも出ていますので、それらが全部掲載されているページにリンクを張りました。

            

なお先日、先に挙げた記事でご協力をお願いした「ミニシアターを救え!」プロジェクトですが、4月13~15日というこの3日間だけで、9,153人の方がクラウドファンディングに協力し、総額102,997,868円(4月16日午前零時現在)と、目標額1億円を早くも突破しました! ご協力下さったブログ読者の皆様、ありがとうございました。私もほんのちょっぴり協力し、家から近いシネマヴェーラ渋谷のチケットをいただくことになってます。ファンディングの期間はまだ30日間残っていますので、映画好きのお友達にもぜひご紹介下さい。今日は、呼びかけ人の濱口竜介監督と深田晃司監督の御礼メッセージがアップされ、お二人ともミニシアターの思い出を語っておられましたが、深田監督が今はなき三百人劇場で見たアッバース・キアロスタミ監督作品やモフセン・マフマルバフ監督作品のことにも言及されて、イラン映画の素晴らしさを言って下さったのは嬉しかったです。ミニシアターの皆さん、またそちらの劇場で素敵な作品を見せていただける日まで、一緒にがんばりましょう!

 


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