アジア映画巡礼

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あなたに響くのはどの物語? ネットフリックス『ナヴァラサ:9つの心』

2021-08-08 | インド映画

インドでは、日々の感染者数増加がここ1ヶ月ぐらい4万前後で推移しているため、少しずつ各方面が封鎖解除に向かいつつあります。映画館も7月末から再オープンし始めたのですが、現在のところ、様子見ジャブという感じでハリウッドのB級作品などが上映され、今週末から新しい映画が公開され始める模様。その後、8月19日に予定されているアクシャイ・クマール主演作『Bell Bottom(ベルボトム=ラッパズボンが流行った1980年代を指す)』が無事興行として成功したら、次々とボリウッド映画が続くのでは、と思われます。この映画では1980年代、シク教徒過激派が「カーリスターン」樹立を目指して活動し、国の諜報員がそれと闘う姿が描かれるようですが、登場する当時の首相インディラー・ガーンディーに扮する女優ラーラー・ダッター(『デリーに行こう!』『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』など)の成りきりぶりに、目下注目が集まっています(こちらの記事など)。

Bell Bottom film Poster.jpg

そんな状態なので、まだまだ映画館よりOTT、あるいはストリームと呼ばれる配信の作品が注目を集めているインドですが、先日期待のオムニバス作品タミル語映画『ナヴァラサ:9つの心』がネットフリックスで公開されました。タイトル通り、「ナーティヤ・シャーストラ」で9つの感情表現として規定されたものをタイトルにして、著名監督や有名な俳優たちがその感情をいかに表現するか、挑戦した短編映画集です。1作は約30分。日本のネトフリで付けられたタイトルと共に、監督名と俳優名、簡単なあらすじを書いておきましょう。

Navarasa web series.jpg

『ナヴァラサ:9つの心』
  製作:マニ・ラトナム、ジャイェーンドラ・パンチャパケーサン

<第1話>Edhiri(Karuna 慈悲)「本当の敵」
 監督:ビジョイ・ナンビヤール
 出演:ヴィジャイ・セードゥパティ、レーヴァティ、プラカーシュ・ラージ
 あらすじ:夫(プラカーシュ・ラージ)を訪ねてきた若い男(ヴィジャイ・セードゥパティ)。何か不穏な先行きを感じてしまった妻(レーヴァティ)だったが...。

<第2話>Summer of '92(Haasya 笑い)「'92年の夏」
 監督:プリヤダルシャン
 出演:ヨーギ・バーブ、ネドゥムディ・ヴェーヌ
 あらすじ:成功して有名人になった喜劇俳優(ヨーギ・バーブ)が、出身校の記念行事に呼ばれる。昔、クラスで落ちこぼれだった彼は落第を重ね、何年経ってもなかなか卒業できなかった。ある時彼は、校長(ネドゥムディ・ヴェーヌ)の娘である教師の見合いの席で、とんでもないことをやらかす...。

<第3話>Project Agni(Adbhutha 驚異)「プロジェクト・アグニ」
 監督:カールティク・ナレーン
 出演:アラヴィンド・スワーミ
 あらすじ:ある優秀な科学者は、独特な世界観を持っていた。2012年12月21日に滅ぶはずだった世界はまだ続いており、パラレル・ワールドが存在するという。彼が過去の世界に行って戻ってきてみると、妻子の存在がかき消えていた、というのだ...。

<第4話>Payasam(Bibhatsa 嫌悪)「パヤサム」
 監督:ヴァサント
 出演:アディティ・バーラン、ローヒニー、デリー・ガネーシュ
 あらすじ:1965年のこと。甥スッブが有名人なので、「スッブの叔父さん」としか呼ばれない主人公はへそ曲がりの頑固老人。嫁入った娘はすぐ夫を亡くし、自分をなだめてくれた妻も亡くなった今、ますます意固地になっているのだ。スッブの娘が盛大な結婚式を挙げるのを見て嫉妬した老人は...。

<第5話>Peace?(Shanti 平安)「平和なのか?」
 監督:カールティク・スッバラージ
 出演:ボビー・シンハ、G.V.メーナン
 あらすじ:その昔、タミル・イーラム解放の虎が政府軍と戦っていた頃。前線の塹壕にいたタミル・イーラムの兵士(ボビー・シンハ)は、少年が敵陣に向かおうとするのを止める。「弟があの家に取り残されてるんだ。助けなくちゃ」という少年に代わって、兵士が銃弾をかいくぐり行ってみると...。

<第6話>Roudhram(Anger 怒り)「怒り」
 監督:アラヴィンド・スワーミ
 出演:リトヴィカー、スリーラーム
 あらすじ:漁村の金貸しは、商店主から利子をふんだくったあと、高校生のアルルになぐられる。アルルと妹アンブの母は金貸しの家で家政婦をしていたが、アルルは母に対する金貸しの行為を許せなかったのだ...。

<第7話>Inmai(Bhayaanaka 恐怖)「欠落」
 監督:ラティンドラン・R.プラサード
 出演:シッダールト、パールヴァティ
 あらすじ:ポンディシェリにある裕福なイスラーム教徒の邸宅を若い男が訪ねてくる。妻のサインが必要になり、会社から派遣されてきたのだ。カリグラフィーについても詳しいその男に、妻は部屋の模様替えなどを相談するが、彼には秘めた目的があった....。

<第8話>Thunintha Pin(Veera 勇気)「決断の行方」
 監督:サルジュン・KM
 出演:アタルヴァー、アンジャリ、キショール
 あらすじ:ナクサライト(左翼過激派)を追って山中に展開する警察部隊。新米のヴェトリ(アタルヴァー)を残して部隊は全滅、ヴェトリは運良く銃を撃って捕らえた敵のリーダー(キショール)を、車で病院まで連れて行く任務を負わされたが...。

<第9話>Guitar Kambi Mele Nindru(Shringaara 愛情)「音楽家の恋」
 監督:G.V.メーナン
 出演:スーリヤ、プラヤーガ・マーティン
 あらすじ:名前が売れてきた歌手(スーリヤ)は母と二人暮らし。作曲家でもある彼は、インドでは自分の才能が生かせないと思い、母を連れてロンドンへ移住することを考えていた。そんな時、仕事で出逢った女性歌手(プラヤーガ・マーティン)に一瞬で恋に落ち、彼女とロンドンへ行くことを考えるようになるが...。

わかりにくい作品もあり、全部で9話(約4時間半)というのもちょっとヘビーでした。好きだったのは、アラヴィンド・スワーミ(上写真)が初めて監督した<第6話>「怒り」の冒頭部分。タミルの漁村の姿をまず俯瞰で写し、ついでバザールの様子を活き活きと捉えたシーンは、「ドキュメンタリー作品かな? このままずっとこの町を見ていたい」と思わせられたほど。ストーリー展開も結構巧みで、最後のどんでん返しというか種明かしは、「そうだったのか!」と驚きました。出演パートの「プロジェクト・アグニ」は「???」だったのですが、監督作にもパラレル・ワールドに近い処理がしてあって、感心しました。あとは皆さん、それぞれお好みでお楽しみ下さい。最後に、インド版予告編を付けておきます。

Navarasa | Official Trailer | Mani Ratnam, Jayendra | Netflix India

 


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