父が他界して7年目に
母が他界して25年目なる
ワタシは生まれて
25才で結婚するまで
実家で暮らした
母が入退院を繰り返している頃は
父と2人で過ごしたし
実家を出ても
お出かけができない母からの
電話の受話器の向こうの声が
淋しく感じれば
足を運び
息子が生まれてからは
尚のこと
嬉しそうな母のために
実家へ通った
女性が入り込んだ実家が
多少は女性好みに変わったとしても
建て付けの家具の中は
母や父が大切にしていた置物
古い絵や時計は当時のままで
居間では
コタツに入り
父の腹巻きを編んだり
刺繍をしたり
浴衣や着物をこさえたりする母の姿が
日の当たる応接間では
下手くそなピアノを弾くワタシのそばに座って
読書をする母の姿が
薄れない記憶の中から
浮かぶように見えるし
父は今でも気配さえ感じて
ひょっと部屋から出てくる気さえする
足音が耳の奥の頭のどこかに残ったまま
父と母の香りも
鼻の奥のどこかに記憶されていて
あ、この匂い.....と
キョロキョロして
父や母を捜してしまうワタシがいる
そうすると
ワタシを呼ぶ父と母の声が
耳の奥の頭の中のまた何処かで
響く
実家は父と母が待ってくれている
ワタシの心温まる安らげる場所だ
そこに
女性が入ったとしても
ワタシの実家への想いは変わらない
だから父が亡くなって
女性から実家に呼ばれても
嫌々ではなく
むしろ喜んで実家へ向かったのだ
兄の代わりになって
様々な手続きもせねばならず
そんな時に女性が父のカードを使って
現金を引き落とししていたことを知ったわけで
そのことを兄に伝えると
驚き、呆れる兄から
相続の手続きを進めたいが
またすぐ海外へ出張があるため
10月までは地元に来られない
どうしたもんだかと
珍しく兄から相談を受けた
その時思い出したのが
保険屋のHさんの言葉だった
Hさんなら相談ができる
そう思ったワタシは
兄にHさんのことを話した
兄は8つも歳が離れているのだから
Hさんとはあまり面識がなかったが
父の会社の立ち上げから
父や母だけでなく
ワタシとも縁が深く
そのご縁は息子とも結んでもらっている
とても信頼のおける方だ
女性に言いくるめられて
入った保険も
父に頼まれたHさんが世話をしてくれた
既に高齢だったため
死亡保険金の受け取り金額は少ないが
父の希望で兄と女性が50%ずつで
受け取りになっていた
女性は兄に
「おにさんは〜仕事があるからあ〜稼げるでしょ〜だから〜ほうきしたらいいじゃー」
兄に放棄をしろと
散々迫っていたことも
保険屋のHさんは
とても心配しておられた
兄はぜひHさんに
相談をしたいといい
この日のうちに
ワタシはすぐHさんに
相談をした
Hさんも直ぐに動いてくださり
知り合いの司法書士さんを紹介していただき
兄と女性の相続の手続きをしてもらうことに
早速決まった
聞く耳を持たない女性を
うまく納得させる役も
Hさんと、司法書士の先生が
してくださることになった
翌日、呼ばれついでに女性にも
伝えておこうと
朝から実家へ行った
つづく