
入退院を繰り返す母は
検査のためだと言い
9月に入院した
更年期で体調が悪いと思ったまま
治療を続け
食道静脈瘤が破裂して
肝炎、肝硬変だったことがわかり
緊急手術で食道から胃の半分まで切除して
15年
暴飲暴食どころか
アルコールも飲んだことのない母が
ほとんど食事のできないまま
長きにわたり
あらゆる病を併発した
ほとんど臓器の病気ばかりでした
吐血や下血を繰り返し
手術のたびに
輸血が必要となった母は
「もう私の血は全ていただいたものだから
感謝して生きんにゃいけんね」
そう言って
痛みより有り難み
悲しみより慈しみの気持ちが大事なのだという
主治医の先生や執刀医の先生方
看護師さん
はたまた輸血くださった方々のお陰で
生かされているのだとも言って
いつも感謝をしているのだ
それにも増して
主治医の先生の言うことは
母には絶対で
もはや先生を崇拝しているかのようだった
今時代では御法度だろうが
手土産やお礼の品々や
ご自宅へまでお中元やお歳暮
場合によっては
お風呂敷に包まれた厚みのある封筒も
母のためにと父が渡していたほどだ
父がそれを私や母に
「お母ちゃんの入学金ぢゃ、学費じゃ」
そう言って笑うと
母はムスっとはぶてる
「教授に賄賂や」
私が調子にのると
今度は父が
「あんたの頭と母ちゃんを一緒にすんなよ」
そう言って母をかばい
私を小馬鹿にして笑うのだ
私たちは毎日母を見舞い
こんなお喋りで笑っていると
ロビーにある売店の店員さんや
通りがかる看護師さんたちも
「いつも楽しそうにしとってじゃ、Nさんいいわねー」
と母に声をかけてくれる
母はいつも
そろそろ来るかなと
病室を出て、1階の売店の前にある長椅子に腰掛けて
私たちを待っていたのでした
入院してまだ一か月経つくらいまでは
こそっと病院を抜け出し、私の車に乗り込んで
病院へ上がる坂道の途中にある近いコンビニまで行ったこともありました
毎日見舞う息子のために遊戯王のカードを沢山買い込み
息子が来るたびにひとつずつプレゼントするのです
「Dちゃん、ようきてくれたね・・・」
そういって渡すと
息子はいつまでもカードを握りしめて
おとなしく母のそばにいるのだ
父と私は
母の頼みは何でも聞いてあげようと決めていたので
できる限り願いをかなえてあげたいし
孫と触れ合いたい母のところへ
一日でも多く息子を連れていってあげたい
小さな子供を見舞いにはあまり連れていかないほうがいい
悪い病気を逆にもらってくるとか
トラウマができるとか
神経を使ってかえって母の症状が悪くなるとか
否定的なことを言ったり
非難をする人もいたりしたことには
随分心を痛めたが
母の辛さ、痛みを考えれば大したことではないと
自分に言い聞かせ
今とにかく母にしてあげられることを
常に優先した
父はお花が好きな母に
毎日お花屋さんへ行き花を買ってきた
お花の生け方にもだが
水替えにも母は常に気を使って
自分とお花の姿を重ねてるのだろうか
「なるべく大事に長く生かしてあげてね」
そういって花瓶の中のお水の少しの汚れも許しません
お花の種類も父に注文すると
「おねだりしてるみたいかねえ」と嬉しそうにしていますから
そんな笑顔の母をみれば
また退院して
家に戻ってこれるのでは・・・・
私の心に期待感さえ生まれ始めた頃でした
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