かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

禁煙外来の女性たち

2009年06月22日 | 昼下がりの外来で
いま、禁煙外来に30代の女性が数人通ってきている。

Sさんは小学5年生の娘さんに禁煙をすすめられて、“やっと”重い腰があがった。
今日は2回目の受診。

「もう、バリバリ順調です! その気になればアタシもやれるじゃないって感じ。センセイ、娘の学校でタバコの話してくれることになったんですってね」

来月予定になっているI小学校の課外授業は、Sさんが養護の先生にかけあってくれたという。
お母さんに禁煙をすすめたお嬢ちゃんに会うのが楽しみだ。



Mさんは、エステティシャン。
綺麗にお化粧しているけれど、どことなくブルーな雰囲気。
タバコの臭い消しに何か使っているのか、彼女が喋るたびに、ミント系の香りが漂ってくる。

「タバコを吸うことにすごく罪悪感を感じるんです。毎日、毎日、禁煙しようとしては挫折して・・・そんな自分に嫌気がさしました。パジャマのままコンビニにタバコを買いに行ったときは、ひょっとして私は病気かもしれないと思いました」



Kさんは、乳癌の治療中。

「自分は結局最後まで禁煙できないんじゃないかと思いながら吸ってしまっています。ダンナにも一緒にやめようよと言ったんですが、お前がやめられたら考えると言うだけで・・・」

抗がん剤で髪は抜け落ち、放射線治療で焼けた肌が、首に巻いたスカーフからチラリとのぞいている。



Oさんは今日2回目の受診。
調子はどうですか?と尋ねたら、「大丈夫です」と答えてくれたものの、一目で大丈夫じゃないことはわかった。

『大丈夫って顔してないけど・・・』

すると、いきなりポロポロと涙を流し始めたからビックリ。

「夫の具合がよくないって話を担当の先生から聞いてきたところなんです」

そうだった。
Oさんの旦那さんは、肺がんで入院中なのだった。
夫婦してタバコを吸っていて、旦那さんのほうは残念ながら肺がんが脳に転移した状態で病気が見つかって、治療中。
奥さんは病棟のナース達にすすめられて、禁煙外来へ。

「夫は今でも私にタバコくれなんて言うんです。脳の病気のせいですね。だから、貼っているニコチンパッチを見せて、私もあなたも禁煙中でしょって教えると、ああ、そうか・・・なんて言うんですよ・・・私は夫のことで、タバコどころじゃないって感じです。でも、何がきっかけでまた吸いたいと思うかもわからないから、外来の予約をお願いします」


タバコは彼女たちから、女性としての幸せも、奪っている。







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