不要になったものは、決められた場所に置いておくと、必要な人が持っていくというシステムというか、暗黙の了解的な習慣が、欧州にはある。
Eの暮らすアパートの駐車場の一角にも、不用品置き場があって、ときどき物が置いてあり、実際にそれを持っていく人を見かけたこともある。
パリに住んでいる友人が以前、玄関前に聞かなくなったCDを置いておいたら、翌日には片付いていており、クラッシックなんて到底聞きそうもない隣人の部屋からマーラーが聞こえてきて苦笑したという話をきいたことがある。
メルカリとかに出品するような面倒くさいことが嫌いな私には、うらやましいシステムである。
細かいルールは聞いていないが、ゴミ捨て場にならないように、引き取り手がいない場合には責任もって片づける期限も決められていると思われる。
「今朝は誰かが ”terrible decoration" を置いていたよ」
Eから送られてきた写真をよくみると、木彫りの鳥の置き物らしきものである。
段ボールの箱にはニコニコマーク付きで「zu verchenken 」の文字。
ご自由にお持ち帰りくださいと言う意味である。
「いらないよね?!」
もちろん、いらない。
「もしも私の部屋で ”ひどいもの” を見つけたら言ってね」
「OK.いま思い返してみて、そういうものはなさそうだったけど、もしあったら言うね!」
「日本人は子供の頃から小さいものを見て育ったんでしょ。理解できるよ」と、どこかで聞いてきた風のことを言うEであった。
