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かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

お尻の穴

2013年07月22日 | 昼下がりの外来で
59歳女性、元教員。

「職場では、私がタバコを吸っていることは、誰も知りませんでした」


女性は、こんなことを言う人が多い。
いわゆる、隠れ喫煙ってやつ。

『そう思っているのは本人だけ。みんな気づいてましたよ(笑)』


最近は堂々と吸う女性が多いので、「女性の喫煙者が増えましたよねえ」と世のおじさまたちが(自分のことは棚に上げて)眉をひそめつつぼやくのだけれど・・・


禁煙外来3回目くらいまでは、「まだアタマの中の1割くらいはタバコのことが占めてます」、「イラッとすると、つい吸いたくなるんです」と、ちょっと危ないなあという発言もあった。


でも、5回目受診の今日、診察室のドアを開けて入ってきた彼女を一目見て、『ああ、もう大丈夫』って思った。
そういうときは、ワタシは即座にそのことを口にするようにしている。


『今日はなんだか素敵ですね!』

「今日は、ですか?(笑)」

『ああら、ごめんなさい。ワンピースも、その靴もとってもお似合い!なんだか雰囲気が変わりましたね~』

「センセイ、もう大丈夫です。これで終わりなんだって思うと、うれしいんです」

『自分で、もう大丈夫って思えたら、ほんとにもう大丈夫ですよ。5歳は若返った感じですね(笑)』


ずっと、タバコを吸っている自分がキライだったという彼女。
ストレスの多い教師という職業を退職したのをきっかけに、一念発起して禁煙外来を受診。


「お尻の穴をみせているようなものでしたから(笑)」

『えっ??お尻の穴?』

「自分の一番恥ずかしいところをさらけ出している場所でしたから、外来に来るのはすごく嫌でした。でも、もうタバコがやめられて、来なくていいと思ったらうれしくて。タバコ吸ってることを隠しているつもりでも、実はみんな知っているのよなんて私に言ってくれる人、センセイしかいませんでした。ありがとうございました」


恥を捨てて見せたくないお尻の穴を見せてくれているのだから、ワタシもそれなりのお返しをしなくちゃいけないわけよね。

コメント
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