名探偵コナン「呪いの仮面は冷たく笑う」

これDVDを持ってて、一時期エンドレス再生ですっごい見てたんだけど、何度見ても見るたびに「無理!」と笑いながらツッコんでしまう。わたしの中では伝説のトリックのひとつ。

ホームラン王の松平って松井がモデルだよね。顔もそっくりだし、わかりやすすぎる。放送された当時は松井も24歳くらいだったのかな。

仮面のトリック。もうね、これね(笑)。絡まずきれいに連なってくれる可能性も低いし、あれだけのものを持ち上げるにはすごい力がいるし、仮面がその負荷に耐えられるかなという気がするし、狙ったところにナイフを向けるなんてできないんじゃないかと思うし、そして仮面を押し出して刺すなんて無理。

何となく名探偵コナンというより金田一少年の事件簿っぽい。オカルトじみた仮面の話とか、意味深な双子のメイドとか、特殊な作りの館とか。


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名探偵コナン@SKY BLUE


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らくがき・七海

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らくがき・澪

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「自殺志願少女と誘拐犯」第7話 初めてのデート

「なあ、水族館でも行くか」
 休日の朝、千尋はマグカップをテーブルに置いてそう切り出した。
 正面のハルナは声もなくぽかんとして固まっている。食べかけのピザトーストを両手で持ち、パンくずのついた小さな唇を半開きにしたままで。そんな彼女に、千尋はうっすらと意味ありげな笑みを浮かべてみせた。

「公開捜査されてるのに信じられない」
 ハルナは助手席に座ってシートベルトを締めながら、口をとがらせる。
 千尋はくすりと笑い、慣れた手つきでエンジンをかけて車を発進させた。カーナビはすでに水族館までの経路案内を始めている。三十分ほどで着く予定となっているが、そう順調にはいかないだろう。
 このことは数日前から画策していた。今日から十日間の夏休みなので、そのあいだにいろいろなところへ遊びに連れていこうと考えている。彼女のスニーカーやキャップもそのために用意しておいたのだ。
 もっとも彼女自身には内緒にしていた。反対されるだろうからギリギリまで伏せておこうという策である。今朝、時間がないからと強引に言いくるめつつ急がせると、渋々ながらも出かける準備をしてくれた。
 ただ、やはり顔写真をさらされていることで神経質になっている。車中なのに周囲を気にしてキャップを目深にかぶっているし、赤信号で止まったときなどは怯えたようにうつむくのだ。
「あの写真しか出てないんだから、まずバレねぇよ」
「そうでしょうか……」
 報道が出てからおよそ一週間。
 続報もなかったようなので、無関係なひとたちはもうほとんど忘れているはずだ。顔をさらしたところで気付かれるとは思えない。あのひどい顔写真しか目にしていなければなおのこと。
 もちろん知人は別だが、髪を切るなどしてだいぶ印象が変わっているので、軽く視界に入ったくらいなら気付かれない可能性が高い。そもそも知人と鉢合わせること自体がめったにないのだ。
 そうこうしているうちに駐車場についた。入口が混雑していたのでしばらく待たされたが、中に入ると係員の誘導ですぐに停められた。そこからすこし離れた水族館まで歩いて向かう。
 車中でも怯えていたのだから当然といえば当然だが、外に出るとハルナはさらに深くうつむいた。まわりに人の気配を感じるだけでビクリとして、顔をそらしたり、キャップのつばで隠そうとしたりする。
「そうやってるとかえって目立つぞ。普通にしてろ」
 千尋はグイッと顎を掴んで前を向かせる。
 しかし、気付けばまた不安そうな顔をしてうつむいていた。それでもさきほどよりは幾分かましになっているので、悪目立ちするほどではない。もうこれ以上はあらためさせようとしなかった。
 真夏の強烈な日差しが痛いくらいに刺さってくる。二人とも早くもうっすらと汗をにじませながら、まばゆい輝きを放っている銀色の丸い建物を目指して、ただ黙々と足を進めた。

 チケット売り場には長蛇の列ができていた。
 それを見てうろたえるハルナの背中を優しく押しながら、一緒に最後尾に並ぶ。彼女はうつむき加減のままじっとしていたが、誰もこちらを気にしていないことがわかると、すこしずつ顔を上げていった。

 二十分ほど待ってチケットを購入し、入館する。
 そこそこ混雑していたが、冷房が効いているので蒸し暑いということはなかった。そして何より照明が絞られているのがありがたかった。これなら至近距離でもないかぎり顔の判別はできない。ハルナも安心したらしく、人目を気にせずきょろきょろとあたりを見回している。
「水族館は初めてか?」
「はい」
 わかりやすくはしゃいでいるわけではないが、気持ちの高揚は見てとれる。いつも静謐な声がわずかにはずんでいるし、足取りも軽く、表情も明るく、何より目がキラキラと輝いていた。
 順路に従って進むと、彼女は行く先々で水槽に釘付けになった。
 シャチやイルカといった人気どころはもちろん、イワシのトルネードも熱帯魚も気に入っていたし、コウテイペンギンの高速の泳ぎには唖然としていた。すこしグロテスクな深海生物でさえ熱心に見ていた。ただ——。

「これ、もうすぐ始まるみたいだな。見に行くか」
 エスカレーター脇に置かれた案内板で、まもなくイルカパフォーマンスが始まることを知った。何十分も待たなければならないのなら迷うところだが、待たずに見られるなら行くしかない。
 ハルナも頷いてくれたので、すぐに屋外のスタジアムへ向かった。
 そこには子供たちの賑やかな声があふれていた。すでに満席のようなので、周囲の邪魔にならないところで立って見ることにする。遮るものがないため容赦なく白い日差しが降りそそぎ、すこしまぶしい。
「イルカパフォーマンスって何をするんですか?」
「さあ、オレも初めてだしな」
 おそらくイルカが跳んだり泳いだり芸をしたりするのだと思うが、知っているわけではないのであえて言わなかった。どうせなら何の予備知識もなく素直に楽しんだほうがいいだろう。
 その直後、開始を告げるアナウンスが響いた。
 正面の大型ディスプレイにイントロダクションの映像が流れ始める。やがて映像のイルカとシンクロして実物のイルカが大きくジャンプした。その演出にわっと大きな歓声が上がった。
 そのあとも様々なパフォーマンスを見せてくれた。高所のボールに跳んで口先でタッチしたり、わざと観客席に大きな水しぶきをかけたり、二頭がシンクロしながら泳いで跳んだり、次から次へと飽きさせない。
 どうやらトレーナーが身振りでイルカに指示しているようだ。それだけでなく、イルカの背びれにつかまって一緒に泳いだり、イルカの協力を得て一緒にジャンプしたり、パフォーマンス自体にも参加していた。
「なかなか楽しめたな」
 二十分はあっというまだった。
 スタジアムを出ようとする観客たちで騒がしくなる中、隣のハルナに振り向くと、彼女はどこか沈んだような面持ちで目を伏せていた。千尋と違って楽しんでいたようには見えない。
「あんまり面白くなかったか?」
「いえ……その、どうやって訓練したのかなって……」
「ああ……鞭で打つようなことはしてないらしいが」
「それならいいんですけど」
 虐待めいた方法で訓練されているのではないかと思ったようだ。
 以前、イルカの調教師について何かの情報番組で見たが、痛みでしつけることはないと言っていた。まずはイルカとしっかり信頼関係を築いたうえで、ご褒美を与えながら芸を覚えさせていくという。
 もっともこの水族館がどう訓練しているかはわからない。虐待をしていないという確信があるわけではないので、いまだに顔を曇らせている彼女を見ても、これ以上のことは言えなかった。
「そろそろオレらも出るか」
「はい」
 目の前に広がっている抜けるような青空とは裏腹に、二人の空気はどことなく重い。それでも互いに何でもないふりをしたまま、スタジアムをあとにした。

 その後、館内のレストランで遅めの昼食をとった。
 カラフルな熱帯魚が泳ぐ大型水槽を眺めたり、ガラス窓の向こうに広がる港を見渡したり、とろとろのオムライスを食べたりしているうちに、ハルナはすっかりいつもの調子を取り戻していた。
 もうイルカのことを引きずってはいないようだ。水族館を選んだのは失敗だったかと後悔しかけていたが、イルカパフォーマンス以外はどれも楽しんでいたし、来てよかったと思ってくれるだろう。

 ひととおり展示は見たので、食事のあとはミュージアムショップに入った。
 店内にはサブレやまんじゅうなど定番のおみやげから、有名菓子とのコラボ商品、海の生物のぬいぐるみなどがずらりと並んでいる。色とりどりで見ているだけでも楽しくなるディスプレイだ。
 ただ、思うように歩くのが難しいくらい混雑していた。人混みに飲まれてはぐれかけたのであわてて手をつなぐ。ハルナはビクリとしたものの嫌がる素振りはなく、そのまま商品を見てまわる。
「欲しいものがあれば買ってやる」
「え、そんな……別に……」
 何か気になるものがある様子なので声をかけてみると、彼女はうつむき加減で曖昧に遠慮しつつ、あきらめきれないのかチラチラと横目を向けている。その視線をたどってみると——。
「これか?」
 チェーンのついた小さなペンギンのぬいぐるみを手に取って尋ねる。
 ハルナは一瞬にしてぶわりと頬を紅潮させた。そうだとも違うとも言わなかったが、この反応からすると間違いなさそうだ。
「他には?」
 そう尋ねると、あわててふるふると首を横に振った。
 これだけというのも寂しい気がして、近くの平台に積まれていたペンギンのまんじゅうを追加してレジに向かう。列に並んでいるあいだも彼女の手を離すことはなかった。

 外に出ると、強烈だった日差しはすこし弱まっていた。
 夏休み時期は夜八時まで営業していることもあり、これから入館するひとも少なくないが、やはり退館するひとのほうが圧倒的に多いようだ。駐車場から出るときに多少時間がかかるかもしれない。
「あの、ありがとうございました」
 並んで歩いていると、ハルナがキャップを目深にかぶったまま礼を述べてきた。
 水族館に強引に連れてきたことか、ペンギンのぬいぐるみを買ったことか——どちらにしても来てよかったと思ってくれたのだろう。千尋は中学生にしては幼い横顔に視線を流しながら、ふっと頬を緩めた。
「欲しいものがあるなら遠慮しないでちゃんと言えよ。まあ、あんな物欲しそうな顔してチラチラ見てたら、言わなくてもバレバレだけどな」
「すみません……」
 彼女は耳元を赤くしながらうつむく。
 すこしからかいすぎたか——キャップ越しの後頭部にぽんと手をのせると、彼女は驚いたように振り向いて千尋と目を見合わせ、ほっと息をついた。こころなしか足取りも軽くなったように見えた。
 しばらく灼熱のアスファルトを歩いて、車に着いた。
 千尋はリモコンキーで解錠し、彼女を助手席のほうに促しつつ運転席に乗り込んだ。サンシェードを広げておいたが熱がこもるのは避けられない。すぐにエンジンをかけてエアコンの風量を最大にする。
「ほら」
 ふと思い立って、みやげものの手提げ袋からペンギンのぬいぐるみを取り出し、助手席のハルナに手渡した。残りを袋ごと後部座席に置いて手早くシートベルトを締める。
「行くぞ」
「はい」
 彼女もあわててシートベルトを締めた。
 それを確認してから千尋はゆっくりと車を発進させる。合間にちらりと隣を見ると、彼女は小さなペンギンを両手ですくうように持ち、そっと嬉しさを噛みしめるように見つめていた。


◆目次:自殺志願少女と誘拐犯


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らくがき・七海

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らくがき・澪

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名探偵コナン「白い手の女(後編)」

あらためてコナンの演技を見るとなかなか迫真だな。とても小学一年生の学芸会とは思えない。さすが女優の息子。リアル小一のときに有希子さんにしごかれたんだっけ。ちゃんと覚えてるのがすごいけど。

コナンと若狭先生の探り合いが怖い。表面的には普通なんだけど…だからこそ余計に怖い…。若狭先生はコナンの正体を知ってるのかな。

灰原がほっぺに文字を書く実験をしてくれるなんて。上手くいかなくてナルトになっちゃったあたりが可愛い。油性ペンだったのがさらに可愛い。でもせっかく事件解明のために一生懸命やってくれてるのに、あそこまで笑うことないじゃん。まだ子供の光彦はまあ仕方ないとして、コナンは笑いすぎじゃね? 日頃、辛辣なことを言われている鬱憤を晴らしてるのかしら(笑)。

男性の手にファンデーションとマニキュアを塗っても、女性の手に見せられるかなぁ。ごつさは隠せないのでは。たまたますらっとした手のひとだったのかもしれないけど。

若狭先生が犯人を倒したのは意図してやったことですよね。ドジでも強運でもないよね。コナンは気付いているっぽい感じだけど。ほんと何者なの。もう行動のすべてが怪しく思えてしまう。屏風をダメにしたのもわざとで、コナンたちを連れてくる口実だったんじゃないかとか。

その若狭先生の記事を見ながら、黒田管理官と寿司職人の脇田がめっちゃ意味ありげに…! 脇田はただの推理好きの寿司職人かと思ってたけど、もしかしてまだラムの可能性があるのかしら。黒田か脇田のどちらかがラム? あるいはミスリード? そして若狭先生はほんと何者?


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らくがき・メルローズ

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らくがき・七海

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「自殺志願少女と誘拐犯」第6話 眠れぬ夜に

「ハルナ、起きてるか?」
 ベッドに入ってからゆうに三十分は過ぎているはずだが、一向に寝付けず、ふと隣で背を向けている彼女にそう問いかけてみる。
「はい……眠れなくて……」
 すぐにひそやかな声が返ってきた。
 淡いオレンジ色の常夜灯のみのともる薄暗い中で、彼女は身じろぎしながらこちらに顔を向けて、困ったように眉を下げる。そのとき、こころなしか互いの息がふれあったように感じた。

 だったら、このままでいいから眠くなるまですこし話をしないか——そう持ちかけるとハルナは迷うことなく頷いてくれた。そこで、ようやく何について話そうかと思案をめぐらせる。
「ニュース……もしかして毎日チェックしてたのか?」
「はい、夕方のニュースだけですけど」
 彼女は気まずげに答えた。
 警察が捜査しているとわかったら、千尋が捕まらないようにすぐさま出て行こうと、あらかじめ覚悟を決めていたのかもしれない。だからあんなに行動が早かったのではないかと思う。
「おにいさんはいつ知ったんですか?」
「昼休みにネットのニュースで見た」
「……あの、顔写真って出てました?」
「あれはひどいな」
 思わず声に苦笑が混じった。
 不自然に顔がこわばり半眼のようになっているうえ、顔立ちもだいぶ幼い。正直、ハルナと同一人物だとはそうそうわからないだろう。なぜよりによってこんな写真を出してきたのか疑問だった。
「あれ、小学校の卒業アルバムのです。撮られ慣れてないので緊張してしまって。ひどい写りですけど、あれくらいしかなかったんだと思います。写真なんてほとんど撮りませんから」
 まるで千尋の心を読んだかのように、ハルナは話した。
 言われてみれば当然である。親に虐げられているのなら、思い出づくりの写真など撮ってもらえるはずがない。だから学校で撮ったものしかなかったのだ。そのくらい察してしかるべきだったのに——。
「あの……つまらない話ですけど、聞いてくれますか?」
 ハルナは黙りこくってしまった千尋をちらりと見て、そう切り出した。
 たとえどんな話でも、彼女が話してくれるのなら聞くに決まっている。ああ、と端的に応じると、彼女はすこしほっとしたように息をつき、天井のほうに視線を向けて話し始めた。
「父親は、気に入らないことがあると怒鳴りつけて手を上げるひとで。いつもは体にアザとかを残さないように頭を殴るんですけど、激しい怒りで我を忘れたときは、体ごと床に叩きつけたり、踏みつけたり、蹴りまわしたりするんです」
「ああ……」
 父親はきっとそんな感じだろうと予想していたので、驚きはしない。
 ただ、彼女が感情を殺して他人事のように話しているのが痛々しい。そうでもしないと自分を保っていられないのだろう。だからこそ、その思いを受け止めて最後まできちんと聞こうと千尋は決めた。
「そのうえ、すべてにおいて常に自分が正しいと考えているみたいで。やってもないのにやったと決めつけられることもよくありました。あるときなんか、私がいくら殴られても蹴られても認めずにいたら、とうとう息を切らしながら怒鳴り散らしたんです。親が黒と言ったら白いものでも黒くなるんだ、って」
 そこまで言うと、彼女はゆっくりと呼吸をする。
「その瞬間、ショックとか悲しいとかより軽蔑のほうが大きかった。親であっても尊敬してはいけないひともいる。このひとは尊敬してはいけないひとなんだって。同時に、その遺伝子が私にも受け継がれていると思うと怖かった。いつかあんな横暴な人間になってしまうんじゃないかって」
 最後はすこし声がうわずっていた。
 自分でもわかったのだろう。昂ぶった気持ちを鎮めるようにそっと目を閉じる。しばらくそうしていたが、やがてひそやかに息をついたかと思うと、再び何もない天井を見つめて話を続ける。
「母親には幼少のころから暴言をぶつけられてきました。可愛くない不細工だ、生きてる価値がない、生まなきゃよかった、いなくなればいいのに、あんたを好きになるひとなんかいない、みんな嫌ってる、って毎日のように詰られて殴られて。中学生になったころからは、汚いから嫌だって洗濯を拒否されていますし、洗面所のタオルも私だけ分けられています」
 母親のほうは思ったよりもえげつなかった。まるきりいじめだ。
 そういえば、女として欠陥品と言われていたとも聞いたことがある。ハルナ自身には何の非もないのにだ。これだけでも娘に対する尋常ではない嫌悪が窺える。憎悪といってもいいかもしれない。
 いったいどうしてそこまで嫌うようになったのだろうか。ハルナが幼少のころからであれば、折り合いが悪いとかいう以前の問題である。理屈ではなく本能的なものがあるように思えてならない。
「このあいだとうとう耐えきれなくなって、そんなに嫌いならもういっそ殺して、って泣きじゃくりながら訴えたんですけど、あんたごときのために刑務所に入るなんてまっぴらごめん、自分で勝手に死んで、ってぞっとするような冷たい目で言われてしまって。もしかしたら、このひとはずっと私の自殺を願っていたのかもしれない——確証はありませんがそう感じました」
「だから、死のうと思ったのか?」
 そう問いかけると、彼女はわずかに眉根を寄せて考え込む。
「だからってわけじゃないですけど、理由のひとつではあると思います。私ももう生きていたくなかったし、まわりにも死ねって思われているなら、本当に生きていく意味がないなって」
 その目元に、口元に、ふっと淡い自嘲が浮かんだ。
「そんな両親ですけど、世間体は人並み以上に気にするみたいです。学校の先生やご近所さんのまえではいい顔をするので、誰も私がそんな目に遭っているなんて思いません。私も知られたくなくて隠してましたし」
 両親がまわりの信用を得ているのであれば、家で不自然な物音がしても、娘にときどき内出血があっても、なかなか虐待には結びつかないだろう。そのうえハルナ自身が隠しているならなおさら難しい。
「そういうわけで同級生とは一線を引いてました。誕生日も祝ってもらえない、サンタさんも来ない、お年玉ももらえない、テレビも見せてもらえない——なんて言ったら、間違いなく理由を聞かれてしまいますし」
 そこで苦笑まじりの溜息をつく。
「一部の女子には、お高くとまってるとか陰口をたたかれてましたけど、特にいじめられはしませんでした。これでも真面目な優等生として先生に信用されていたので、手を出しづらかったんだと思います」
 真面目な優等生というのは事実だろう。
 こんなところでまで自主的に勉強するなど真面目としかいいようがないし、問題集をすらすらと解いているのだから成績もいいはずだ。話し方や態度からもそういう雰囲気が漂っている。
「ただ……一度だけ、打ち明けようとしたことがありました」
 彼女の声が急に張りつめた。
「相手は養護教諭です。ひとりでいる私をいつも温かく気にかけてくれて。初めてこのひとになら話せるかもしれないと思ったんですけど、親に嫌われていることをちらっと話してみたら、子供を愛さない親なんていないのよって優しく諭されて。それでもう何も言えなくなってしまって……」
 言葉を詰まらせ、何もない天井を見据えたまま口を引きむすぶ。
 ようやく勇気を振り絞って打ち明けようとしたのに、あっさりと全否定されてしまったのだ。養護教諭に悪気がなかったにしても、いや、悪気がなかったからこそ絶望を感じたに違いない。
 千尋はたまらなくなり、布団の中でそっと小さな手を握る。
 ハルナは驚いてビクリとしたが振り払いはしなかった。それどころか応えるようにおずおずと握り返してきた。つながった手から、二人の体温がゆっくりと溶け合っていくのを感じる。
「あの……おにいさんの両親はどんなひとですか?」
 ふと、彼女が静寂を破った。
 個人的なことを尋ねられたのは初めてかもしれない。彼女が興味を持ってくれたという事実につい頬が緩むが、そのあたりについてはあえて言及せず、とりあえず本題である質問のほうに答えることにする。
「オレ、捨て子なんだ」
「えっ?」
 ハルナは目をぱちくりさせた。
「生まれてまもなく、まだへその緒がついた状態で捨てられていたらしくてな。物心がつくまえから高校卒業まで児童養護施設で育った。だから生みの親はわからないし、育ての親もいない」
 その過去を隠したことはない。自ら積極的に話したりはしないが、尋ねられたときにはいつでも正直に答えてきた。逃げたくないなどと気負っているわけではなく、知られることに抵抗がないだけだ。
 しかし、彼女はショックを受けたような面持ちになり目を伏せる。
「すみません……私のこと贅沢だって思いましたよね……」
「いや、親がいればいいってものじゃないだろう」
 たとえどんな親でも子供の幸せのためには必要だ——そういう考えの人も確かにいるようだが、千尋は違う。
「オレは別に自分が不幸だったとは思っていない。恵まれているとは言いがたかったが、それなりに尊重してくれていたし、大人に殴られることもなかったし、誕生日もささやかだが祝ってくれたし、サンタだって来てくれた」
 そう説明するが、彼女の瞳は不安そうに揺れたままである。
「でも、両親に会いたくないですか?」
「どんな人間なのか見てみたい気持ちはあるが、会いたくはねぇよ。捨てられたことを恨んでるとかそういうわけじゃなくて、ただ面倒なだけだ。いまさらオレの人生に関わってこられても困る」
 千尋はきっぱりと言った。
「オレとしては捨ててくれてよかったと思ってる。子供を捨てるってことは、経済的に困窮しているか、育てられない事情があるか、子供に愛情がないかだろう。無理して育てても互いに不幸なだけだしな」
 幼少のころは別として、ある程度の分別がつく年齢になるとそう考えるようになっていた。ただ、強がりだと決めつけて憐れみの目を向けてくるひとが多いので、口には出さないようにしていたが。
 ハルナは眉を寄せ、矛盾と緊張をはらんだような複雑な表情を浮かべる。
「私も……いっそ捨ててくれたほうがよかったのにって、ずっと思ってました。児童養護施設のほうがまだましなんじゃないかって。でも、きっと親のいないひとからすれば不愉快だろうなって……」
「まあ、それは人それぞれだな」
 棄児がみんな千尋のように考えているわけではない。
 親に捨てられてさえいなければ幸せになれたのに。そう思い込み、恋しがったり恨んだりする子のほうが多いかもしれない。そして、そういう子ほど境遇の違うひとを蔑ろにする傾向にある。
「ただ、おまえの境遇なら捨ててほしかったと思うのは無理もないし、その気持ちを否定される道理もない。少なくともオレはそう考えている」
「ん……」
 ハルナは天井に向き直り、口を結んだまま言葉にならない返事をした。泣くのを堪えているのだろう。瞳が常夜灯を反射して淡くきらめいている。瞬きひとつで雫となってこぼれ落ちてしまいそうだ。
 千尋は視線を外すと、言葉の代わりにつないだ手をゆっくりと握りしめた。


◆目次:自殺志願少女と誘拐犯


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