「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.718-2 ★ 【脱中国】ホンダ・伊勢丹・日本製鉄・ モスバーガー…中国から撤退・工場閉鎖する日本企業が続々 個人消費が低迷しデフレ深刻化、不況が長引く懸念(後編)

2024年10月08日 | 日記

マネーポスト

2024年10月8日

 中国・深センでの痛ましい児童刺殺事件の影響は日本企業の活動にも及んでおり、多くの企業が駐在員家族の引き揚げなどの対策を迫られている。折しも、右肩上がりだった中国の成長は変調をきたしており、日本企業はその対応にも動き出していた。

成長の鈍化や個人購買力の低下

 現地での対応に日本企業が苦慮するなか、今回の事件の前から、中国でのビジネスを縮小し、“脱出”を図る企業もある。  背景には中国経済の成長鈍化や失業率の高さ、個人購買力の低下などがあるとされる。『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。

 「中国ビジネスを取り巻く環境は明らかにフェーズが変わりました。6月末には伊勢丹が上海の店舗を閉じて撤退しましたが、現地での消費の不振に加え、中国の消費者が日本の百貨店などよりも現地の激安ネットブランドの商品を選ぶ流れが出てきている」  右肩上がりの成長を見せ、“世界最大のマーケット”だった中国市場はどう変化しているのか。多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏が解説する。

 「今の中国経済は危機的な状況にあります。不動産バブルが崩壊し、不動産価格の下落に歯止めがかからない。8月15日、中国の国家統計局は不動産関連の経済指標を発表しました。主要70都市の新築住宅価格は、単純平均で前月比0.6%、中古住宅価格は前月比0.8%下落した。

 これまで中国は相次ぐマンション建設による建設需要などから経済成長を支える好循環を生み出してきました。だが、その手法が完全に頭打ちになり、習近平政権は大規模な景気対策を実施しているものの、その効果の持続性には疑問符をつける専門家は多い」

 中国の市場環境が激変するなか、資生堂は人気ブランド「BAUM(バウム)」の中国での販売を終了した。同社のグローバル広報部はこう説明する。 「ブランドの成長力などを見て、どこが伸びるか、そうでないかの判断のなかでBAUMについては中国のニーズなどを見越して判断しました。中国でのブランド展開は伸びているところもあり、そうでないところもある。中国市場には選択と集中という形をとっていく予定です」

 モスバーガーを展開するモスフードサービスは6月末で中国事業から撤退。理由は「再建を模索したが、投資対効果は見込めないと判断した」(広報IR・SDGsグループ)という。

 前出・真壁氏は中国市場の購買力は今後も厳しい状況が続くのではないかと見ている。 「個人消費の低迷により、中国市場では値下げ競争が激化しています。デフレの深刻化によって企業の収益が圧迫され、不況が長引くことが懸念される状況です」

EV競争激化の影響も

 中国は「世界最大の市場」とともに「世界の工場」の役割も担ってきたが、それも曲がり角を迎えているようだ。 7月には日本製鉄と中国・宝山鋼鉄の合弁解消が発表された。今後、中国での鋼材生産能力を7割削減する。

「日本製鉄と中国の関係は1972年の日中国交正常化に遡ります。二国間の経済協力の柱として始まり、“日中友好の象徴”と言われた非常に深い関係です。合弁会社を設立し、自動車向けの鉄板などの製造を行なってきました。

 ですが、近年は中国の成長鈍化を受けて米国やインドなど今後さらなる成長が見込める地域へ投資する戦略の見直しをしたとされます。

また中国の自動車市場で電気自動車(EV)が拡大し、製品の主な供給先となる日系自動車メーカーが競争激化で苦戦していることも影響しています」(関氏)

今年に入り、ホンダが現地2工場の閉鎖・休止、日産自動車も一部工場を閉鎖。三菱自動車は昨年10月、中国からの撤退を表明した。自動車部品関連のワイヤハーネス(組み電線)製造を行なうフジクラも一部の工場を閉鎖すると発表している。

 自動車関連各社は変化するEV市場への対応を迫られているようだ。ホンダは工場閉鎖について、こう説明する。 「大前提として、弊社は中国から撤退するわけではありません。一部の工場を閉鎖、または中止しますが、EVシフトを取るための取り組みの一環です。生産能力の適正化を図るため、2024年中には、EV工場を2つ立ち上げる予定になっています」(広報部)  中国でのビジネス展開が、これまでと違った局面を迎えていることはたしかだ。

(前編から読む) ※週刊ポスト2024年10月18・25日号

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