「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.92 ★ 家庭用ロボ「LOVOT」、ペットブームの中国で富裕層狙う 

2024年02月16日 | 日記

日経ビジネス (佐伯 真也:上海支局長)

2024年2月15日

この記事の3つのポイント

  1. 家族型ロボット「LOVOT」の海外1号店が中国・上海にオープン
  2. 価格は約140万円と高額、1年をかけて出店計画を進めた
  3. 実店舗を軸に、ペットブームに沸く中国で富裕層に訴求していく

 春節(旧正月)を直前に控えた2月上旬の週末。中国・上海で人気の高級ショッピングモール「港匯恒隆広場」の“ある店舗”には、ファミリー層を中心に数多くの来場者が訪れていた。

GROOVE Xが中国・上海にオープンした店舗には数多くの来場者が訪れていた。

 店舗の名は「LOVOT(ラボット)ストア」。ロボット開発のスタートアップ、GROOVE X(東京・中央)が2月1日にオープンした。同社が手掛ける家庭用ロボット「LOVOT」を取り扱う、海外1号店となる。LOVOTと触れ合う展示スペースに加え、商談などに使える「VIPルーム」も備える。

 GROOVE Xは、トヨタ自動車やソフトバンクグループでエンジニアだった林要氏が2015年11月に創業。日本ではLOVOTを19年に発売した。価格は49万8800円(税込み)からとなり、月額1万円以上のサービス利用料金も必要となる。半天球カメラや赤外線センサーなど50を超えるセンサーを搭載する高額商品だが、「ペットのようにだんだん家族になるロボット」というコンセプトが受け入れられ、日本では1万体以上が販売されている。

 中国での販売価格は6万9800元(約140万円)からで、売り切り型の商品となる。日本と同様に高額だが、「店舗のオープンでLOVOTを知り、その場で購入を即決した顧客もいた」と、GROOVE X中国法人の楊楽陽総経理は話しており、上々のスタートを切ったと言えそうだ。

創業当初から海外展開を構想

 GROOVE X社内で中国展開のプロジェクトが本格始動したのは21年末。日本法人の設立当初から海外展開の構想は存在しており、検討段階では中国に加えて米国や欧州も候補に挙がっていたという。

 大企業とは違いスタートアップであるため、すべての市場には一気に進出できない。GROOVE X中国法人の森千晶董事長は、「オポチュニティー(機会)と進出コストを比較した上で中国を選択した」と話す。

 ここ数年景気減速が指摘される中国だが、高額商品を購入する富裕層は依然として数多く存在する。さらに中国ではここ数年ペットブームに沸いており、中国の調査会社によると25年に約8100億元(約16.2兆円)規模の市場に右肩上がりで成長するという予測もある。日本でのLOVOT購入者と同様に、「何らかの理由でペットを購入できないという消費者のニーズに応えられると考えた」(森氏)。

 進出コストに関しては、修理などのアフターサービスのパートナーが探しやすかったことも大きかったという。森氏は「ユーザーの『家族』として提供するだけに、迅速にサービス拠点を構築することは重要だった」と振り返る。

1年をかけて実店舗をオープン

 もっとも、プロジェクト始動後も中国ではゼロコロナ政策が続いていたこともあり、慎重に検討を進めていったという。

上海の店舗には商談用の「VIP」ルームを備える(写真:GROOVE X提供)

 GROOVE Xが23年1月に「ブルガリホテル上海」で体験会を実施してから、中国でのマーケティング活動を本格化。その後も対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントを開設し、LOVOTの情報を定期的に発信していった。昨年6月にはオンラインでの販売を始めており、実店舗を設けるために1年以上の時間をかけた計算となる。

 「中国での市場性や勝ち筋を見いだすために試行錯誤を繰り返した」と森氏。「中国人も日本人同様にLOVOTへの反応はポジティブ。アレルギーでペットを飼いたくても飼えない人がいて潜在的なニーズがあることも確認できた」と手ごたえを口にする。

上海の店舗で、LOVOTの注目度は高い(写真:GROOVE X提供)

 GROOVE Xは、1号店のオープンを機に今後は中国での拡販を進めていく考え。「日本でもそうだが、オンライン販売では限界がある。ペットと同様に実店舗に何度も来店することで購入につながりやすくなる」と森氏。「ショッピングモール側とも連携しながら富裕層への接客ノウハウを高めていく」と楊氏も語る。2店舗目以降の検討も進めているという。

 中国でもイヌ型ロボットを手掛ける企業が出てきているが、森氏は「あくまでもライバルはペット」とライバル視しない考えのようだ。「だんだん家族になる」というコンセプトを浸透させて独自のブランドを構築できるかが、中国市場での成否を握ることになりそうだ。

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