「天狗の中国四方山話」

~中国に関する耳寄りな話~

No.698 ★ 1社で原材料製造「抗菌薬・脱中国依存」の高い壁 Meiji・塩野義が国産化  目指すも、課題は低薬価

2024年10月01日 | 日記

東洋経済オンライン (印南 志帆 : 東洋経済 記者)

2024年9月30日

Meiji Seika ファルマの岐阜工場にある大型発酵槽。ここで抗菌薬の原薬を製造する(写真:Meiji Seika ファルマ)

国際化を進め、巨額買収を仕掛けた王者・武田薬品が苦戦する一方、中外製薬は創薬力を磨き時価総額で国内トップに立つ。『週刊東洋経済』10月5日号の特集は「製薬 サバイバル」。明暗分かれる国内製薬企業の今を追った。

『週刊東洋経済 2024年10/5号(製薬サバイバル)[雑誌]』(東洋経済新報社)

手術後の細菌感染の予防や、感染症治療で用いられる抗菌薬。極めて重要な医薬品だが、製造サプライチェーンは、中国に依存した実にもろい状態の上に成り立っている。

「セファゾリンの供給不足が起こった2019年から今に至るまで、抗菌薬が安心して使える状態になったことはない」。東京ベイ・浦安市川医療センターで、感染制御認定薬剤師として働く並木孝哉氏は明かす。

19年2月末、後発医薬品大手の日医工が販売する注射用抗菌薬、セファゾリンナトリウムの供給が停止。同社が輸入する原薬での問題発生が原因だ。

ほぼ全量を海外製に依存

抗菌薬の製造は、主に原材料(出発物質)製造、原薬製造、製剤化の3工程からなる。日本では、原薬までのほぼ全量を安価な海外製に依存している。日医工は原薬をイタリアの2社から輸入していたが、18年末からその1社の原薬に異物混入が急増し、生産ができなくなった。

イタリアのもう1社からの原薬が頼みとなる中、この会社が中国企業から輸入する原材料の1つ、テトラゾール酢酸(TAA)の供給が途絶えた。TAAを製造しているのは実質的に中国のたった1社だけ。その工場が中国政府の環境規制に抵触し、稼働を停止したのだ。

別の原材料も中国の寡占状態

別の原材料である7-ACAも9割を中国の数社が供給する寡占状態にある。

抗菌薬に詳しい東京ベイ・浦安市川医療センターの並木孝哉薬剤師。セファゾリンは耐用年数が2年ほどと短く、備蓄には向かないという(写真:記者撮影)

結局、セファゾリンが通常出荷に戻ったのは供給停止から1年半後。抗菌薬の種類は複数あり、それぞれ最近に対する効果の範囲が異なる。抗菌薬が効かない薬剤耐性菌の拡大を防ぐためにも、標的となる細菌にピンポイントで効く薬を選ぶ必要がある。

「セファゾリンは、手術部位の感染を防ぐために投与する抗菌薬の第1選択薬。供給停止で手術後に使う抗菌薬を、これより効果の範囲が広い別の製品に切り替えたが、これも供給停止に。そこでさらに広範に効く別の薬に切り替えたところ、死滅させる必要のない菌まで死滅させてしまい、院内で薬剤耐性菌が増加した」(並木薬剤師)

薬剤耐性菌が広まれば、これまで使えた抗菌薬が効かなくなって複数の薬が必要になる。最悪の場合は治療ができなくなる。

深刻な事態を受け、国は抗菌薬の国産化支援を打ち出した。22年、とくに重要な抗菌薬4品目を半導体などとともに「特定重要物資」に指定。23年7月には、Meiji Seika ファルマ(Meiji)、塩野義製薬傘下のシオノギファーマなどに対し、製造設備や備蓄設備への助成金の支給を決めた。

平時は国産と輸入の原薬を併用し、有事は必要量のすべてを国産で賄える体制を構築していく。

しかし「純国産抗菌薬」の実現は簡単には進まない。1つは製造技術の継承ができていないこと。Meijiは1946年に抗菌薬のペニシリンを開発し、現在も注射用ペニシリンで国内では7割近いシェアを持つ。ただし、価格高騰によって原材料からの製造は94年に停止。今は原薬の全量を中国から輸入する。今回の国の支援を受け、数百億円を投じて岐阜工場に生産設備を新設。25年までにラインを立ち上げ、28年には原薬の出荷を開始する予定だ。

国産化すれば原価は3倍に

Meijiの小林大吉郎社長は「岐阜工場は更地にして売却しようと考えたこともあるほどで、既存の設備は古く、それを運転できる人材も高齢化していた。今はギリギリ残っていた人が若手に技術を教えている最中だ」と語る。

より難しいのは採算性の問題だ。国産化すれば「原薬の原価は3倍程度になる」(小林社長)。一方、注射用抗菌薬の薬価は数百円と安い。19年のセファゾリン供給停止を受け、主要な抗菌薬の薬価は上がったが、「一部製品では採算割れしている」(同社)。

抗菌薬の製造には専用工場が必要で、転用が利かない。平時でも、稼働維持のコストはかかる。小林社長は、「国の安全保障に資する事業として、一定の利益が保証されないはずはないだろう」と期待をかける。

具体的には、薬価の引き上げに加え、国による買い上げ、平時に輸出できる体制の構築などが検討項目になる。政府は6月の「骨太の方針」で、24年度中にその方策の結論を出すと明記した。国民の命に関わる医薬品の供給には、健全なビジネス環境の整備が必須となる。

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No.697 ★ 渡航制限で日本人が知らないうちに驚愕の変貌を遂げている上海 空港、 地下鉄、ホテル、オフィス、タクシー・・・どこまでも進むIT化

2024年10月01日 | 日記

JBpress (木寺 祥友:社団法人オープンガバメント・コンソーシアム顧問)

2024年9月30日

臭豆腐を売っている屋台でも支払いはQRコード。現金のみの店も多い日本とは大違い(写真は筆者、以下同じ)

デジタル化の勢いが半端ない

 上海は今や、未来都市のビジョンを具現化するかのような速度で進化を遂げています。

 その変化の中心にいるのは、技術とイノベーション。これらが絶えずこの街の日常に新たな息吹をもたらしているのです。

 入国手続きからして、その進化の一端を垣間見ることができます。空港に降り立つや否や、デジタル化されたプロセスに導かれるのです。

 入国用のQRコードをスマートフォンで表示し、簡単にスキャンされプリントアウト。

 紙に手で書かないので、入国審査がスムーズに進行します。

 中国の多くの公的手続きがこのようにデジタル化されているのは、政府がIT技術の導入を積極的に進めているからにほかなりません。

 街の景観は、高層ビルが立ち並ぶ摩天楼の集合体と化しています。

 夜になると、これらのビルから放たれる無数の灯りが、上海の夜空を彩るのです。

 特に外灘のエリアは、その美しい夜景を楽しむための人々で賑わい、多くの訪問者がスマートフォンでその光景を実況中継しています。

 この風景は、上海がいかに現代の電子技術と調和しているかを象徴していると言ってもいいでしょう。

お馴染の上海の外灘(バンド)

ずらりと並んだレンタサイクル

ルームサービスはロボットで

 私が宿泊した新天地のアンダーズホテルでは、広々とした部屋に最新のシャワートイレが備え付けられ、部屋のすべてをコントロールするためのiPadが置かれています。

 ルームサービスを注文すると、これがまた驚くべき体験でした。

 ロボットが配膳を行い、日本のファミリーレストランを彷彿させるサービスを提供してくれるのです。

ホテルの部屋はiPadでコントロール

ルームサービスもロボットが行う

 移動手段においても、上海のイノベーションは顕著です。

 市内は起伏に乏しいため、レンタルサイクルが非常に人気です。日本と同様に、どこかで借りてどこかで返すことができるシステムですが、その規模は日本の比ではありません。

 車においては、ナンバープレートを見るだけで、その車が電気自動車なのかハイブリッドなのかが分かるようになっており、環境に優しい選択が容易になっています。

 そして、何よりも注目すべきは、自動運転の普及です。

 市内を走る車の中には「AUTO DRIVING」と表示された車が少なくなく、運転手のいない車を見かけることも珍しくありません。

 テスラの車もかなりの数走っており、これが上海の交通の未来を如実に示しています。

自動運転車には「AUTO DRIVING」表示が出る

小さなお店でもQRコード決済

 このように、上海はただ速く変わるだけでなく、その変化の中で新たな文化やライフスタイルを創出しているのです。

 デジタル技術の導入によって、より便利で快適な生活が可能になりつつあり、それは訪れる人々にとっても、住む人々にとっても、大きな魅力となっています。

 上海は今、その活気と進化で世界中から注目されています。この大都市に一歩足を踏み入れると、その変化の速さに驚かされるでしょう。

 特に、交通と支払いシステムの進化は目覚ましいものがあるのです。

 例えば、タクシーの代わりに、多くの人々がライドシェアサービス「DiDi」を利用しています。

 これはアプリを介して簡単に車を呼び、目的地まで快適に移動できるため、非常に便利です。

 DiDiは「Uberチャイナ」を引き継いでおり、インターフェースが似ています。

 そのため、米国でUberを使ったことがある人であれば、戸惑うことがありません。

 また、上海では現金を使うことがほとんどなくなりました。

 支払いはQRコードを用いたものが主流となっており、日本でも事前にアプリをダウンロードし、クレジットカードを連動させておけば、現地でスムーズにサービスを利用できるのです。

 小さな店でもQRコードが使えます。

道路や公園もロボットが清掃

 地下鉄もかつては交通系の非接触カードが使われていましたが、現在ではQRコードが使われており、改札を通る速度は少し遅くなったものの、それほど気になることもありません。

 街の中心部を歩けば、その清潔さに驚かされます。

 道路や公園ではロボットが掃除をしており、人々が気持ちよく過ごせる環境が整っているのです。

 さらに、街中では折りたたみスマートフォンが多く見られ、最新型のデバイスが特に人気を集めています。

 これは技術の進化だけでなく、消費者のニーズに応える中国の企業の力を象徴していると言えるでしょう。

 医療サービスにおいても、上海は大きな進歩を遂げています。

 多言語対応が可能なスタッフを配置するデンタルクリニックがあり、日本語での診察が可能なため、日本人旅行者や駐在員にとっても安心です。

 最新の医療設備を備え、詰め物の治療が必要な場合でも、歯科技工士が常駐しているので、多くの治療が即日で完了します。

歯科技工士が常駐してるので、歯の治療は即日で終わる

 日本のように、何度も通わなければならないということがありません。

 これらの進化する側面により、上海はただの商業都市ではなく、国際都市としての地位を確固たるものとしています。

 交通の便は良く、ショッピングやグルメ、エンターテインメントの面でも豊かな選択肢を提供しており、訪れる人々に新たな体験と喜びを提供し続けているのです。

 中国への渡航にはビザが必要になりました。中国企業の招待状も必要です。これは容易に取得できるものではありません。

 そういうこともあって、日本人の渡航者が極端に少ないのです。私の時は、外国人の入国審査が5人しかいませんでした。

 中国に対して渡航制限があるので、日本では中国の情報が極端に少ないのです。

 また、日本のメディアが報じる閉塞感とは裏腹に、現地では活気があふれ、人々は積極的に生活を楽しんでおり、公共のマナーもしっかりしています。

 以上のように、上海は多くの面で進化を遂げており、これからもその変貌を続けることでしょう。

 その動きはただ追いかけるのではなく、体験することでしか真価を知ることはできません。

 それぞれの訪問者がその魅力を異なる角度から感じ取れることが、この都市が国際的な舞台で輝き続ける理由なのです。

木寺 祥友のプロフィール

木寺 祥友(きでら・よしとも)

横浜市生まれ。パソコン黎明期よりIT業界へ足を踏み入れ、日本初のJavaプロジェクトにかかわり日本人としてはじめてJavaをプログラムする。

Javaの生みの親であるジェームズ・ゴスリング、HotJavaを作ったアーサー・バン・ホフなどJava開発者と米国で交流を深め、サン・マイクロシステムズの協力により『Javaを創った人々』(アスキー)を執筆。

携帯電話にJavaが搭載されることを機に株式会社エル・カミノ・リアルを設立。NTTドコモ504iシリーズのiアプリ(携帯Java)のプラットフォーム作りに携わる。

ラスベガスにおいて米国最大の携帯電話コンファレンスCTIAで講演。スマートフォンJavaともいえるアンドロイドの開発にも関わる。

政府系のIT組織、社団法人オープンガバメント・コンソーシアム顧問。著書は『アンドロイド・ジャパン』(インプレス)など。

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No.696 ★ 中国が定年引き上げ、それでも年金問題解決には一段の改革必須

2024年10月01日 | 日記

ロイター (By Farah Master)

2024年9月29日

 9月24日、 中国が今月、法定退職年齢の段階的引き上げを決定した。北京の公園で5月撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

[香港 24日 ロイター] - 中国が今月、法定退職年齢の段階的引き上げを決定した。年金財政赤字の解消と縮小を続ける労働力人口の回復に向け、ようやく第一歩を踏み出した格好だ。ただ経済の減速に伴って今後さまざまな痛みがより大きくなる以上、エコノミストや人口動態の専門家らは、さらなる改革が待ったなしだと主張している。

少子高齢化は世界共通の現象だが、中国では30年続いた一人っ子政策によって人口構成がいびつになった影響から、特にその傾向が鮮明。昨年の出生人口は900万人に落ち込み、国連の見通しに基づくと中国の労働力人口は、現状の出生率が続けば2010年から50年までで40%近くも減ることになる。

中国では老いも若きも、こうした変化に懸念を深めている。政策担当者が都市部と農村部の年金格差や社会の安定化、若者の高失業率に有効な手を打てていないからだ。

ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は「年金問題は今すぐ解決しなければならない。なぜなら、今ならまだ赤字を穴埋めするために必要なある程度の経済成長を確保できているからだ」と述べた。

2000年代初めに8%前後だった中国の成長率は5%前後まで鈍化している。しかし同氏によると、35年以降は最低1%程度に下振れしかねないという。

全国人民代表大会(全人代)は今月、こうした世間の不安を踏まえ、1950年代に定めた法定退職年齢の引き上げを市中協議なしで迅速に決めた。

新華社が伝えたところでは、李強首相は、退職年齢引き上げについて中国の社会保障制度を改善する「重要な動き」で、セーフティーネットの強化と人民の生活向上につながると発言した。

それでも中国の公的年金財政は依然としてひっ迫している。

省レベルの年金財政は全体の約3分の1が赤字運営で、中国社会科学院は、改革を実行しなければ35年までに年金の財源は枯渇すると警告した。

また都市戸籍の住民は、中小都市でも毎月およそ3000元(約6万1200円)、北京や上海なら6000元前後の年金が支給されるのに対して、農村戸籍の住民は09年にやっと公的年金の支給対象となったが、金額は雀の涙でしかない。

<納付期間延長>

中国の人口に占める60歳以上の比率は35年までに少なくとも40%まで上昇し、全体で4億人と、米国と英国の合計人口に匹敵する見通しだ。

働き手のうち、多額の年金がもらえる公的セクターの労働者は定年延長を選択する動機は乏しい半面、年金が少ない農村部からの出稼ぎ労働者はより長く仕事を続けようとする。

一方今回の決定には、年金受給対象となるための保険料の最低納付期間が15年から20年に延ばされることも盛り込まれている。

香港科技大学のスチュアート・ギエテル・バステン氏は、単発契約や非正規労働が増えている現状を踏まえると、最低納付期間の延長によって、多くのブルーカラー労働者にとって年金受給資格を得るのが一段と難しくなる恐れが出てくると指摘した。

またガベカル・ドラゴノミクスの中国消費者アナリスト、エルナン・クイ氏は、定年引き上げが労働者の懐を潤す効果は当面限定的にとどまると予想する。その理由として、多くの労働者にとって定年延長は選択制だが、最低納付期間が長くなるのは義務である点を挙げた。

ムーディーズのアナリスト、ジョン・ワン氏は、定年制度改革の成否は、技能を備えた高齢者をそろえられるか、技術革新に即した仕事や適応力を提供できるかといった問題にうまく対処できるかどうかにかかっているとの見方を示した。

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