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Retro-gaming and so on

レミングス


僕もSFCを購入して、暫くしてからご多分に漏れずレミングスを買った(※1)。多分中古だったと思うが。
でメチャクチャやってはいたのだが・・・・・・。

「あ〜、パスワードがメンドクセェ」

と思ったんだよな(笑)。



そう、レミングスは面をクリアした時、パスワードが表示されて、そのパスワードを入力すると、次回、解いた面をスキップして続きを始められるのだ。
これはファミコンではお馴染みのシステムだったが、もうドラクエIII以降だいぶ経っており、いわゆる「セーブ」の為にパスワード、と言うのは甚だ古すぎる手法に思えた。
もちろんバックアップ用メモリをカセットに積む、と言うのはそれだけでカセットの価格を上げる。そしてユーザーとメーカーの間にある種共通認識があったんだけど、バックアップ用メモリを積むのは人気ジャンルに限る、的なモノがあったんだよな。RPGとかシミュレーション・ゲーム、そしてSRPGにはスタティックメモリを積んでカセットの基本の値段が上がってもユーザーは気にせんけど、アクションパズルだと高価格は受け入れません、みたいな。明らかにジャンルで価格帯が分かれてるような認識だったのね。
よってレミングスみたいな「アクションパズル」は価格が一円でもイイから安くなんないと購買層は納得せんぞ、的なニュアンスが当時はあったんだ。
ただ、それでもパスワードってメンド臭いじゃん。ファミコン版ロードランナーとか倉庫番なら好きな面を遊べるのに。そもそもゲームの構成上、アクションパズルとか、必ずしもシューティングのように「面をクリアしていく」必要はねぇんだよ。
なんでこんなにメンド臭いの。原作のパソコン版だったら面をクリアしたらセーブしてくれんじゃね?
ゲームデザインもマウスドリヴンっぽいし。ああ、原作やりたいなぁ、と。そう強く思ったわけ。



ところがこれが勘違いだった。
後にCommodore Amigaを入手して、レミングスを入手してはみたんだけど。原作もパスワード制でやんの(苦笑)。

仕様かよ!

って思った。仕様ならしようがない(ダジャレ
パソコンなのに?セーブせずにパスワード?
実はこれには秘密があるんだ。



実はPCゲームメーカーが一番嫌がることに「ゲームのコピー」がある。これは同じソフトウェアメーカーでもゲームメーカーが特に神経質になることだ。
したがって、簡単にゲームがコピーされないようにしたい。これには色々と方法があるんだけど、当時一番簡単だったのはパソコンのOSを無視したようなゲームを作ることだ。
OSコントロール下にあると、ユーティリティとしてOSの力を借りることができるんだけど、そうすると、例えば「データコピー」のコマンドを走らせられるとそれに従わざるを得ない。それが嫌だったらマニュアルプロテクトとか掛けざるを得ないわけだな。
そして、OSコントロール下だと例えば特定のメモリ番地しか使っちゃいけないとか制限がかかる。すべてOSの制御の下にあるわけだ。
ところがOSを無視したようなゲームを作ると、全部自前で用意せなアカンようにはなるが、同時にゲーム起動中に「余計なモノは走らない」。パソコンのスペックをそのゲームの実行に全振り出来る。また、OSが走らないので、当然コピーコマンドなんかも無効になる。したがってゲームが複製出来ない。
実はこの「ゲームが複製出来ない」と言うのがポイントで、80年代のPCにはこういうスタイルのゲームが結構あったんだ(※2)。こういうゲームをフロッピーブートのゲームと呼ぶ。
要するにファミコンのソフトと同じなんだよ。ファミコンはOSなんぞなかったけどゲームは動く。メーカーがゲームを作る際のユーティリティを全部作らなアカンかったけど、別にゲームを動かすだけならOSは必須の要素じゃあなかった。
90年代に入るとほとんどのアメリカ製のPCゲームは「OSに従い」「(苦渋の決断で・※3)HDDへインストールされる事が前提」になってたが、イギリスはまだその域に達してなかったんだ。そしてホビーパソコンの場合パイレイシー(※4)がある、ってのが前提だったわけ。
そうすると、イギリスでは依然「OSを無視した」ゲームを作るのが主流だったんだけど、ここで問題が生じる。フロッピーからマシンを起動するのはマシンのブートローダーを使えば何とかなるんだが(※5)、一方フロッピーへの「書き込み」には制限を受ける。そもそもPCで何故にDOS、つまりDisk Operating Systemって呼んでたかっつーと「フロッピーディスクをオペレートするシステム」だからなんだよな、言外に。OSを無視する以上、フロッピーディスクに書き込みは出来ない、と言う前提になるわけ(※6)。
こうなると、いくらフロッピー媒体なゲームでも、事実上ファミコンの「バッテリーバックアップがない」カセットと変わんないわけよ(笑)。解決策は?そう、パスワードが一番簡単になる、ってわけ。
そんなこんなで、OSを無視して作られたレミングスはパスワードが仕様となってるわけだ。



とまぁ、原作のAmiga版を入手してみて、マウス操作以外にはガッカリしたワタクシですが。
それはさておき。
PC版レミングスの話をしよう。
元々、原作はAmiga 500と言うマシンをターゲットにして書かれたゲームだが。


名機、Commodore Amiga 500。

Amiga 500と言うのはスペック的な話をすると、ほぼセガのメガドライブと同じと言って良い。もちろん後発のメガドラが勝ってる部分もあるし、あるいは最初から汎用PCとして設計された(※7)Amigaの方が勝ってる部分もある。
だがまぁ、ザックリ言ってAmiga ≒ メガドラ、と言って良い。同じCPU積んでるしな。
ところで、90年代初頭のメジャーなPCだと、単純には、そもそも画像性能がメガドラにも負けてた、ってのが事実なんだわ。例えばNECのPC-9801は最大で16色しか同時出力が出来なかった。
そうすると、メガドラ並の能力を持つAmigaからのゲームの移植は、どうしても無理があって、結果「汚い」って事になるわな。
以前見せたが、PC-9801版のレミングスとメガドライブ版のレミングスだと圧倒的にメガドライブ版の方が綺麗だ。


 

もちろん、解像度はPC-9801版の方が細かいが、一方、色数が少ないせいで、プレイフィールド上にいるレミングスのカラーリングが怪しい沙悟浄みてぇになっててなんとも情けない。これじゃタビネズミじゃなくって河童だ。
しかしPC-9801版はまだいい。DOS版なんぞもっと酷いのだ。




レミングスが出た頃はアメリカではVGAからSVGAへ移行する最中だった。
しかし、イギリス人はしわい。わざわざIBM-PCのオプションとしてVGAなんかに金を払わなかった(※8)。したがってこの時点でもCGAが基準だったんだ(※9)。
こう鑑みると、当時の、少なくとも1980年代後半には最高スペックのPCの一つだったAmigaのゲームを他のPCに移植するのは難しかったんだ。ゲーム性はさておき、「ユーモア溢るる」キャラデザインであるレミングスがほとんどのPCでは活きない。
結果、スーファミを始めとする家庭用ゲームコンソールに移植してそこが主戦場化するのは正しかっただろう。
そんな中、唯一と言って良いPCでの綺麗な移植バージョンがある(※10)。ご存知X68000の版だ。



殆どオーバースペックと言って良い性能でAmigaのゲームの移植を行っている。
PC移植版としては最高に綺麗な移植なんじゃなかろうか。

と言うわけで、もし、往年のPCでレミングスを遊びたい、って言った場合、まずはX68000版を考慮すべきだろう。これならAmigaと遜色ない、いや、下手すればAmiga以上のプレイヤビリティが得られるだろう。

※1: 何度も書いてるが、90年代初頭は、Commodore Amigaの斬新なゲームがガンガンSFCに移植されていた(そもそも、スーファミ初のRPGとして名高いドラッケンも元々Amigaのゲームで、しかもフランス製である)。

※2: そもそも黎明期のPCにはOSなんつーもんはなくって、PCに備え付けられてるのはROM BASICだけだった、ってのも珍しくはなかった。

※3: HDDにインストール出来る、と言う事はコピーを認めざるを得ない、と言う事で、必ずしも当時のゲームメーカーの望んだ姿ではなかった。ビジネス用ソフトウェアを作る会社と違ってゲームメーカーは自社製品のコピーに関しては神経質だったのだ。
言い換えると、ファミコンのような「家庭用ゲーム機」がゲーム会社に取って良い商品たり得たのはコピー前提の商品じゃなかったからだ。

※4: いわゆる違法コピー。

※5: Apple MacintoshやCommodore Amigaのような当時のGUI パソコンでは、実はOSは本体のROMに積んでいた。だからここでの表現は必ずしも正しくはない。

※6: 実の事を言うとコンピュータに取ってOSは必須の要素じゃない。特に当時のパソコンでは、元々そういう意味合いはあったが、OSはあからさまに「一々自分で書くにはメンド臭いユーティリティの集まり」であり、フロッピー操作はその最たるものだった。

※7: 厳密に言うと違う。Amigaは元々、設計者のジェイ・マイナーが「フライトシミュレータをやりたい」と思っていて、汎用部品とカスタムチップのコンビで如何に安価なフライトシミュレータを作るか、と言った着眼点でデザインが開始された。それが二転三転して最終的にパソコンのカタチに収まったのだ。

※8: 元々、今のWindows機の原点であるIBM-PCコンパチ機は「各自オプションとして」画像ボードや音声ボードを「追加して」使うカスタマイズ仕様だった。
90年代初頭辺りで、アメリカではそろそろ全部バンドルで売る商法になっていたが、全世界的にはまだそういうビジネスではなかった。
この頃のアメリカではVGAやSVGAを追加しつつ、サウンドブラスター標準装備、と言うカタチがほぼスタンダードになりつつあった。

※9: 一応VGAモードもある。



さすがに、こうなるとPC-9801版よりマシだが、それより「どうしてこの時代にわざわざ(90年代にはアメリカではほぼ死滅してた)CGAなのか」と言う事だ。結果イギリス向けにCGA、アメリカ向けにVGA版を用意してた、と言うイギリス人の懐事情が大きい。

※10: 他にはFM-TOWNS版もあるが、こっちは良く知らんので言及しない。
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