Pentanium Reactor Blog

ゲーム、アニメ、CG、プログラミング

あけおめ

2014年01月06日 03時36分38秒 | CG
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

というわけで年も明けたのだけど去年の10月にあったCGWORLD 2013 クリエイティブカンファレンスの感想とか書いちゃうよ。
遅いね(爆

まずはデジタルフロンティアのモーキャプ マエストロ Vol.1~ DF流 モーションキャプチャーの真髄とは ~
DFのモーキャプスタジオは16M画素のカメラを100台使って20人同時収録できる代物だとか。しかも本当は30人いけるんじゃとか。
他にフェイシャル専用のもあるとか、3Dスキャンに4D Dynmicsのを使ってるとか。
で、実際にガッチャマンの時の400万頂点のAlembicだと言うスキャンデータを見せてくれた。
これがなんと透明なバイザーをスキャンするために貼ったというマスキングテープのつなぎ目まで解る。
こんなにディテールが撮れるものなのかとただただビックリ。
光沢の強いスーツをスキャンするためにベビーパウダーをはたくとかアナログな努力はしてるらしいけど。
モーションキャプチャーについては、マーカーもDFオリジナルで用意しているとか。
買うと高いからという理由の他に、小型(10mm)にして密度を高めるためとか、壊れ難くして付け直しの手間とそれによるノイズを減らすためとか。
さらにスーツもオリジナルで、なんとMarvelousedesignerでデザインした代物だそうだ。
生地の突っ張っている部分を表示するモード(プレッシャーポイントというらしい)があって動きやすいスーツに改良するのに役立っているそう。
実物のカメラも付いているHDストリーミングのバーチャルカメラもあって、MotionBuilderのカメラと連動できるのでプレビューもできるとか。
ちなみにカメラは監督用にPSコントローラーでFPSライクに操作できるようになっていて、この操作が最優先になる仕様だそうな。
機材編はこのくらいで、データ編集編。
その場でキャプチャの確認用に15mくらい離れた所から撮った絵を元にダミーモデルを用意。
でプロレス技などのキャプチャデータを直したりするのを見せてくれたけど、その辺は割愛。
主に私がMotionBuilderに馴染みがないからへーと見るしかない(笑)
バットみたいなものは上下にコントローラーを付けて、上下どちらでも支点にできるようにしておくと便利、とかは他所でも使えるかも。
最後に龍が如く維新のトレイラーのメイキングを見せてくれた。
これがなんと冒頭の討ち入りの部分が本当にワンカットで同時収録。
スタジオの大きさと多人数キャプチャの威力だそうな。
以上で、さすがテクノロジーを売りにしているDFさんという感じ。
キャプチャやスキャンというのも格段に進歩しているものだなとよくわかった。

次はオー・エル・エム・デジタルのド根性映像制作をやめたい!どうやって?-快適映像制作のためのド根性ツール開発-
『The innovation part is easy, but transferring the ideas and technology can be hard』Tony DeRose (Pixar), SGGRAPH 2013 DigiPro
『イノベーションの部分は簡単だが、アイデアや技術を現場に移すのは難しい』
という一文の引用からスタート。以下内容の都合で箇条書き風で。

R&Dの悪循環:
アーティストの時間がない
 ↓
良いツールができない → アピールできない → R&Dって何? → 何を頼めば良いの? → (左端へ戻る)

成功しているツールの条件
1 安定している
2 すぐ使える
3 ドキュメントがある。マニュアル、チュートリアル、webなど
4 コミュニケーション
 - テスト、フィードバック、改善
 - 発表、紹介
1~3はエンジニアの仕事。4はデザイナーとの共同作業。

A:うまくいく、B:いまいち、C:失敗する
目標 - A:はっきりしている B:それなりに C:不明
スペック - A:はっきりしている B:なんとなく C:不明
依頼人 - A:偉い人 B:従業員 C:誰?
必要性 - A:必要 B:メリットはある(速い、安いなど) C:要る?
プリプロ/調査期間 - A:多い B:それなり C:ない
プリプロ/調査用の人 - A:やりたい B:やらせる C:いない
テスト用の人 - A:やりたい B:やらせる C:いない
フィードバック - A:多い B:それなり C:ない
パイプラインへの影響 - A:大? B:中? C:小?
(この表はメモが怪しいので内容が違うかも。特に最後のパイプラインへの影響)
ちなみに『目標』はこういうものを実現したいというもの。
『スペック』はそのために実装しなければならないもの。(だったと思う)

成功例
OLMSmoother
いわゆるMLAA。目標とスペックが明白。
作業に必須。
撮影監督などから多くのフィードバックがあった。
結果4ヶ月程で開発できた。作りやすかった。
TeamScript
元は技術が解るデザイナーが作っていたものをR&Dが引き取ったもの。
パイプラインを統一するために整備することになった。
NoiseDeformer
要望はあったものの、具体的に誰がというわけでも無かったものの成功した例。
Mayaには無いのであれば使いたいという人が多かった?
R&Dはこのような微妙な線の要望もしっかりメモしておく。
良いインターンが来た時にでも作ってもらいましょう(笑)

最後にエンジニアに向けて。
Mayaを開くな!資料を集めろ!開発禁止!
(目標とスペックは明確に)

John Kahrs (Papermanの監督)
『Don't tell a professional how to do his job, tell him what you want』
『プロには仕事のやり方ではなく、どうしたいかを伝えなさい』
音楽を頼んだ時にこういう楽器でこんな調子でみたいに言ったら出来上がった音楽は最高だったが、言ったことは全部無視されていた。
という話から。らしい。

という感じ。
もうどんな業界でもエンジニアは聞いといて損は無かったんじゃないかと思った。
資料がアップロードされていれば良かったんだけどOLMのR&Dのページにもそれらしきものは見当たらず。

そしてポリゴンピクチュアズのメタプログラミングによる Maya プラグインジェネレータ
およびシェーディングツールについて

Mayaと3Delightのオリジナルのパイプラインについてのお話。
Pythonによるメタプログラミングの、とは書いてあるもののその辺りはいまいちピンと来なかったのは私の3Delightに関する知識の無さと英語力のせいかも。
とはいえシェーダーの設計思想として、Physically(物理的に正しい)でありつつもVisually(わかりやすい)なものにするために、いわゆるウーバーシェーダーにはしないでいくつかのBSDFを組み合わせる方式にしてある、とかいうのは少し参考になったかも。
実際の手順も見せてくれたけれど、Mayaのシェーダーをそれなりの量のRSLに変換していくのは大変そうなパイプラインだなぁと思った。
映像プロダクションで外部レンダラーを使う場合はこんなものなのだろうか。

最後はスタジオカラー VS 神風動画
交互に両者が同じお題についてネタを披露していく進行。
面倒なので別々にまとめ(笑)
カラーは魔神STATIONのPVについて。
モデルもカット毎に変形させてるのは当然として、最終的にはAfterEffectで影を描いてるとかいう人力っぷり。
その一方で西荻窪の駅は実物を細かく写真を撮って採寸して作っているとか。
そしてなんとこの動画、エフェクトもほとんどCGだそうな。
手順の解説は面倒なので、例を見せてくれた炎のエフェクトを真似してみたけど本物とはほど遠い(笑)
プリレンダーなので割と贅沢にパーティクルを使っていたのも印象的。

神風動画は月極蘭子のいちばんながい日の映像の一部。
カラーはモデルをブレンドシェイプ(?)のようなもので直接いじってしまうのに対して、こちらはボーンをあちこちに入れて対応。
頭のボーンですら3つくらいに分かれていて、頭がくの字に曲がるのでマンガっぽい表情に対応できる。
鼻にもボーンが入っていて、線を出すために無理矢理曲げるなんてこともしているそう。
モーションについてもあえて立っている時に揺れたりしないでアニメっぽさを出したりしてるとか。

とりあえずどちらも壮絶なこだわりと人力で成り立っているなあという感想。
神風動画の頭までボーンでクネクネ動かすのや、トゥーン風エフェクトは個人的に目新しくて面白かった。

全体的にはOLMの話がエンジニア的にためになって、他も間違いなく参考やインスピレーションの元になるかなという感じでした。

というわけで今年が良い年になりますように。