雑木帖

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TMのように電通が請け負い、やはり怪しげなものだった『地方テレビキャラバン』

2006-11-15 21:51:22 | 政治/社会
 昨日の教育基本法特別委員会で社民党の保坂議員が、176ヶ所で開催された内閣府主催・タウンミーティングの全費用19億6758万111円の使途の問題で質問をおこなった。

 ・保坂展人のどこどこ日記 ──教育基本法と「世論偽装のタウンミーティング」

 しかし、多額の政府広報予算を使い、怪しげでいかがわしげなものを開催していたのはタウンミーティングのみではなかったようだ。
『月刊・創』(2005年3月号)によれば、「郵政民営化の意義を国民にPRする」として竹中平蔵郵政担当大臣を主役として04年11月から始められた『地方テレビキャラバン』も同じだったらしい。
『月刊・創』 2005年03月号

 4・2・2戦略掲げる電通の政・官界人脈
 横田一(稿)


 …(略)…

 政官界の人脈を背景に郵政民営化PR

 既存分野での強みの一つは、「歴代首相で電通幹部が会っていない人はいない」(永田町ウォッチャー)といわれる政界や官界とのパイプの太さだ。、小泉首相にワンフレーズポリティクスについて助言したのは電通幹部という説もあるほどで、現政権にも食い込んでいる。
 小泉政権が発足した01年、全国の都道府県を回って、住民の声を聞く「タウンミーティング」が始まった。長野県の田中康夫知事が始めた「車座集会」のパクリとされるが、自民党の歴代首相とは違った印象を与え、支持率アップに貢献したのは間違いない。これを随意契約で請け負ったのは電通だった。
 ただしタウンミーティングの平均開催費用は、約1900万円、1回平均30万円の車座集会の60倍以上もかかっていた。47都道府県を回ったから、総額で9億円が電通の懐に入った計算になる。小泉政権との関係をビジネスに結びつけたといえるが、似たような話は他にもある。
 04年11月27日、竹中平蔵郵政担当大臣が北海道放送(札幌市)の収録ルームに人った。同席したのは、地元代表の町長ら2人と郵政民営化有識者会議メンバーの宮脇淳北大教授。郵政民常化について1時間程度の討論会を行い、地元テレビ局が政府広報番組として放送する「地方テレビキャラバン」がスタートしたのだ。
 その狙いは、年金問題などに比べて関心が薄い郵政民営化の意義を、国民にPRすることである。
 竹中大臣はこの日の札幌を皮切りに、まさに北は北海道から南の沖縄まで全国26カ所を回った。「政府広報番組を2ヵ月位の間に20回も放送することは記憶にはない」(政府広報室)と前代未聞の規模のキャンペーンが展開されたのだ。
 小泉政権の命運をかけた政治課題のためだろうが、この郵政民営化PRも、電通が随意契約で請け負っていた。請負金額は「放送する時間帯によっても金額が変わってくるので、いまは答えられない」(政府広報室)ため不明だが、タウンミーティングと同程度と仮定すれば、約5億円(=1900万円X26回)となる。
 もともと地方テレビキャラバンは、郵政民常化推進本部の第1回会合(10月5日)で竹中大臣が「郵政民営化の実現には国民の幅広い理解が重要として、なるべく多くの地域に足を運んで各地域の方々と討論会を行う等考えている」と発言したのがきっかけだ。
 しかし札幌で地域代表2人の発言時間は1時間中、たった13分間。政府側のPRの合間に地域住民が口を挟むにすぎなかった。しかも「NHKの日曜討論のようなお行儀がいい雰囲気で、『朝まで生テレビ』のような激論が闘わされる感じではなかった」と報道関係者は振り返る。
 一応、外にモニター画面が設置されたが、見ることが許されたのは政府が通知した内閣府や総務省などのクラブ記者だけで、フリーの記者はシャットアウト。
「討論会の議事録を公開する予定も番組ビデオを貸し出す予定もない」(郵政民営化準備室)ため、竹中大臣を厳しく批判した発言がカットされたとしても、チェックしようがない。まさに気心の知れたお仲間同士の“密室談義”という様相を呈していたのだ。
 オープンな場でさまざまな意見が飛び出す田中知事の車座集会とは全く対照的だ。郵政民営化の課題は「郵便局が減るのではないか」という地方の不安にどう答えるかにかかっているが、電通は予定調和的な討論会の開催でお茶を濁し、民意に耳を傾けた体裁づくり(アリバイづくり)に一役買ったといえる。
 小泉政権にはプラスになるかもしれないが、納税者にとっては見過ごせない問題だろう。年金制度の抜本改革など国民の関心度の高いテーマから着手すれば、使わなくても済む政府広報予算が電通に回ったことになるからだ。
 それにしても、なぜ電通は小泉政権の重要施策で“一社指名”のお呼びがかかるのか。「よほどのことがない限り、随意契約は結べないはずだ」と話すのは、社会保険庁の随意契約を追及してきた長妻昭衆院議員(民主党)である。
「会計法は一般競争入札を原則とし、随意契約が許されるのは、緊急時などの三つの場合に限定しています。しかも緊急性が理由の随意契約はほとんどが災害復旧関係です」(長妻氏)
 自ら圧倒的な強みについて電通は「地万のノウハウを持ち、特定の地域をこえた全国的な村応もできるためではないか」と話す。役所側の見方もほぼ同じだった。タウンミーティングの担当者はこう説明した。
「タウンミーティングは、一定の実績のある業者との随意契約により、開催準備の迅速性を確保することが重要。電通は、支社、支店及び営業所を全国に持ち、『二十一世紀の郵便局を考えるシンポジウム』(郵政事業庁主催・全国47都道府県)など多くの中央省庁主催イベントの請負実績があり、高い企画・運営能力についても業界内での評判が高い」
 政界との太いパイプと中央省庁の信頼感が、政府広報に関連する予算を獲得する強みになっているようだ。かつて電通は“築地CIA”や“影の情報省”と呼ばれ、中でも政界官界関係を一手に引き受ける「第九連絡局」は情報操作の戦略中枢として恐れられたものだが、そのノウハウや伝統はいまだに引き継がれているのである。
 …(略)…


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2 コメント

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Unknown (ゆりかりん)
2006-11-17 20:43:17
大昔から、電通は政府の太鼓持ちだったわけですから、
「然もあらん」・・・というか、「やっぱりね」って感じですね。
つくづく政府と大手広告代理店の蜜月にメスが入らないって、
ムカつきます。
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ゆりかりん さん (雑木帖@管理人)
2006-11-17 21:52:46
マジックショーというのは観客がマジックのからくりを知ってしまえば興行は成り立ちません。
また、一つの或マジックのからくりがわからなくても、マジックにはからくりがあるということを知っているのとそうでないとではやはり大きな違いがあります。
日本は、マジックショーを無防備で見ている観客といえないでしょうか。
政府の広報には、新聞・テレビを広告で支配しているような電通という企業が関わっているものが多いということを知っている人がどれだけいるでしょうか。官庁の記者クラブから発せられる新聞などの記事は、官庁の広報課から渡される資料をほとんどそのままタレ流しているだけで、TMのやらせと本質的に変わるところはない、ということに思いを至らせる読者がいったいどれだけいるのでしょうか。国会での質疑は、議員の答弁のほとんどを官僚が原稿に書き、議員は単にそれを読み上げているだけであることが多いこと、それどころか時には質問のほうすらも答弁原稿を書くその同じ官僚が原稿を書いて質問者の議員に渡していること──これもTMのやらせと同じようなものではないでしょうか──などを、ニュースを見ているどれだけの視聴者が知っているでしょうか。
学校の授業で、本格的なメディアリテラシーの授業を、と思います。日本はこの点では後進国なみなのではないでしょうか。
現状では教育基本法の改正など必要ありません。正しいメディアリテラシーがもし日本で世の中に行き渡れば、世の中随分と変わっていくと思います。

3流の政治は3流のマスメディアが生み、3流のマスメディアは3流の視聴者が生む、と思います。政治とマスメディアの双方が有権者=視聴者を3流のままで留め置きたいというのは両者を統べる者たちの私益からいって当然な論理であり、メディアリテラシーの修得に関し両者に多くを期待するのはその意味においては非論理的といえます。
とりあえずネットでそれがどれだけできるか、それが問題だと考えます。
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