**馬耳東風**

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超能力の真贋(嘘ほんと)  

2015-11-19 | 世事諸々
日本でも有名なスプーン曲げの元祖、イスラエル人のユリ・ゲラーは1970年代に度々来日してスプーン曲げの奇術をテレビで演じて見せています。彼はもともとマジシャンでしたが、日本ではテレビを通して超能力者と紹介されていました。

当時の日本は霊能者・超能力者ブームでそれらを自称する(芸人)も多く、テレビ出演もしていたのです。テレビのない時代には(ドサ廻り)などと言われた芸人達でしたがテレビに出演するとその泥臭い芸(幽霊を自在に見る、守護霊・背後霊と会話をしてみせるなど)は視聴者側にその欲求があったのでしょう高視聴率番組になったこともあったのです、そのためテレビ局側も力を入れて(やらせ番組)と言われながらも放映回数を増やしていました。彼らは霊能者・超能力者と紹介され、それを演じていたのですが、お粗末芸に変わりなく、やがて視聴率も低下してブームは終焉しています。

ユリ・ゲラーはその風貌からいかにも超能力者然としていたので、アメリカでもスプーンを念力で曲げると称してホテルやレストランなどの余興用舞台で演じて人気者でしたが、テレビ出演の機会を得てその巧技が受けて知名度を上げ、ついに当時(1973年頃)全国ネットで最も人気のあったABCのバラエティ番組「ジョニー・カーソン・ショウ」に招かれ出演したのです。ところが、一流番組は詐術を看過することはなく、ゲラーの超能力は暴かれてしまいます。この番組にはもう一人、アメージング・ランディという当時の第一級マジシャンが出演していて、彼がゲラーの詐術を暴くというものでした。一流奇術師が超能力者を自称する同業者の(芸)マジックを暴くという趣向だったのです。(今の日本にも類似番組があるようです)

アメージング・ランディにユリ・ゲラーのスプーン曲げの詐術はあっけなく暴かれました。ランディはカーソンと申し合わせて(市販)のスプーンを自前で揃えて番組終盤時に「今日はこちらで用意したスプーンも曲げてください」と追加芸をさりげなく申し出たのです。するとゲラーは快く数本試しましたが、なぜか一本も曲がらないと首を振り、弁解などはせず黙って退場したそうです。ランディとカーソンはその態度に一流ショウマンシップを見たのか、肯いて拍手で送り出したということです。ユリ・ゲラーはその振る舞いのよさで信用を維持して日本を含めた海外で大ブレイクすることになります。

日本やオーストラリア、ヨーロッパ各地で、彼のスプーン曲げの芸は人々を驚かせ、テレビブラウン管の中でクローズアップしたニ本の長い指で摘んだスプーンの首を別の手の指で軽く擦ると、スプーンの首はみるみる曲がり、ポトリと落ちるのです、まか不可思議な芸だったのです。「テレビを見ているあなたにも出来ます、スプーンを用意してください、一緒にやりましょう」とユリ・ゲラーは真顔で視聴者に呼びかけ、それに呼応して全国津々浦々の家庭で、大勢の視聴者がスプーン曲げに参加したのは、まだ覚えている人も多いでしょう。

スプーン曲げに挑戦した人々の中に、スプーンが曲がった、折れた、首を落とした、という子供から大人までの老若男女が各地に現れて混乱したこともありました。番組を担当したスタッフが最も困惑していたでしょうが、群集心理がなせるところ、とテレビ局内では弁明していたかも知れません。それでも世間の風聞では、実際に成功したものも大勢いたと信じるものも多く、超能力信仰は広まっていたのでした。

1970年代というのは超能力が価値ある能力と考えられていたのも事実で、偽者もいるが本物もいると思われていたのです。それは日本よりアメリカで正当性を認められていて、CIAがスプーン曲げより実用的な超能力・未知の能力に興味を示し求めていたのです。

あたかもソ連との冷戦の最中で、CIAが入手したソ連情報によると、ソ連はアメリカに先行して、すでに100人を越える超能力者を集め、六千万ルーブルの予算をつけて秘密目的の訓練を始めているというもので、具体的には(超感覚的知覚)という、超能力者による精神集中力による探査で、その透視力でアメリカの潜水艦の位置を特定することが出来るものと報告されていたそうです。それを額面通りに受け取って脅威を覚えていたのか、対抗手段を講じるべく、アメリカ全土に呼び掛けて、超能力者、特に遠隔透視者を募ったということでした

その結果、CIAは1972年に特殊能力開発調査機関を設立本当の話です)年間50万ドルの予算も用意して、23人の遠隔透視者と3人のその他の超能力者を雇用し、国務省の40人の軍事スタッフで管理体制を作り、遠隔透視の実用に向けた訓練に当たったということです。

しかし、冷戦の終結が目前に迫っていたその頃、その能力をソ連に向けて応用した記録はなかったのです。その代わり、1980年代に次の四つの所在調査を行った、と公文書公開記

録に残っているそうです。

*リビアのカダフィ大佐の所在
*北朝鮮の保有するプルトニュームの所

*イタリアのテロ組織「赤い旅団」が誘拐した人質の所在
*アフリカで墜落したソ連のTU-95爆撃機の位置の特定

結果はおもわしいものではなかったようで、CIAはほどなく別の機関AIRに、遠隔透視による上の4事例の有効性評価と

査定を依頼をしたところ、AIRはバッサリと有効性を否定し、なおかつ調査の中止を勧告したのでした。アメリカの超能力作戦はその段階で中断し、翌年には終了となってしまったようです。

それでも、彼ら(超能力者達)はめげなかったようです。その後はエンターテイナーとして生き残り、日本のテレビ局でも、彼らを使って数局が「超能力者番組」を作っていました。CIA残余の遠隔透視者達を招聘して、日本ではまだ当然のように彼らを(超能力者)として遇して番組を作っていたのです。

数回シリーズで放映された人気番組のひとつに、家出人捜しという番組がありました。視聴者から家出人探しの依頼を受けて、アメリカのCIA残余の遠隔透視者がその家出人の(その時の生死)を占い、生きていると認定すると追跡調査を始めるというものです。

1980年4月、イラン国内でアメリカ大使館員人質事件というのがあり、アメリカ人大使館員とその家族53人を救出するため、海兵隊特殊部隊が編成されて救出に向かったのですが、その部隊が大使館に突入する事前に、大使館内の様子(人質の監禁場所、イラン官憲の配置場所)を探索する目的で在米の超能力者の一人、マクモニーグル某が依頼されて、その遠隔地からの大使館内部の透視をし、見事館内の人員配置図を描き、救出作戦は成功した、と本人がそのように自己紹介して、日本にやって来ていたのでした。

目的は家出人捜索というテレビ番組のためもので、視聴者の依頼による行方不明者探索を何度か行って好評でした。容貌が誠実な建築設計士風で、不明者の最後の足跡から遠隔透視で何事かを読み、巧みにペンを走らせて迷いなく足跡地図を書き上げるのです。

その詳細に描かれた地図は見た目にもプロの手によるもので、日本の地方都市や海岸付近の村落を描いたものなど、実際にテレビ局のスタッフが地図を辿ると、驚くことに、そこに記載されている道筋は、形状から分岐点の位置まで目前に見るものと一致していて、左右の風景まで樹木の有無など詳述されていて、実地検分図にも思えたとのことです。

予備知識なしに日本の地方の名もない小都市の地図を本当に見たように書いていて、実際の地理に一致するものだったので、テレビの視聴者も共々に驚き遠隔透視によるというその不思議な能力を信じさせるものだったのです。

もう一つは、未解決事件の犯罪現場を透視して犯人の人相・服装、現場の状況などを描いてみせる(超能力者)番組で、アメリカ人の女性超能力者が何度か日本を訪れてテレビ出演しています。

その一つは、今でも記憶に残る悲惨な強盗殺人放火事件で、現場は東北のサラリーマン金融の青森支店で、犯人は現金を強奪後4人の支店員の通路側に灯油をまいて放火し全員を死亡させたというものでした。

事件後数週間経って、アメリカから来た超能力者が現地を訪れ犯罪現場(部屋の中)を透視して、事件の残像を見たというのです。それによると、犯人は単独で初老の男性、身長は1.65m、痩せ型・・鉛筆でその容貌をスケッチしてみせました。アゴの細い貧相で眼が大きくひ弱そうな体型にニット帽子、といういでたちを克明に描写したもので印象的でした。驚いたのは、その後犯人は逮捕されましたが、彼女の似顔絵は本人に酷似していたのでした。

CIAに遠隔透視作戦の中止勧告を出したAIRの指摘は、遠隔透視による大使館内現場描写図というのも、それまで内部通報による多くの情報があり、それを参照していたら可能というもので、必ずしも遠隔透視によらなくも人員の配置も室内の様子も把握できた、といえるもので、特殊能力によるとは言い難い。外部地形経路の指摘は適合したものだったが、これもコンピューターの地図検索でアメリカからでも図解できたもの。北朝鮮のような情報皆無の地域に対する遠隔透視がなされていないのも、遠隔透視には疑義がある、と判断され作戦の中止になったのでした。

サラ金事件の場合は、事件前後にも不審者の目撃情報はなく、アメリカからやって来た女性超能力者に犯人を推測する情報は皆無であったはずで、事件現場に残った事件の(残像)を見るという不可思議な能力で犯人の似顔絵を描いて見せたのは、それをリアルタイムでテレビで見た視聴者にとっては驚き以外の何ものでもなかったのです。そのため様々な反響が放送後テレビ局によせられたそうです。

彼女は現在もまだアメリカ本土でFBIや地方警察や郡保安官事務所などで、犯罪捜査補助活動をしているとのことで、アメリカでは超能力信仰は消えてはいないようです。



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