引き続き、ニューズウィークの記事から。
個人の健康問題にどこまで介入すべきか
「肥満撲滅の努力は利よりも害がある。太った人々を二流市民だと思わせてしまう」
肥満を敵視したり規制する風潮は、やせることへの社会的重圧を形作ったり、体形による差別を生む可能性をはらんでいる。
「差別は現実問題だ。反肥満キャンペーンがそれをあおっている」とニュー・カレッジ・オブ・カリフォルニアのソンドラ・ソロベイ教授(法律学)は言う。
「肥満者の法的権利を擁護し教育する会」を運営する彼女の元には、肥満を理由に職が得られなかったり昇進を阻まれたり、解雇されたり保険に入れなかったりする人が相談に来るという。
「肥満撲滅のための努力は利よりも害がある。太った人々を二流市民だと思わせてしまう」
イギリスの大衆紙が、特大サイズの服に「肥満相談電話」の番号を記したラベルを縫いつけるという、メタボリック治療の専門家の提案を紹介した際は、読者からこんな怒りの投書が届いた。
「こんなふうに服にラベルを縫いつけるという発想はきわめて不気味だ。その行き着く先は?政府が国民に対して負うべき責任は、どこからどこまでなのか」
肥満者をターゲットにした規制を導入しようとして反発を受け、やり方を変えるケースも少なくない。クラリアン・ヘルス・パートナーズは従業員が尻込みしたため、課徴金をやめて褒賞制度を取り入れることにした。BMI値やコレストロール値を改善したり、運動プログラムや健康相談に参加した社員に褒賞で報いる会社は多い。アメリカの大企業300社が参加する全米企業健康グループでは、加盟企業の大半がインセンティブや保険料の割引を導入している。
「罰よりはいい。従業員に罰せられていると感じさせるよりも、前向きな変化を奨励すべきだ」と、米コンサルティング会社ワトソン・ワイアットのローラ・ホーグは言う。それでも、従業員側は手放しに歓迎しているわけではない。「彼らは押しつけがましいと思っている」と、職場での肥満対策を研究する南メソジスト大学コックス・ビジネススクールのミゲル・キノネスは言う。
肥満が、社会が一体となって取り組むべき課題となりつつあることはまちがいない。問題は、健康的なレベルに体重を維持するように促すことと、それが太っている人の人権まで侵害することの境界線を見極められるかどうかだ。
「大切なのは、肥満した人々を非難しないようにすることだ」と、国際肥満対策委員会のネビル・リグビーは言う。「体重が十分に減らないのは自分が悪いのだと人々に思わせるリスクがかなり高い」
冒頭で紹介したミシシッピ州の法案は、レストランオーナーや人権団体だけでなく、活動家のミーミ・ロスを含む肥満対策の推進者からも「あまりにも差別的」と反発を受け、すぐに廃案になった。
「法案が通るとは思っていない。ミシシッピで最も深刻な問題を考えるきっかけになってほしい」と、民主党の議員とともに法案を立案した共和党のジョン・リード州下院議員は当初語っていた。
ただし今のペースで肥満が増加し続ければ、レストランへの「出入り禁止」を本気で主張する人々が現れても不思議はない。
“大切なのは、肥満した人々を非難しないこと”―大切な視点ですね
個人の健康問題にどこまで介入すべきか
「肥満撲滅の努力は利よりも害がある。太った人々を二流市民だと思わせてしまう」
肥満を敵視したり規制する風潮は、やせることへの社会的重圧を形作ったり、体形による差別を生む可能性をはらんでいる。
「差別は現実問題だ。反肥満キャンペーンがそれをあおっている」とニュー・カレッジ・オブ・カリフォルニアのソンドラ・ソロベイ教授(法律学)は言う。
「肥満者の法的権利を擁護し教育する会」を運営する彼女の元には、肥満を理由に職が得られなかったり昇進を阻まれたり、解雇されたり保険に入れなかったりする人が相談に来るという。
「肥満撲滅のための努力は利よりも害がある。太った人々を二流市民だと思わせてしまう」
イギリスの大衆紙が、特大サイズの服に「肥満相談電話」の番号を記したラベルを縫いつけるという、メタボリック治療の専門家の提案を紹介した際は、読者からこんな怒りの投書が届いた。
「こんなふうに服にラベルを縫いつけるという発想はきわめて不気味だ。その行き着く先は?政府が国民に対して負うべき責任は、どこからどこまでなのか」
肥満者をターゲットにした規制を導入しようとして反発を受け、やり方を変えるケースも少なくない。クラリアン・ヘルス・パートナーズは従業員が尻込みしたため、課徴金をやめて褒賞制度を取り入れることにした。BMI値やコレストロール値を改善したり、運動プログラムや健康相談に参加した社員に褒賞で報いる会社は多い。アメリカの大企業300社が参加する全米企業健康グループでは、加盟企業の大半がインセンティブや保険料の割引を導入している。
「罰よりはいい。従業員に罰せられていると感じさせるよりも、前向きな変化を奨励すべきだ」と、米コンサルティング会社ワトソン・ワイアットのローラ・ホーグは言う。それでも、従業員側は手放しに歓迎しているわけではない。「彼らは押しつけがましいと思っている」と、職場での肥満対策を研究する南メソジスト大学コックス・ビジネススクールのミゲル・キノネスは言う。
肥満が、社会が一体となって取り組むべき課題となりつつあることはまちがいない。問題は、健康的なレベルに体重を維持するように促すことと、それが太っている人の人権まで侵害することの境界線を見極められるかどうかだ。
「大切なのは、肥満した人々を非難しないようにすることだ」と、国際肥満対策委員会のネビル・リグビーは言う。「体重が十分に減らないのは自分が悪いのだと人々に思わせるリスクがかなり高い」
冒頭で紹介したミシシッピ州の法案は、レストランオーナーや人権団体だけでなく、活動家のミーミ・ロスを含む肥満対策の推進者からも「あまりにも差別的」と反発を受け、すぐに廃案になった。
「法案が通るとは思っていない。ミシシッピで最も深刻な問題を考えるきっかけになってほしい」と、民主党の議員とともに法案を立案した共和党のジョン・リード州下院議員は当初語っていた。
ただし今のペースで肥満が増加し続ければ、レストランへの「出入り禁止」を本気で主張する人々が現れても不思議はない。
“大切なのは、肥満した人々を非難しないこと”―大切な視点ですね
