【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》

古都、薬を売る老翁(壷公)がいた。翁は日暮に壺の中に躍り入る。壺の中は天地、日月があり、宮殿・楼閣は荘厳であった・・・・

“バッタの子孫”の活動録/前野ウルド浩太郎(08/30)_学究達=442

2023-04-26 05:30:15 | 冒険記譜・挑戦者達

ⰧⰊⰧ Intermiussion/幕間 =狂(きょう)の出来事=平成5年04月26日<ⰧⰊⰧ
◆ パブロ・ピカソ『ゲルニカ』のモチーフをナチスが手掛ける(1937年)。 ◆ 国鉄の労働組合が私鉄・バス・タクシーを巻き込んでストを打つ(1966年=戦後最大の交通ゼネラル・ストライキ)。この時の威力に慢心したのか8年後に同じ手を使ったがブーイングを浴びる破目に。 ◆ ウクライナはキエフの近所にある原子力発電所が火事になり、全世界が放射能による迷惑を被るばかりか大量の放射脳を発生させる結果に(1986年)。

本日記載附録(ブログ)

アフリカでしばしば大発生し、ユーラシアの農作物に深刻な被害を及ぼすサバクトビバッタ。

防除のために巨額の費用が投じられているが、未だに根本的な解決策は見出されていない。

『バッタを倒しにアフリカへ』と単身、西アグリカ・モーリタニアに渡った日本人がいる。

”愛するものの暴走を止めたい”と語る前野ウルド浩太郎、秋田市土崎港出身の人である。

【この企画はWebナショジオ】を基調に編纂(文責 & イラスト・資料編纂=涯 如水)

“サバクトビバッタの相変異” の解明が世界を救う

前野ウルド浩太郎(08) ◇◆ 第3回 バッタ博士、サバクトビバッタと出会う =2/3= ◆◇

 そのかいあってか、前野さんの農業生物資源研究所時代は、学問的な意味で非常に生産的だった。師である田中博士とともに出した論文、それもファーストオーサーとしてのものが17報、セカンド、サードのものも合わせると22報を数える。すべてを網羅するわけにもいかないので、ご本人のセレクションで「お気に入り」という2報について述べてもらった。

「まず、サバクトビバッタの孤独相と群生相のメス成虫では、産む卵の大きさと数が違うことがすでに知られていました。孤独相は小さい卵をたくさん産み、群生相は数が少ないけれど、大きい卵を産む。で、その大きさの異なる卵からは、色の違う孵化幼虫が出てきます。孤独相の小さな卵からは緑色の、群生相の大きな卵からは黒い色の幼虫が。そこでちょっとした実験を思いつきまして──」

 この話を伺った時点で、ぼくはすでに前野さんから、野生の初齢幼虫、それも群生相と孤独相の両方を見せてもらっていた。本当に体色だけで見るならまったく違うバッタかと思うほどの違いだった。その背景には、母親の体内で卵ができる時にすでに「卵の大きさ」として決定されている要因があるのだという。

「群生相のメス成虫が産んだ大きい卵を無理やり小さくしたらどうなるかと、実際にやってみたんです。卵に穴を開けて卵黄を吸い出して小さくしたら、群生相の黒ではなく、孤独相の緑色の幼虫が孵化してきました。これ、生物学的にもサバクトビバッタの研究の歴史の中でも結構面白い発見だと思ってます。でも、昆虫の卵に穴あけたりするのは、やっちゃいけないっていうか、もう卵を殺すために穴あけるようなものだと思われていて、若さゆえのチャレンジ精神というか、ノリでやってみたらうまくいった、と」

 そして、もうひとつ。これは、先の研究と、今のモーリタニアでの研究を直接つなげる内容でもある。

「孤独相で小さい卵を産むメスを実験で使った後で、1つのケージにまとめておいて、そのうち解剖しようと何となく飼育していたんです。そうしたら、そいつらが今度大きい卵を産み始めたんですよ。これまで1匹ずつでいたのに、急に混み合うことによって、すぐ卵のサイズを変えて、群生相の大きい卵を産み始める現象に気づいたんです」

 ひとつめの「卵黄を抜き取って卵の大きさを小さくする」実験が、若さゆえの「ノリ」だったとしたら、こちらは、多くの実験、観察を同時進行し、多忙だったがゆえに偶然知り得たある意味で「努力の賜物」だ。

「これ、とても驚くべきことで、他の昆虫では混み合いに反応して卵のサイズを即座に変化させることは知られていなかったんです。田中先生もびっくりして、緻密な実験を計画して調べました」

 サバクトビバッタのメス成虫は4日間隔で卵を産む。砂の中に尻尾を差し込むようにして、一度に50から100個ほどまとめて産卵する。その後、腹の中で4日間、卵を大きくさせてまた産むという周期を繰り返す。では、いつ混み合いを感じると、卵の大きさが変わるのか。そもそも「混み合い」と言っても、ぶつかりあい、匂い、視覚など様々な要素のどれが効いているのか、解明すべきことはたくさんある。

「バッタの体の表面をマニキュアでコーティングして他のバッタが直接ぶつからないようにしてみたり、目を黒く塗って視覚を遮ってみたり、いろいろやりました……その結果、ぶつかり合い、つまり他個体とぶつかるのが一番重要だと分かりました。それも触角でぶつかり合いを感じていました。さらに厳密に、感受期っていうんですけど、いつ、どれくらいの長さで混み合いを感じると卵を変化させるのかも特定出来ました。卵を産む、前後の2日間、つまり、計4日なんです。卵のサイズをS、M、Lサイズとすると、その4日間フルで混み合うとLサイズ、2日間だけだとMサイズ、一切混み合わないとSサイズっていうふうに」

・・・・・・・・明日に続く・・・・・・・・

…… 参考資料: バッタに人生を捧げます!!  ……

天災レベルに大発生する害虫を愛する男が行き着いた"ある場所"

実験室では目にすることがなかったバッタの行動

実際に私はサバクトビバッタの生息地のサハラ砂漠で彼らと一緒に寝泊まりし、温度も湿度もほぼ一定の実験室との環境の違いの大きさに唖然とした。

サハラ砂漠では、昼は灼熱で夜は肌寒く、一日のうち30度近くも変動する。日中、あまりに暑すぎるときはさすがのサバクトビバッタたちも日陰に潜んでおとなしくしている。そして、明け方が一番冷え込むのだが、太陽が昇るとバッタたちは隠れていた植物から一斉に出てきて地面でひなたぼっこを始める。

太陽に体の側面を向けて効率よく体を温めていた。こんな行動は実験室では見たことがなかった。そして、風のなんと強いことか。普段でも突風が吹くことがしばしばあるのだが、フィールドワーク中に数回砂嵐に襲われたことがある。空の向こうから黒い塊が近寄ってくるなぁと呑気に見ていたら、暴風に乗って砂粒が容赦なくぶつかってきたので慌てて車の中に避難した。

フィールドでないと本当の意味はわからない

サバクトビバッタはその間、植物の陰に身を潜め植物にしがみついていなければ吹っ飛ばされてしまうだろう。吹っ飛ばされるだけならまだいい。彼らは常に天敵に食われる恐れがあるのだ。昼間は鳥たちが、夜になると地表を徘徊する天敵たちがうごめきだしてバッタたちに襲いかかるため捕食者たちにも細心の注意を払わなければならない。

サバクトビバッタは故郷から遠く離れた日本の実験室でも本能のままに行動するが、その行動の真意を知るためにはやはり彼らの本来の生息地で自然状態のまま観察しなければ答えは得られないのではないだろうか。本来のサバクトビバッタの習性を知らずに殺虫剤の撒き方だけを向上させようとしてもいつまで経ってもサバクトビバッタの大発生は阻止できないのではないだろうか?

正直、自分は今までフィールドよりも実験室での研究こそが一番重要だと信じていたので、自分がフィールドで生物と向き合う重要性を忘れていたことを心から恥じた。

「防除不可」皆が行きつく答えはいつも同じだが…

以前、モーリタニアで開催されたアフリカ・サバクトビバッタ首脳会談で知り合ったアルジェリアのバッタ研究所の長のモハメッド博士に話を伺ったところ、「サバクトビバッタの研究はほとんどが実験室内で行われているが、実験室の成果を野外のバッタにそのまま当てはめることは不可能だ。実験室と野外とではバッタの顔は全然違うので、リアルなバッタを野外で調査する以外バッタ問題を解決することはできない。もちろんアフリカの野外でもバッタは研究されているが、皆が行きつく答えはいつも同じだ。『防除は不可能だ……』と。ただし、それでも私たちは研究しなければならない」とのこと。

彼の発言はバッタ研究の歴史を変えるためには新たな試みをする必要があることを訴えていた。

今日得られているサバクトビバッタの野外生態に関する知見のほとんどは1960年代に対バッタ研究所によって行われた研究に基づくものであり、それ以降際立った進展はしていない。

それは、フィールドでサバクトビバッタが何をしているのかきちんと研究されていないからだ。サバクトビバッタが一日をどのようにすごしているのか? いつエサを食べているのか? それ以外は何をしてすごしているのか? などときわめて単純な疑問にすら私は答えることができない。ただじっくりと彼らを観察すれば良いだけで何も難しい技術はいらないはずなのに。

・・・・・・・・明日に続く

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https://youtu.be/VtEA98wueC8  == Locusts | Return of the Plagues ==

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森のなかえ

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