〇◎ 未知の世界へ飛び込んでいく関野吉晴 ◎〇
= ほぼ日刊イトイ新聞_2013-03-22-FRI “【グレートジャニー人類の旅】展開催時の対談”より転載・補講 =
☠ “人類の旅”に魅せられた関野の探求心はどこから来たのか ☠
◇◆ 世界で一番でかい川 1/3 ◆◇
糸井重里; 関野さんはどうして「グレートジャーニー」をはじめようと思われたんですか?
関野吉晴; ぼく、もともと、20年間、南米に通っていたんです。
糸井重里; 「グレートジャーニー」の前に?
関野吉晴; そうなんです。22歳のときからずっと。それで、意外かもしれませんが、アマゾンやアンデスの人たちって、背格好、顔、しぐさ、性格など、ほんとに日本人とそっくりなんですね。
糸井重里; あ、そうなんですか
関野吉晴; はい。だからぼくは、ずっと彼らの姿を見ながら、「いつか、この人たちのルーツをたどる旅をしよう」と思っていたんです。‥‥知識としては知っていたんですが。
糸井重里; ユーラシア大陸から、ですか?
関野吉晴; ええ、大昔、ベーリング海峡が陸続きだったときに、そこを渡ってやってきたんです。ただ「知識として知っている」のと、「体験として理解する」のは違いますから、身体でわかりたくて。
糸井重里; それが「グレートジャーニー」につながっていく、と。
関野吉晴; まあ、そういうことを「やりたいな」と思いながらも、なかなか、やるに至らなかったんですが‥‥。 ただ、南米に20年くらい通っていると、ぼくは自分が、新鮮な目を持てなくなったことに気がつきはじめたんです。
糸井重里; あ、南米に対して。
関野吉晴; たとえばぼくは、いろんな人を南米のあちこちに案内していたのですが、連れていくたびに、みんな「すごい‥‥」と、感動してくれます。 でもその横でぼくは、「どうしてみんな、この程度のことに、感動してるんだろ?」なんて、考えるようになっていました。
糸井重里; 面白く思えなくなったんだ。
関野吉晴; さらに、何人もから「同じことばかり言うようになってるよ」と言われたりもして。
糸井重里; それは、「ちょっとマズいな」という感じですね。
関野吉晴; そんなとき、ある人から「韓国でも、インドネシアでも、いちど別の国や地域に行ったら、南米がもっと、クリアに見えるんじゃない?」と、そんなアドバイスを受けまして。
糸井重里; はい、はい。
関野吉晴; 「じゃあ、せっかくの機会だし、ずっと行きたいと思っていた旅をしたいな」と。
糸井重里; ああ、それで、「グレートジャーニー」に。‥‥それにしても、いっきに世界のあちこちを8年3ヶ月かけてめぐる旅に行く、というのもなかなか思い切りが良いですね。
=〝グレートジャニー“地球を歩いて気付いたこと / 講演会(2015-05-19-TUE)より=
弱いから、遠くまでたどり着けた(5/5)
弱いことで突き出された人が新しい文化を作ることがある、というのは、人類自体の歴史にも見ることができます。 たとえば、人間は実は非常に弱いものです。 この中でチンパンジーと戦って
勝つ自信がある人はいますか? 実はチンパンジーの握力は300キロ、白鵬の倍以上あります。
鋭い爪と牙で襲ってきたら、プロレスラーでも敵いません。 ゴリラだったら握力500キロです。 もう、誰だろうがほとんど関係なし。 素手なら人間はもうぜったいに敵いません。
そんな弱い人間がサバンナに出たらどうすればいいか?
人間は、2本足で立って歩くことと、コミュニティを作ること、武器を持つことなどで、生き延びたんです。 実際に4つ足になってみるとわかりますが、2本足になると、ずいぶん遠くまで見えるようになります。 また、コミュニティを作ることでも、天敵のライオンとかヒョウとかが襲いにくくなる。 あと、武器を使えるのも大事です。 そんなふうにして、弱いからこその工夫をして、人間はかろうじて生きてきたんです。
わたしたちは、ほんとうに奇跡的な存在です。 実はわたしたちの祖先である「ホモ・サピエンス」が生まれる前に、20の人類が生まれたのですが、「ホモ・サピエンス」以外はぜんぶ滅びました。 ネアンデルタール人も滅びました。 で、わたしたちだけが生き残ったんですね。
また、生命誕生から今までに生命は13回の絶滅危機を迎えています。 いちばん最後が、恐竜の絶滅時です。 そのときに生き延びたのは弱いはずの、ネズミのような存在でした。 それがたまたま住処が空いてた森の中に入り、サルが生まれました。 その中に類人猿が生まれ、人類が生まれました。 すべて弱さからきています。 弱さをもとに、わたしたちは奇跡的にいままで生きてきたんです。
・・・・・つづく・・・・・
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