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bomberjuice ♪今日の1曲♪

「気になる1曲」を勝手に厳選し、それをテーマに一言二言三言。

UN POCO LOCO / Bud Powell

2007-10-26 07:31:21 | Jazz
正直言って好き嫌いが分かれる曲だと思うが、
ハマれば何度も何度も聴きたくなるはずだ。
……そう、まるで麻薬のように。

その曲の名は、「UN POCO LOCO」。

カウベルの音色がまた気持ちいい。
時には破壊的にも聴こえてくる。
その中に、旋律の美しさが垣間見える。
どう贔屓目に見ても、「オシャレ」ではない。
だがしかし、決して「下品」というわけではない。

ジャズは一発録りが基本だ。
つまり、ミステイクも音楽の一部である。
音楽は生き物であり、瞬間的に生み出された芸術作品でもある。
レコードは、その瞬間が詰め込まれたものに過ぎない。
名盤というのは、録音されて半世紀以上経過していても、
決して色褪せないものなのだ。

今日もこうして、あの曲を聴いている。
その曲の名は、「UN POCO LOCO」。
これほどまでに「激しい」ジャズを、僕は知らない。

PARISIAN THOROUGHFARE / Bud Powell

2007-10-05 22:36:38 | Jazz
僕の好きな本の中に、村上春樹の「ノルウェイの森」がある。

「なるべく音の大きそうなジャズ喫茶に入って
オーネット・コールマンだのバド・パウエルだののレコードを聴きながら
熱くて濃くてまずいコーヒーを飲み、
買ったばかりの本を読んだ」(「ノルウェイの森」より抜粋)

僕は何度となくこの小説を読んでいるが、
そのときは意図的にジャズを流すようにしている。

僕はいわゆる「ピアノの小品」が好きだ。
長いピアノ・ソロは退屈で仕方がない。
その点、バド・パウエルは飽きない。
正直言うと、飽きるヒマがない。
圧倒されているうちに、曲が終わってしまうのだ。
とにかく凄い。
3分前後という短い時間で、
一気に自分を表現してしまう。

バド・パウエルというと、
何かに追いかけられているような、
切迫感に駆られる曲が多い。

しかし、この曲は違う。

メロディーは疾走するのだが、
どことなく悠々としていて、
リラックスできる。

鼻歌でも歌いながら弾いてるんじゃないか、と思うくらい
演奏の中に「余裕」を感じるのだ。

バド・パウエルを聴いて思ったことは、
「MONO録音は味わいがある」ということだ。
どうしても「STEREO録音は音がいい」と思いがちだ。
もちろんそれは否定しない。
だが、逆にMONO録音のほうが、
臨場感というか、その場の雰囲気を醸し出しているように思うのだが、
いかがだろう。

素晴らしい演奏は、録音技術をも超越するのだ。

FACES AND PLACES / Ornette Coleman

2007-09-23 14:10:15 | Jazz
初めて聴いたとき、正直なところ訳がわからなかった。
というのも、ドラムとベースはビートを刻んでいるだけ。
決して不協和音ではないのだが、
限りなくそれに近い感覚だ。
そしてあまりに自由奔放すぎる。
同じサックス・プレーヤーでも、
チャーリー・パーカーなどとはまた違った雰囲気だ。

ふつう、アドリブ(即興演奏)とは言えども約束事はある。
伴奏とソロの区別やコード進行、フレーズの長さなどといったルールが、
メンバー内で決まっているものだ。
ところが、そんな約束事を無視し、
自分の思ったままの演奏を繰り広げている。
フリー・ジャズに慣れるまでにかなり時間を費やした。
いや、未だに慣れていないかもしれない。

しかし先日、クルマの中で、
ベースラインを中心に聴いてみると、
たしかに自由奔放ではあるのだが、
そんなにルールを無視しているとは思えなかった。

聴けば聴くほど、味わい深い。

オーネット・コールマンはこう言っている。
「音楽はしゃべることに似ている」
「バンドは会話のようだ」
つまり、「あらかじめ決まりのない自然な音」という言葉で、
お互いに会話をする。
これが彼らのスタイルだ。

今までのジャズというスタイルを壊したオーネット・コールマン。
果たしてこれは彼の会話なのか、常識の破壊なのか、
あるいは飽くなき挑戦なのか。
「ジャズの背教者」と呼ばれる所以はそこにある。

LEFT ALONE / Mal Waldron

2007-09-12 23:23:11 | Jazz
ビリー・ホリデイ。
有名なジャズ・シンガーだ。
ジャズ歴の浅い僕でも、名前を聞いたことがあるくらいなのだから。
だが、この文章を書いている時点で、僕はビリー・ホリデイの声を知らない。

「レフト・アローン」。
曲名は知っていたが、聴いたことはなかった。
ビリー・ホリデイが歌っていたことはおろか、歌詞があることさえも知らなかった。
この曲は彼女が作詞をしたが、彼女による吹き込みは残されていないらしい。
もちろん、それはあとで知ったことである。

そんな僕が、初めて「レフト・アローン」を聴いた。
全身に震えが走った。
メロディーラインの素晴らしさもさることながら、この哀愁漂う音色はなんだろう。

ジャッキー・マクリーンのアルトサックスが、曲を噛みしめながら唄っている。

何回も何回もリピートして聴いた。
ビリー・ホリデイには申し訳ないが、彼女の声は不要だ。

誰もいない夜の河原に寝転がって、思い切り孤独を味わってみたい。