m-memo

渡辺美里さんfanブログ。

■ライナーノーツ『BREATH』 [A-003]

2014-10-25 16:35:25 | ライナーノーツ[アルバム編]
アルバム ライナーノーツ
■ BREATH 【1987年07月15日発売】 A-003

SideA
1.Boys Cried
(あの時からかもしれない)
2.Happy Together
3.It's Tough
4.Milk Hallでおあいしましょう
5.Breath

SideB
1.Richじゃなくても
2.Born To Skip
3.Here Comes The Sun
(ビートルズに会えなかった)
4.Pajama Time
5.風になれたら


■まず驚くのはそのジャケット。
表も裏も美里の超どアップの写真。アーティスト名もタイトルも無し。
主流はまだLPでしたからそのインパクトたるや(笑)。
インパクトだけでなく、当時の美里の知名度の高さやこのアルバムへの自信のほどが
ジャケットデザインを通して伺い知ることができます。

■アルバムを全面的にバックアップしているのは
美里の高校の先輩でもあるアレンジャー・清水信之とギタリスト・佐橋佳幸。
1stアルバム、2ndアルバムとはガラリと印象の変わった、
渡辺美里作品の中で唯一の・・・と言いきってしまっても良いかもしれないロックアルバム。
であると同時に、アルバム・タイトルそのままに
まさに美里の息遣いまで感じられるタイトルソング「Breath」、
美里流フォークソングといった趣きの「風になれたら」などの楽曲が
ただのロックアルバムに終わらせず、全体に深みを与えてくれています。
そんな中、「Milk Hallでおあいしましょう」のような"女の子っぽさ"がチラリと顔を覗かせるのが
"渡辺美里らしさ"のひとつ。
また、美里流ジャズ・ナンバー「Richじゃなくても」は、美里自身が手がけた楽曲の中でとびきりの名曲。
骨太ロックアルバムがこの1曲で華やかな印象に。
※歌詞に登場する「Swingしなきゃ意味がない」というフレーズは
デューク・エリントンの代表曲「It Don't Mean A Thing(If It Ain't Got That Swing)」から。

■作曲家陣の中に新しく伊秩弘将が加わったことも大きな変化。
岡村靖幸、小室哲哉、大江千里など名だたる作曲家たちの中では
どうしてもその後に続く二番手、三番手、のような位置づけになりがちですが、
彼が提供した「Boys Cried」「It's Tough」「Breath」は
間違いなくアルバム『BREATH』の中核を担っているし
美里の歌の世界をより広げてくれたように思います。



【渡辺美里インタビュー(『宝島』1987年8月号より抜粋)】
--今度のアルバムは"詞は全部渡辺美里"っていう方針が最初にあったのですか。

「えーと、そうはっきりしたものではなかったけれど」

--詞を自分で書きたいという気持ちはすごく・・・

「ええ、ありました。こういうことをうたいたい、ああいうこともうたいたいって、たくさん。
過去2作もそうしていたのだけれど、アルバムを作るときにまず
どういうものを作りたいのかってことを考えるんです。
今回は特ににそのへんを突き詰めましたね(笑)。
でね、まず思ったのは、私のブレス・・・吐息が聞こえるような、呼吸がわかるような、
そういうアルバムにしたいということだったんです。
歌で一番重要なのは、やっぱりシンガーの声なんだ、ということがすごく頭にあって・・・」

--これまでの2枚のアルバムはややそうした面が弱かったと感じていたのですか。

「いえ、そんなことはありません。こういうことなんです。
私の歌について今まで沢山の記事が音楽雑誌に掲載されてきました。
そしてその多くは、サウンドがどうこう、ヴォーカルがどうこう、という以前に
歌詞の一部を取り出して、そこから話を広げていくという書き方だったと思うんです。
それが良いとか悪いとかいうことではなくて。
でも私、人が鳥肌がたつくらい感じさせることができるのは、
やっぱり声、肉声だと思うんです。
だから、今回はその部分をはっきり打ち出そうと・・・。
私は歌うたいなんだし、もっと声そのもので伝えることができるはずだ、とずっと考えていて、
で、ツアーを終えたときにね、ああ、もっとできそうな感じだなって思ったんです」

--清水信之がアレンジした曲にとくにそういう感じを抱くんだけれど、
これまでとはサウンドがあきらに違いますね。
単なるサウンドの変化という以上のものを感じるんだけれど。
いつごろから彼を知っていたんですか。

「高校のときから。学園祭でエポと一緒に来てたの。
そのステージを観て、失礼な言い方ですけど、"こいつといつか一緒にやりたい"って思った(笑)。
すごくイヤな子でしょ、高校生のくせに(笑)。
でね、デビューしてから彼と会ったときに、本人に向って言ったんです。
"高校生のときから、いつか一緒に、絶対に仕事するんだって思ってた"って。
そうしたらすごく照れ臭そうにしていましたけれど」

--『Lovin' you』のときはミュージシャンとしての参加で、
アレンジは受け持っていなかったんだ。

「そうです、で、今回やっと念願かなって。
アルバムタイトル曲の「Breath」はヴォーカルとピアノを一緒に録ったんです。
そのタイトルそのままに、ふたりが同じところで同じように息をするみたいな感じで・・・。
そうやってレコーディングできたことがとっても嬉しかった。
曲ってこうやって形にしていくんだなって、あらためて思わせてくれたから・・・。
信之さんが弾くピアノって、鍵盤に当たるその指先が見えるような感じなんです。
そのタッチやペダルを踏む音、椅子のきしむ音がみんな入っていて、それがとってもいいの」

--詞と曲はどっちが先に出来ていることが多いんですか。

「いつも、まずタイトルと歌の内容、こういうことを歌いたい、ということを決めるんです。
それを作曲家に伝えて、曲を書いてもらいます。で、出来てきた曲に私が詞をつけます。
でも今回は「風になれたら」だけ、詞が先でしたけれど。
書き上げた詞を持ってスタジオに入り、私がピアノを弾いて、
横で佐橋くんがギターを弾いて、一緒に作ったんです。
こういうこと、はじめてだったから、曲が出来たとき
本当にこうやって出来るものなんだなあって、自分で感心してしまった(笑)」

--でも歌のテーマがはっきりと決まっている場合、
メロディーに言葉をあてはめていくというのはとても難しいのではないですか。

「もちろんそうです。
だから、小室哲哉の曲は詞が書きづらくってしょうがない(笑)、なんて。
本人もそれは認めるでしょうけれど(笑)」

--メロディーが持っているイメージというのがありますよね。
それを詞に反映させることはありますか。

「私のうたいたいテーマがまずあって、それと曲のイメージが合っているものを合わせ、
形にしていくというやり方がほとんどです。
でもね、メロディーと詞って、あまりピタッと合っていると、かえってつまらないんですよね。
スウィートなメロディーにスウィートな詞をつけても、つまらないと私は思う」

「等身大のアルバムを作るっていうことは、つねに頭にあるんです。
階段をひとつずつ昇っていくようにやっていきたいと思います。
ツアーもあるし、それにまたすぐにでも次のアルバムづくりに取りかかりたくなっている(笑)。
さっきもそう言ったら、"このスタジオ好きめ"って言われました(笑)。
でも、レコードを作るときのしんどさっていうのは、1枚も2枚組も一緒ですね。
スタジオの延べ時間は別としてね、精神的、肉体的なしんどさは全然変わらない」



最新の画像もっと見る

コメントを投稿