国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

第093回国会 衆議院運輸委員会 第7号 第十八話

2015-10-11 23:27:44 | 国鉄関連_国会審議
みなさまこんばんは、今日もしばしお付き合いくださいませ。
今回も、国会審議の内容を自分なりに解説を加えながらお話をさせていただいております。
まずは小野議員からの質問が出ておりますそれに対して塩川国務大臣が答えるというところから答弁が始まっています。

> 都会地におきましては他の機関に比べて非常に高いところも出てきておる。特に私鉄との競争におきましては非常に不利になってきておりますが、一方、地方に参りますと、国鉄は他の交通機関に比べまして比較的運賃が安い、こういう現象が

と言うところですが、実際に国鉄の運針は昭和30年半ばから徐々に私鉄の方が安くて国鉄が高いと言う時代が始まり、小田急と国鉄では小田急が国鉄の半額以下と言う状況が昭和50年代には起こっていました。
これは、国鉄が全国一律運賃とすることで国民にあまねく公平に輸送機会を提供すると言う意味ではよかったのですが都市部における競争力の低下を招くこととなりました。
また、この後地域別運賃(ローカル線による割増運賃が適用されることとなりました。
和歌山線で格差運賃に関する訴訟が行われたときに提起されたのが「交通権 憲法上は明記されていませんが、居住・移転及び職業選択の自由を基礎とし、生存権、幸福追求権などが関連する新しい人権としての概念と考えられており、さらに今後は大きな問題となっていくものと思われます。→交通権学会
そして、それに対して政府側答弁としては、

> 国鉄の利用者全般につきまして、できるだけこれを公平に負担していただくという考え方をとるといたしますならば、一つは、特別運賃制という、地域による運賃の格差をやはり認めていただかざるを得ないと思うておるのであります。

と言うように、ある程度の国民負担はやむを得ないという立場を堅持しているようです。
そこで、地方における運賃負担に対して、ローカル線の赤字は高々八百億円程度で、全体の赤字のわずかに一〇%にすぎない。
ということで、ローカル線を維持できるのではないかという議論を展開していますが、実際には収支係数で判断すると、400とか1000と言うことになってくると(100円の収入に対して400円、1000円の経費が掛かるという考え方。)正直かなり厳しいのかなと言う意見もあるのですが、実際には燃費効率の悪い古いエンジンを使っていたり、1両の単行で運転できるところに2両なり3両で走らせることで経費の増大を招いたりという営業努力が国鉄が積極的に行った様子は見られません。
最も、分割民営化が決定した昭和61年にはそうしたことに配慮した車両が投入されていますので、国鉄ももう少し早い時期にそうした車両を投入していたらもう少しこの辺の流れも変わっていたかもしれません。

そして、小野委員は、赤字の中の一割程度のローカル線はむしろこれを国鉄全体の財政の中で存続するという方が正しいのじゃないのか。
ということで、維持できるのではないかと言っています。
確かにグロスで見れば可能な数値であり、この辺は正直多少のサービス低下(ワンマン運転や車両の小型化)等は伴いますが経費の削減を図れたならばもう少し事情は変わってきたかもしれません。
最も、この議論が開始された昭和55年頃はマル生の後遺症で職場自体が荒廃の極みでしたからそうした発想は殆どなかったと思われます。
> ローカル線、特に二千人未満のローカル線は他の輸送機関にかわることが非常に無理である。こういう二つの条件を考えますと、赤字の中の一割程度のローカル線はむしろこれを国鉄全体の財政の中で存続するという方が正しいのじゃないのか。赤字再建をする場合の方法としても、何か国民が納得でき、それに協力するという気持ちにならない再建方法ではないのか、私はこういう感じがいたします。

さらに、高木総裁の答弁があるのですが、これも当時の国鉄の一般的な見解でありこれ以上の答えを当時の国鉄から引き出すのは難しかったであろうと思われます。
高木総裁は、大蔵省(現・財務省)出身で財政再建の管財人的立場で国鉄の総裁になっていたのとマル生の後を受けての総裁であったため合理化とか人事に関することはあまり積極的ではなかったという印象があります。
逆に、大蔵省出身らしくこうした数字を用いての説明にはより力が入っていたようにも感じられます。

> 収入を一〇〇といたしまして経費が一三一という数字を五十四年度の決算上は示しております。したがいまして、幹線につきましては経費を二割程度圧縮する努力をすることによって、一万二千キロの方は総体としては収支が償う、単年度では償っていくという形になろうかと思っております。

最後に、山花委員が質問した、指摘は残念がら今も実現していないわけで、総合的な交通ビジョンは、単なるバラマキではなく総合的に考えてしかるべき喫緊の課題と思われます。

>  交通政策は、現在起きている交通上の諸問題を解決すると同時に、進んで将来に向かって国民の福祉と経済の向上を図るものでなければならない。そのためには、国民の合理的な交通需要を十分に、しかも効果的に充足させるものとして、各種の交通施設がそれぞれの特性を生かした整合性のある体系として整備される必要がある。

************************以下は、本文になります。**************************

○塩川国務大臣 御承知のように、国鉄の運賃は全国一律を適用しております。でございますから、都会地におきましては他の機関に比べて非常に高いところも出てきておる。特に私鉄との競争におきましては非常に不利になってきておりますが、一方、地方に参りますと、国鉄は他の交通機関に比べまして比較的運賃が安い、こういう現象が出てきております。
 そこで、国鉄の利用者全般につきまして、できるだけこれを公平に負担していただくという考え方をとるといたしますならば、一つは、特別運賃制という、地域による運賃の格差をやはり認めていただかざるを得ないと思うておるのであります。
 ところで、運賃のあり方でございますけれども、特別運賃を、だからといって非常に高額な、全く原価を償い得る程度に高額なものにいたすということは現在の段階では考えておらないのでございます。しかし、一般の全国平均あるいは特に都会地と比べましても、少しの負担はやはりしていただかなければならぬ、そういう感じで特別運賃を設定していきたいと考えております。

○小野委員 いま地方においては他の輸送機関よりも国鉄運賃の方が安い、こう答弁されましたけれども、国民の方は、地方沿線に住んでおる人間にとっては、安いから国鉄を利用するのであって、もしバス輸送その他の料金と同じ金額であれば、国鉄に乗らないということになってしまいます。したがって、もしこれらの改定が、特別運賃の導入が行われますと、逆にむしろ国鉄離れを起こすのじゃないか、こういう心配がありますし、収入悪化を来す要因になるのじゃないか、こう考えておることをまず強く申し上げておきます。
 普通に赤字を解消して経営を再建するという場合に、最も赤字の発生源にメスを入れる、これが再建の常識だろうと思うのです。ところが、先ほど答弁を聞いておりますと、最も赤字の金額の大きいのは幹線であり、二千人未満の今度廃止しようとする路線の赤字は八百億円程度だ、全体の赤字のわずかに一〇%にすぎない。
 そうしますと、幹線は大きな赤字を持っておって、国鉄が少々合理化をしても、乗客が転換する他の輸送機関がたくさんある。ローカル線、特に二千人未満のローカル線は他の輸送機関にかわることが非常に無理である。こういう二つの条件を考えますと、赤字の中の一割程度のローカル線はむしろこれを国鉄全体の財政の中で存続するという方が正しいのじゃないのか。赤字再建をする場合の方法としても、何か国民が納得でき、それに協力するという気持ちにならない再建方法ではないのか、私はこういう感じがいたします。
 高木総裁の御所見を伺って、質問を終わります。

○高木説明員 現在、幹線と地方交通線に分けてみますと、幹線と申しますのは約一万二千キロでございます。それから、私どもが地方交通線と呼ばしていただいておりますのは九千キロでございます。幹線の方の収入と経費の関係は、収入を一〇〇といたしまして経費が一三一という数字を五十四年度の決算上は示しております。したがいまして、幹線につきましては経費を二割程度圧縮する努力をすることによって、一万二千キロの方は総体としては収支が償う、単年度では償っていくという形になろうかと思っております。その場合に、九千キロの方は、収入と経費の関係が収入、一〇〇対経費四三二という関係になっておりますので これはもういかに経費を節しましてもやりょうがないというわけでございまして、そういう意味において、やはり赤字の絶対額の大きい幹線について最大限の努力をいたすことはもちろんでございますけれども、さりとて、地方交通線についてはもうすでに人減らしはほぼ終わっておりますものですから、運賃水準の見直しというようなことも含めていただかざるを得ないのではないかというのが私どもの考え方でございます。

○小此木委員長 山花貞夫君。

○山花委員 交通政策は、現在起きている交通上の諸問題を解決すると同時に、進んで将来に向かって国民の福祉と経済の向上を図るものでなければならない。そのためには、国民の合理的な交通需要を十分に、しかも効果的に充足させるものとして、各種の交通施設がそれぞれの特性を生かした整合性のある体系として整備される必要がある。これがわれわれの従来から一貫して主張してまいりました総合交通体系の確立の要求であります。
 今回のいわゆる再建法案についてみますと、その意味におきましては、個別政策それ自体にも多くの問題点があるのではないか。これはこれまで同僚委員が追及をしたとおりであります。
 同時に私は、きょう、あと残された時間十数分ということでありますので、交通政策と不可分の関係にある国土利用、建設行政の観点についてお伺いをいたします。
 時間の関係がありますので若干質問の中身を切り詰めなければならないと思うのですけれども、まず、直接大臣にお答えいただく前に、建設省及び国土庁の関係でお話をお伺いした後、質問をさしていただきたいと思います。
 まず、建設省にお伺いいたしたいと思います。六十年までに廃線、廃止を予想される、こうした路線に沿っての特に代替輸送のための道路整備の観点でありますけれども、これは一体どうなると予想されているのだろうか。建設省の道路行政においてどのような準備がこれまでなされてきているのだろうかということについてお伺いをいたしたいと思います。
 同時に、国土庁の関係につきましても同じ観点で、国土庁の本年度の地方振興対策の中核として、たとえば定住圏構想その他三全総に基づいた計画が打ち出されているわけですが、これも再建法で廃線、線路がなくなるということになりますと、そのことについての検討が当然必要ではなかろうかと思うわけでありますけれども、建設、国土両省庁からまずこの点についてお話を伺いたいと思います。

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