国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

第093回国会 衆議院運輸委員会 第7号 第二六話

2015-12-16 23:12:27 | 国鉄関連_国会審議
塩田晋氏は、1979年、民社党公認で出馬した政治家で、労働問題をはじめ、残留孤児問題や北朝鮮による日本人拉致問題、また憲法調査会の設立や、国旗国歌法、昭和の日推進など党派を拘らず取り組んだ政治だったそうです。

さて、今回の質問では国鉄運賃による増収額の概算、実績、そしてまた期待額、と言った視点から質問していますが、質問の内容を見ていますと中々鋭い切り口だなぁと感心してしまいます。

国鉄の運賃は、昭和51年(1976年)の初乗りが倍となった運賃値上げ以降国鉄離れが顕著となり、【30円→60円】そのあたりでの推移を聞いているのですが国鉄の運賃が消費者物価に与える影響、社会的影響について聞いているのですが、これによると
「昭和五十三年の旅客運賃の改定二八・四%の消費者物価に与えます影響は〇・二%でございます。五十四年五月の八・八%の改定の消費者物価に与えます影響は〇・一%でございます。それから本年、五十五年四月の四・五%の改定の消費者物価に与えます影響は〇・〇六%でございます。」
ということで、直接の関連性は難しいのではないかという視点から下記のように答弁しています。

> 運賃改定によりますコストアップが価格にどのように転嫁されているかという点につきましては、物資なりサービスの需給事情あるいは各企業の合理化の程度、そういったことによって決まる面が強いかと思われます。もとより国鉄運賃の改定が他の物価に波及するということは全くないわけではございませんけれども、その影響を把握することはかなりむずかしいのではないかというふうに思っております。

ということで、国鉄の運賃値上げが必ずしも消費者物価に転嫁されず、民間事業者等の合理化などの努力で消費者物価の上昇は最小限に抑えられているという答えを導き出した後で国鉄ではどのような合理化施策を行うのかという視点から下記のように質問しています。

「運賃の安定、値上げを極力抑えるというためには、基本的には生産性の向上が必要であるということにつきまして運輸大臣はいかがお考えでございますか。」

これについて、国鉄総裁からの発言は下記のように、非常に歯切れが悪いというか、組合に頭を押さえられているのではないかと取れるような答弁しか返っていないのが印象的です。

> また過去ほどには人件費の上昇率は年率では高くはありませんけれども、現在でもやはり毎年賃金が上がっていくという現状でございますので、どうしても経費がふえてまいるわけでございます。

ということで、人件費が増えていることを認めつつ、さらに現状では赤字があるので国鉄としては国に何とか面倒を見て欲しい、さらには35万人体制ということで2割ほど職員を減らすし生産性の向上にも努めるけど、ちょっと難しいねぇと言っていることに、当時の国鉄の苦悩というか、マル生後の後遺症で国鉄が機能していないそんな風に見て取れます。


○関谷委員長代理 次に、塩田晋君。
    〔関谷委員長代理退席、楢橋委員長代理着席〕

○塩田委員 大臣並びに国鉄総裁、関係者の方に、主として物価対策との関連におきまして、国鉄再建法案の関連事項につきまして御質問を申し上げます。
 運賃というものは国民生活に直接影響のあるものでございますし、また、他の物価に大きな波及効果、影響を与えるものでございまして、国民経済構造の基本的な要素であると考えられるわけでございます。
 まず、国鉄運賃の値上げ、改定、これの過去の値上げ幅、ここ数年程度のものでよろしゅうございますが、これによる増収額の概算、実績、そしてまた期待額、こういったものの推移についてお尋ねいたします。

○吉武説明員 五十三年以降三年間の数字で申し上げます。
 改定率は五十三年が旅客の場合に一六・四%改定いたしまして、増収額は二千四十四億であります。それから、五十四年は八・八%改定いたしまして千三百九十九億、五十五年は四・五%改定いたしまして七百四十六億となっております。これは必ず四月一日ということで改定が行われておりませんので、年度途中も入っておりますから、これを全部合計いたしまして直接増収額ということにはなりませんで、大体これが四千億強ということになるかと思います。
 それから、貨物の場合は、五十三年が五%で百四億、五十四年が九%で二百十二億、五十五年が八・九%で二百五十九億ということで、これだけ足しますと五百七十五億になりますが、先ほど申し上げましたような理由で三年分を全部概算いたしますと約五千億程度じゃないかというふうに考えております。

○塩田委員 答弁漏れがございますね。増収の期待額幾らかということ。いまのは実績ですね。

○吉武説明員 これは実績といいますより、この改定を行った場合にこれぐらいの増収額があるだろうというものでございます。

○塩田委員 これは期待額ですか。

○吉武説明員 そのときの期待といいますか、そういったような額でございます。

○塩田委員 実績を聞いているのです。運賃を上げることによって期待されるという額と、そして実績がどれぐらい乖離しているかということを聞いているわけです。

○吉武説明員 ここに年度別に実績というものを持っておりませんが、大体これよりも三%ぐらい下回ったところかと思います。

○塩田委員 運賃の値上げをするということは収支を合わせるためという動機からであったと思うのですけれども、運賃を上げることによって国民が国鉄を利用しなくなる、高くなればモータリゼーションで他の交通機関を利用するということで国鉄離れが起こるということによって、期待されるほど実績においては収入が上がらないということであると思います。三%あるいはそれ以上になると私は思うのですけれども、そういった乖離が起こる。値上げは必ずしも増収にそのままならないということだと思います。
 そこで、経済企画庁にお尋ねします。
 消費者物価に対しまして、この国鉄運賃の値上がりはどのような影響をもたらしたかということと、それから、これは間接的な波及効果、これも推計したものを出してもらいたいのですが、直接と間接、分けて説明してください。

○長瀬説明員 御説明申し上げます。
 昭和五十三年の旅客運賃の改定二八・四%の消費者物価に与えます影響は〇・二%でございます。五十四年五月の八・八%の改定の消費者物価に与えます影響は〇・一%でございます。それから本年、五十五年四月の四・五%の改定の消費者物価に与えます影響は〇・〇六%でございます。
 それから、国鉄運賃の値上げによります他物価へのいわば間接的な影響はどうかというお尋ねでございましたけれども、運賃改定によりますコストアップが価格にどのように転嫁されているかという点につきましては、物資なりサービスの需給事情あるいは各企業の合理化の程度、そういったことによって決まる面が強いかと思われます。もとより国鉄運賃の改定が他の物価に波及するということは全くないわけではございませんけれども、その影響を把握することはかなりむずかしいのではないかというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、運賃改定によりまして便乗値上げと言われるようなことが生ずることがないように十分な監視をしていくということは必要なことではなかろうかというふうに考えております。

○塩田委員 物価安定の基本方策は何かということにつきまして物価対策委員会でも関係の大臣にお伺いしてまいりましたが、その中で明らかになりましたことは、やはり自由競争経済を基盤にいたしまして安定的な物の面の供給、物資、サービスの供給の確保、これが必要であり、そして、いま言われました便乗値上げの監視、監督、指導、こういった方策、もちろん公取委の関係を公正に行うということがございますけれども、基本的には生産性の向上、これがわが国の物価安定に最も寄与する基本的な要因であるということは各委員会でも発言がなされておるところでございますし、また先般九月五日、経済閣僚会議で決定されました総合経済対策におきましてもこのことが特にうたわれておるわけでございます。
    〔楢橋委員長代理退席、関谷委員長代理着席〕

また、十月十六日の物価対策特別委員会でも経済企画庁長官がこのことについて、生産性の向上、これを民間のみならず各界に要請をするということを言明しておられるわけでございますし、また当日国鉄当局からも責任者の方が見えましてそのことをはっきりと確認をしておられるわけでございます。
 そこで、輸送というサービスの価格としての運賃でございます。その輸送サービスの価格としての運賃の安定、値上げを極力抑えるというためには、基本的には生産性の向上が必要であるということにつきまして運輸大臣はいかがお考えでございますか。

○塩川国務大臣 私も大体御意見のように思っております。

○塩田委員 国鉄総裁、いかがでございますか。

○高木説明員 最近のように油の値上がりというようなことがありまして、また過去ほどには人件費の上昇率は年率では高くはありませんけれども、現在でもやはり毎年賃金が上がっていくという現状でございますので、どうしても経費がふえてまいるわけでございます。
 そこで、これをそういう状態のもとでなるべく運賃を下げるといいますか低目に抑えるといいますか、そういう趣旨からいいましても、またその前に私どもの場合には特殊事情として大変大きな赤字を持っておりますので、この赤字を縮小するということに取り組むことが何よりも大事なことでございまして、減量経営といいますか生産性の向上といいますか、これは私どもにとって非常に重要なことだと考えております。今回の再建計画におきましても、昭和六十年代までに減量経営なり生産能率の向上に努めるという趣旨でいわゆる三十五万人体制ということを言っておるわけでございまして、いまと同じ程度の輸送を確保するためにいまよりも約二割少ない人でやっていきたいというふうに考えておるわけでございまして、私どもにとりまして生産性向上というのはきわめて重要な大事なことだと考えております。

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