昨年の2019年3月、ブルーノート東京で開催された、CMA提供の
「イントロデューシング・ナッシュビル」に参加していたブラン
ディ・クラークが、ワーナー・ブラザーズでのセカンド・アルバム
を今年リリースしました。゛彼女の来日を本当に心待ちにしていま
した!゛という人は多くはなかったと思いますが、2010年代に入っ
て、カントリー界の大物に数多くの曲を提供し、自身もメジャー・
レーベルのレコーディング・アーティストですから、貴重な出来事
だったと思います。熊本のチャーリー永谷さんのお陰で、意外に有
名な人も多い、来日カントリー・アーティストに仲間入りした人と
しても応援したいと思います。シンガーとしても本当に力のある人
です。
プロフィールですが、ワシントン州はMortonの生まれ。ギターを始
めたのは9才からで、作曲も手を付けましたがまだお遊び程度でし
た。それより、学生時代は運動の方に力が入っていて、中央ワシン
トン大学ではバスケットボールで奨学金をもらうほど認められてい
ました。しかし、なぜかスポーツの道から足を洗い、実家に帰って
地元の短期大学に通うように。この時から音楽と真剣に向き合うよ
うになり、98年くらいから地元のバンドで歌い始めます。その後、
ナッシュビルに向かい、有名なベルモント大学で音楽ビジネスコー
スを履修する傍ら、作曲活動をしました。そして卒業後、彼女の作
品が徐々に頭角を現してきます。ブランディの曲を収録した、超
有名どころのアルバムを列記しましょう。
ケイシー・マスグレイヴス:「 Same Trailer Different Park」 「Pageant Material」
ミランダ・ランバート:「Four the Record」「Platinum」
キース・アーバン:「Fuse」
ダリアス・ラッカー:「True Believers」
リーバ・マッキンタイア:「All the Women I Am」「Love Somebody」「Stronger than the Truth」
ジョージ・ストレイト:「Cold Beer Conversation」
アシュリー・マクブライド:「Never Will」
ブランディの、アーティストとしてのデビューは2013年の「12
Stories」。決してラジオ・エアプレイやチャート・アクションが
良かったわけではありませんが、その内容は玄人筋から賞賛を受
ける質の高さで、ほどなくメジャーのワーナー・ブラザーズとの
契約が実現。2016年には「Big Day in a Small Town」が続き、そ
して2020年に本アルバムと、コンスタントにリリースを重ねてき
ています。
前作「Big Day in a Small Town」は、"Girl Next Door"もそうですが、
いかにもメジャーっぽくパワフルで華やかなナンバーが多く、そこ
にカントリー・バラードが添えられる、という感じでした。ブラン
ディの歌声もエモーショナルな力強さが際立っていましたし。対し
て本作は、メンフィス・ストリングス&ホーンズを全面的にフィー
チャーし、温かく豊かなサウンドが心地よい、文字通りシンガーソ
ングライター系ポップといった感じです。最近なかなかお耳に掛か
れない雰囲気で和んでいます。アコギが美しい"Who You Thought
I Was"や、バラード"Apologies”あたりの70年代風な懐かしい感じが
良いです。今風の区分けでは、アメリカーナになりますかね。
少年の頃、よく名前を聞いた、ランディ・ニューマンが"Bigger Boat"
で渋い声を聴かせてくれます。軽やかなボードビル調ですね。ラン
ディ御大、近年は「トイ・ストーリー」「モンスターズインク」等
のサントラで活躍されていました。この曲のレトロ感は特に際立っ
ていますが、アルバム・ジャケットでジューク・ボックスをフィー
チャーしている事からも窺い知れるように、古き良き柔らかい肌触り
のサウンドでまとめ上げることが、アルバムを通じてのコンセプト
でしょう。それは、現在のメインストリーム・カントリーに一番足
りないものを目指したように思います。
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