●2018年リリースの「Interstate Gospel」のレビューはコチラで
ミランダ・ランバートがソングライター友達のAngaleena PresleyとAshley Monroe~アシュリー・モンローはソロ・アーティストとして2008年に熊本のカントリー・サンシャインで来日経験あり~と組んだトリオによる、この時代にあっては奇特といって良いほど、実にトラディショナルでしかも素晴らしい、2011年のアルバムです。長くカントリーを愛してきたファンの方々は、1987年にドリー・パートンが、エミルー・ハリス、リンダ・ロンシュタットと組んでリリースした超名盤、その名もズバリ「Trio」を思い出す事でしょう。
今のメインストリーム・シーンで活躍するアーティストであるミランダ、そしてライターのアンジェリーナとアシュリー。元々ミランダやアシュリーがトラディショナル志向である事は知られていたとはいえ、ココまで徹底的にカントリーの伝統とガップリ四つ組んだ音楽を世に出した事をまず高く賞賛したいと思います。バックのラインアップは至極ミニマム~ドラム、ギター、ベース、ペダル・スティール、そしてキーボードのみ。フィドルはなしで、ロカビリー寄りのアーシーなサウンド・デザインですね。そこにモダンな調味料を施して、現代に説得力を持った音楽にしています。プロデュースはミランダのプロデューサFrank Liddellが担当(時々「Four The Record」と似た音作りも聴かれニンマリ)。
オープニングから、霞がかったブルージーなアウトロー・カントリー"Hell on Heels"を持ってくるあたり、この3人やはり只者ではありません。そして、そこで聴かれるクロース・ハーモニーに文句をつける人はいないでしょう。強力なミランダを中心に、少しハスキーでスモーキーと言いたいアンジェリーナ、そして可憐で美しいアシュリーの3人の声のミックスが心を掴みます。かつてのロレッタ・リンがやってそうなシャッフル、"Bad Example"や"The Hunter's Wife"での強力なリズムセクションは、これぞカントリー!の魅力たっぷりです。そんなクラシックな雰囲気の中で、アシュリーの澄み渡る歌声が堪能できる"Beige"や、家事に疲れた主婦の憂鬱をアンジェリーナが歌った"Housewife's Prayer"では、旬のソングライターならではのフォーキーでアーティスティックなスタイルが楽しめます。ここらがアルバムに説得力を持たせてる処と思います。一方ミランダは、釣りとロマンチックな女性を愛する男性を歌った"Boys From the South"でスケールの大きい歌唱を聞かせます。チョッピリローリング・ストーンズの"Toan & Frayed"を思い出しました。
クラシックなミュージカル映画「アニーよ銃をとれ」から取られたユニット名。ジャケットに映る、憂いを帯びつつもふてぶてしく眼つきの鋭い(お世辞にも趣味が良いとは言えない・・・特にアシュリー・・・)3人の姿。アメリカ南部でたくましく生きる女達。シンプルこの上ない音楽と作品が、このIT時代におけるどんな最新の音楽よりも”挑戦的”に聴こえるのが何とも面白いです。2011年のベスト・カントリー・アルバムの資格を十分に持つ作品です。
3人は、今後も長きにわたってPistol Anniesとしてレコーディングを続けている事で合意しているそう。ミランダはこう言っています。”この3人でツアーをしたいわ。私達は歌えなくなるまで一緒に音楽を作っていきたいと望んでいるのよ”
今年も色々情報発信お願いします。