あたかもヒッピーのようなセミロング・ヘアの風貌を持ちながら
そのサウンドは結構硬派なストレート・カントリーを持ち味とし
てきたクリス・ジャンソンの、ワーナー・ブラザーズでの3枚目で
す。2枚目の「Everybody」あたり、流行りのR&Bだのダンス調
などみじんも感じられず、個人的には安心して聴けるアルバムで
した。ボーカルはアーシ―な肌触りのテナー・ボイスで、こちら
もカントリー王道の歌声。その伝統によりそう姿が評価され、20
18年に早くもグランド・オール・オープリーのレギュラー・メン
バーに選ばれています。
まずプロフィール。生まれ育ったのはミズーリ州ですが、高校を
卒業して早々に、音楽で生きていくためナッシュビルへ移動しま
す。ギタリストであるとともに有能なハーモニカ・プレーヤーで
もある彼は、2009年のホリー・ウィリアムスの「Here With Me」
でソングライティングに参加、2曲でデュエットしました。2012
年にはティム・マグロウに提供した"Truck Yeah"で初ヒット。ガ
ンズ・アンド・ローゼズの元メンバーであるダフ・マッケイガン、
イジー・ストラドリンとの共作という有名どころとのコラボも経
験しています。
その後、ティム・マグロウのBigger Picture Musicと契約した事
でキャリアが展開し始めます。このレーベルでの最初のシングル
"Better I Don't"をプロデュースしたのが、アラン・ジャクソンの
プロデューサーとして知られるレジェンド、Keith Stegallという
幸運もありました。同じ2013年、自身の名を冠したEPもビルボー
ドのカントリー・アルバムにランクインするのです。2014年には、
2枚目のEP「Take It to the Bank」を続けてリリースしました。
そして2015年、キャリアを決定付けたシングル"Buy Me a Boat"
をリリースする事になります。これが全米で放送されるラジオ番組
「The Bobby Bones Show」(2019年のCMAブロードキャスト・
アワードでも全国区で受賞する程の有名番組)でエアプレイされると
瞬く間にシングルのトップ10ヒットとなり、メジャー、ワーナー・
ブラザーズとの契約を獲得したのです。"Buy Me a Boat"は最終的
にビルボード・カントリー・ソングで2位まで上り詰め、同名のデ
ビュー・アルバムも4位の成績を残しました。2017年に入り、セカ
ンド・アルバムからのリード・シングル"Fix a Drink"をリリースし、
ビルボードのカントリー・エアプレイで2位。アルバム「Everybody」
はカントリー・アルバム7位が最高で、同様にトップ10ヒットとなっ
た"Drunk Girl"も収録しています。
この3枚目、その人気をより飛躍させるべく、絶妙にサウンドに変化
を持たせてきました。オープニングのリード・シングル”Good Vibes”
からしてとても明るく爽快なイメージで、記事投稿時点でビルボード
エアプレイ・チャートで2位まで来るほどのヒットになっています。
ただ、神髄にはストレート・カントリーが有ると感じます。続く
シングル”Done”は、幾分リズムがグルーヴィになりクリスのボーカ
ルもソウルフルに力がみなぎってます。
ハイライトになるのが、”Say About Me”で、アリーナに持って来い
の疾走するアメリカン・ロックです。歌詞の”ローリング・ストーン
紙は僕を最も心がオープンなレッドネックと読んだよ”に彼の姿勢が
垣間見えます。掛け声風のコーラスもライブで盛り上がるでしょうね。
バラードは”Hawaii On Me”でメロウな歌声を聴かせてくれますが、ト
ーマス・レットのような予定調和の極みではなく、声に土埃の風味が漂
うところが個性でお気に入りです。子供(実のお子さん?)のコーラス
が温かい雰囲気を醸します。
ということで、全体としてちょっと売れ線に振った感があるアルバムで
すが、”Check”のような従来の彼らしさを引きずるソリッドな曲もありま
すし、何より、タイトル曲”Real Friends”で現代カントリーの王様とい
えるブレイク・シェルトンが客演しているところに、あくまでカントリ
ーの基本は守るのだというスタンスを感じます。このアルバムで、狙い通
り人気がグレードアップしていく事を期待したいです。
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