ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Rhonda Vincent ロンダ・ヴィンセント - Taken

2011-01-09 | Bluegrass ブルーグラス レビューまとめ
 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。よりマイペースになるかもしれませんが・・・・ では、早速。


 現代ブルーグラス・フィールドの女王と言っていい、ロンダ・ヴィンセントのニューアルバムです。信頼できるルーツ・ミュージック・レーベルであるRounderで、およそ10年間にわたり充実した作品をリリースし続けていましたが、本作は奮起、自身のレーベルUpper Management Musicを立ち上げてのリリース第一弾となりました。しかし、音楽的な面ではこれまでの彼女らしさをキープ。前作「Destination Life」同様に、ツアー・バンドであるThe Rageのバックでレコーディングしバンド感を大切にしたプロダクションになっているよう。しかも、バンジョーやマンドリンなど生音アンサンブルの爽快さや、楽曲の気持ち好さでは前作を上回っているようで、彼女の透明感のある素晴らしい歌声(めちゃ上手い!)が引き立つナイスなアルバムになっていますよ。また、ゲストの話題にも事欠きません。



 まず注目は、タイトル曲のカントリー・バラード"Taken″。結構モダンな曲想なのですが、ブルーグラス的生音による美しい演奏とロンダのロンサムボイスのおかげでトラディショナルな魅力を感じます。そしてロンダをサポートするリチャード・マークスRichard Marxの優しみ溢れるコーラス。そう、80年代MTV創生期のポップに入れ込んだ方はご記憶されているはず。″Don't Mean Nothing″の大ヒットをモノにしたリチャードがデュエットで参加しているのです。現在はナッシュビルをベースにソングライター/プロデューサーとして活動していて、ロンダとも最初は”電話友達”だったそう。共演の話もあったものの中々実現せず、そうこうしているうちにロンダがアメリカのTV局PBSの番組でリチャードの歌を初めて聴き、改めてその歌声に感激。既に録音していた"Taken"をメールでリチャードに送付して共演が実現したそう。「技術って素敵だわ・・・」とロンダは語っています。

 楽曲的には、Randy Rodgersのペンによる2曲がカントリー~ブルーグラスの名曲のような雰囲気を湛えていてイイ。共にゲストが共演しています。“In The Garden By The Fountain”では、長くロンダと近しい仲であるドリー・パートンがコーラスで共演。御大の控えめなハイトーン・コーラスがロンダの声と絶妙に混ざり合い、The Rageのサウンドで夢心地になります。さすが御大、やるべき事をわきまえてらっしゃる。もう1曲の“When the Bloom Is Off The Rose” ではNext Big ThingのSally Berry とTensel Sandker、というよりもズバリ、ロンダの娘さんと共演を果たしています。「私の両親が私と一緒に歌う時に感じていた喜びを、今は理解できるわ。この曲をプレイするまで分からなかった事よ。そんな事を考えてこの子達を見ていると、涙が出てくるの。最初はいくら誘ってもプレイする事に全然興味がなかったのよ。でも音楽を始めて、今では’音楽を愛している’と語り、Next Big Thingというグループを組んでいるの。この子達を誇りに思うわ」


 アルバムにはかつてのカントリー・レジェンドの作品のカバーも収録。“Tonight My Baby’s Coming Home”はバーバラ・マンドレルBarbara Mandrellの、“Back On My Mind”はロニー・ミルザップのRonnie Milsapナンバーです。ココラの選曲もカントリー・ファンに馴染み良い理由の一つ。ラストの“You Must have A Dream” でほほえましい歌声を聞かせる少女Issac MooreとHannah Harperはブルーグラス・シンガーとして既に活動している子達で、8歳のIsaacはラルフ・スタンレーと共演した事もあるそう。ロンダの次世代の子供たちへ託す期待が感じ取れる作品です。

 ブルーグラスというと、カントリーミュージック・ファンにとってもなじみ難い部分があるのは確かなのですが、ロンダは適度にカントリー・フィレーバー溢れるナンバーをレパートリーにしてカントリー・ファンへの門戸を開いてくれる存在なので、こうして彼女の作品を紹介しています。ブルーグラス界でブレイクする前に、カントリー・レコードを出した経験もあるしね(「Destination Life」のレビューをご参照)。牧歌的なアコースティック・サウンドに魅力を感じている方は、ロンダはお勧めですね。なかなかグラマラスな美女である事も(男性諸氏には)大きな魅力の一つかな。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2010年 カントリーミュー... | トップ | 2010年アメリカン・ミュ... »
最新の画像もっと見る