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原発は日本人にセットされた時限爆弾だ!

原発再稼動阻止のために、原発関連事項を整理して随時アップする。また、集団自衛権の行使の阻止のために同様に取り組みたい。

添田孝史著「原発と大津波 警告を葬った人々」ーーー3.11の国会事故調の調査員の報告

2016-05-20 10:01:21 | 原子力

 

原発と大津波 警告を葬った人々 (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店

東電および原発推進業界団体および規制側行政等々の広範囲の部分で、多数の作為的行動、無作為、責任を問われないような行為等々が、津波に関してだけであるが(添田氏は津波に関する調査員であるため)、詳細に記述されている。

余りにもの惨状に、内心の感情を抑えながら一ページを読み進むにも努力を要する。読むのがつらい本である。とても、内心の怒りを抑えながら一気に読み通すことは不可能であろう。

それでも、どのような無責任が原子力で罷り通ってきたかを本書によって知る必要は、ある。


原子炉耐震設計審査指針をひもとく(2)ーはしがき

2016-05-18 12:30:00 | 原子力

標記指針の時代による変遷および各種耐震設計審査指針を理解するためにもそれらの比較表(1/6~6/6)を作成した。

以下、地震工学に疎い、単なる機械技術者であった一人の感想を述べたい。

2.はしがき

(1)当初指針の「はしがき」、したがって、後続の指針のそれらにはその存在意義、なんのための指針なのかを明らかにしていない。

日本人の生命を左右する、非常に重要な指針であるという認識が感じられない。

そして、こういう重要な指針が国民一般で十分に論議されずに決定されて良いものだろうか。

(2)各指針に、「今後さらに新たな知見と経験の蓄積によって、必要に応じて見直される必要がある。」に類似の記載がある。

 このことは、現在の地震に関する知識、理論が完全ではなく、即ち、耐震設計を支える地震学、地震工学が成熟したものであるとは言えないこと、むしろ未熟、未完な学問であることを表明するものと解釈したい(なお、その性質上、永久に未完である)。

なお、当ブロガーは今日までの各研究成果を否定するものではないことは勿論である。

現在の地震学、地震工学が地球の歴史から見ればホンの一瞬の情報に基づき、そのホンの一瞬の情報を説明するためにあるという事実を考えれば容易に想到できる。そのことを認識した上での、とりあえずの耐震設計である。

ーーー広瀬氏は「原子炉時限爆弾」の中で、「本書に述べている大地震の脅威は、あくまで「現在分かっている歴史地震」を根拠に推測するものであり、ーー必ず過小評価になっていいると説く(同書193ページ)」。ーーー

しかし、その認識が耐震設計審査指針の中では、具体的に表現されているであろうか。後に該当箇所で詳細に検討したい。

現在の建築基準法および原子炉耐震設計指針がそのような未完の学問の上に成り立っていることが世の中に浸透していないことに危惧を感じる。

例えば、木造住宅は、最新耐震基準の下に建築されたものであっても、一定の割合いで(更に、地盤の流動化、滑りがあれば更にプラスされる)倒壊することが予定されているという事実を一般の人は知らない(その一例として、当ブログの「熊本地震に関連してーーー」参照)。

新耐震基準の下であれば、震度7の激震でも大丈夫という間違った安心感を抱いている。

更に、重要なことは、原子力発電所ですら、同様に、その耐震設計審査指針は、どんな地震が来ても正常に機能を保つことを保証するものではない。一定の仮定に基づく耐震性である。

但し、一定の仮定の上とは言え、原子力発電所には「想定外」という言葉は許されないのである。それを如何に担保するかが指針の役目のはずであるが、実際はどうかである。

(3)原子炉全般における準拠規格ならびに基準

旧指針にて、

建物・構築物の基準地震動S1等との組合せに対する許容限界については「安全上適切と認められる規格及び基準による許容応力度」としたが、具体的には「建築基準法」等がこれに対応する。

機器・配管系の許容限界については、「発生する応力に対して降伏応力又はこれと同等な安全性」を有することを基本的な考え方としたが、具体的には、電気事業法に定める「発電用原子力設備に関する技術基準」等がこれに対応する。

と規定されており、この規定は基本的に新指針にも引き継がれている。

 


熊本地震に関連して(今回の地震は、建築基準法では想定していない地震動である。注意!!!)

2016-05-01 08:01:28 | 原子力

亡くなられた方のご冥福をお祈りします。また、一連の余震に遭われている人達にお見舞い申しあげます。

 一般家屋(現在の建築基準法に基づく)と原子力発電所の耐震性の比較検討をしたいと思い検索したところ、

一般財団法人 高度情報科学技術研究機構の「原子力百科事典ATOMICA」に下表があった。

         

 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=02-02-05-05

(2008年9月更新)

 (1)設計用地震動が一般家屋と原発でそれぞれ違う(違うのは、それぞれに求められる耐震性が違うからと思いたい)。

  しかし、「Cクラス:一般建築構造物の一次設計の1.0倍の地震力」と規定されており、一般建築構造物の二次設計が適用されていない。

  ということは、二次設計をクリアした一般建築物構造物が原発Cクラスの建築構造物の耐震性より高い場合もあり得ることになる。


(2)熊本地震の報道に接して、 現行の、一般および原発に関する耐震指針には、機械技術者の目から見て、重大な欠陥がありそうだ

 即ち、現行の種々の耐震性の基準は、原発の耐震基準も含め、一回の大地震に耐えれば良い(例の、経済的観点からの弾塑性設計法を採用しているところを見ると辛うじて)、として作成されている。

 しかも、100%安全であることを保証していない。まるで、原発再稼働に関する原子力規制委員長の発言みたい。

 しかし、熊本地震のように、例えば、震度7未満の地震が、被害構造物の補修の暇なく、数回から数百回に亘り連続して襲うことを想定していない。即ち、ボクシングで連打を浴びるようなものである。

 したがって、今回の熊本地震では住宅の倒壊が想定以上に大きくなる可能性がある建築基準法では想定していない連続地震!!!そうならないことを祈るだけである、また、安全な場所に避難することがとても大事である。

 前回より弱いと侮るなかれ!!!)。

(3)震度7の、14日の地震は、日奈久断層帯(81km)の高野―白旗区間(16km)で発生したと想定される。その断層帯について、熊本県は耐震補強計画作成のために、住宅被害をシミュレーションしている(平成28年4月)。
以下に示す。

建築された年代で耐震性が異なることを注目して欲しい。また、この被害推定は、地震動および地盤等により大きくことなる。更に、下表には、地盤の液状化および地盤の滑りによる倒壊を含まないことに注意。

 

 

 http://cyber.pref.kumamoto.jp/bousai/


原子炉耐震設計審査基準対比表の作成のための項目比較表

2016-05-01 07:48:37 | 原子力

原子炉耐震設計審査基準対比表(1/6~6/6)を完成させた。

比較表を作成しようとしたところ、各指針毎に項立てが異なっていた。

更に、その項目の名称も、例えば、地震力の策定、地震力の評価、地震力の評価のように、それらの名称から相互の関係が直ぐには分からない。

まるで、「耐震設計審査指針のジャングル」内に彷徨った感があった。

各指針の項目の相関関係を本表のようにまとめて、ようやく各対比表が作成できた。

重要な指針なので、規定を作成する場合に、担当する関係者には分かり易い規定作りを心掛けて頂きたい。

また、本対比表を、原子炉耐震設計審査基準対比表(1/6~6/6)を見るときに参考にして欲しい。

項目

初期指針1/2

旧指針

新指針

新規制基準

発行年

1970/1978年

1981年

2006年

2013年

対比表(1)

1.はしがき

 

Ⅱ適用範囲

Ⅲ安全審査指針

1定義

2.原子炉全般

2.1準拠規格および基準

2.2敷地の自然条件に対する設計上の考慮

2.3耐震設計

 

 

 

 

 

 

 

 

重要度分類のクラス別施設から指針2に移る

1.はしがき

 

2.適用範囲

 

 

 

 

 

 

 

3.基本方針

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4.耐震設計上の重要度分類

1.はしがき

 

2.適用範囲

 

 

 

 

 

 

 

3.基本方針

解説:Ⅰ基本方針について、(1)耐震設計における地震動の策定、(2)残余のリスクの存在について

 

 

 

 

4.耐震設計上の重要度分類

 

 

第一条

第二条

 

 

 

 

 

第二章 設計基準対象施設

第三条(設計基準対象施設の地盤)、1~3項

第3条1~3項の解釈

第四条(地震による損傷の防止)、1~4項

第4条第1項、第2項(含む、重要度分類)の解釈



対比表(2)

5.耐震設計評価法  (4)基準地震動の評価法

5.基準地震動の策定

5.基準地震動の策定

5.第4条3項の基準地震動、一(含む、解放基盤表面)、二(三地震タイプ)、三(含む、震源を特定せず策定する地震動)、四(含む、策定に当たっての調査)

対比表(3)

解説:I.基準地震動の評価について、1(意味解釈)、2(S1、S2の二種に区分)、3(考慮すべき事項)、4(策定要素)

 

解説:Ⅱ活断層の評価について、1~3の再来期間(R年)まで

解説:I.基準地震動の評価について、1(意味解釈)、2(S1、S2の二種に区分)、3(考慮すべき事項)、4(策定要素)

 

解説:Ⅱ活断層の評価について、1~3の再来期間(R年)まで

解説:II. 基準地震動Ssの策定について、(1)基準地震動Ssの性格、(2)用語の意味解釈、(3)基準地震動Ssの策定方針にっいて

II. 基準地震動Ssの策定について (4) 震源として想定する断層の評価にっいて

 

対比表(4)

5.耐震設計評価法

(1) 方針

(2)静的解析

(3)動的解析

(3)基準地震動の評価法

5.耐震設計評価法

(1) 方針

(2)地震力の算定法、①設計用最強地震及び設計用限界地震による地震力、②静的地震力

(3)基準地震動の評価法

6.耐震設計方針

(1)基本的な方針

(2)地震力の算定法、① 基準地震動Ssによる地震力、②弾性設計用地震動Sdによる地震力、③静的地震力

解説:Ⅲ.耐震設計方針について、(1)~(3)の地震力の算定について

3.第4条3項の解釈、一~二

4.第4条第2項の解釈、一~二

 

7第4条第3項に規定する「基準地震動による地震力」の算定

対比表(5)

(記載なし)

解説:Ⅲ.静的地震力について

解説:Ⅲ.耐震設計方針について、(4)の静的地震力について

6.第4条3項に規定する安全機能ーーー、一~二

対比表(6)

6 荷重の組合わせと許容限界

解説:Ⅲ

(記載なし)

6 荷重の組合わせと許容限界

解説:IV

(記載なし)

7荷重の組合わせと許容限界

 

8.地震随伴事象に対する考慮

(記載なし)

左記新指針の解説:V

 


高浜原発の仮処分ー判決文抜粋(2)ー過酷事故対策(争点2)

2016-03-19 09:34:33 | 原子力

2016年3月9日の大津地裁による高浜原発3号機および4号機の仮処分の決定の判決文は、下記URLを参照

http://adieunpp.com/download&link3/160309otukettei.pdf

判決文を読むと原発関連事項が整理できるので、一度、本文の通読を皆さんへお薦めしたい。55頁にわたる内容であり、争点に沿って抜粋する。

5 争点2(過酷事故対策)に関する当事者双方の主張
(1)債権者の主張

ア 新規制基準の不合理性

新規制基準では、次のとおり、福島第一原子力発電所事故で得られた教訓の多くが取り入れられておらず、過酷事故対策が不十分である。このような対策では、本件各原発の稼動上の安全性は確保されない。

イ 不合理な単一故障指針の採用
新規制基準が制定される前の安全設計指針(平成2年8月30日原子力安全委員会決定)では、各傾倒を構成する機器の単一故障を仮定し、それでも必要な機能を失われないことが求められており、「単一故障指針」と呼ばれていた。単一の原因によって一つの安全機器のみがその機能を喪失することを仮定するわけであるから、事故が起きたときに、各種の安全機能を有する機器の全部がこわれることを想定しなくてよい。
しかしながら、福島第一原子力発電所事故の経験から明らかなように、地震や津波をはじめ自然現象を原因とする事故は、多数の機器に同時に影響を及ぼす。そのため、異常状態に対処するための安全機器の一つだけが機能しないという仮定は非現実的であり、一つの安全機能に係るすべての機器がその機能を失うことを仮定すべきである。単一の要因によって複数の機器が同時に安全機能を損なうことを「共通要因故障」というが、本来、新規制基準では、多数の設備・機器が同時に機能を失う共通要因故障を仮定した設計および安全設計評価でなければならなかった。

ところが、新規制基準においても、単一故障指針は見直されていない。新規制基準では、「安全機能を有する系統のうち、案機能の重要度が特に高い安全機能を有するものは、当該系統を構成する機器または器具の単一故障(単一の原因によって一つの機器又は器具が所定の機能を失うこと(従属要因による多重故障を含む、)をいう。)が発生した場合であっても、外部電源が利用できない場合においても機能できるよう、当該系統を構成する機器又は器具の機能、構造および動作原理を考慮して、多重性又は多様性を確保し、および独立性を確保するものでなければならない」とされているにすぎない。

ウ 外部電源の重要度の不合理な低さ
重要度分類指針は、原子炉施設の安全性を確保するために必要な各種の機能について、安全上の検知からそれらの相対的重要度を定め、これらの機能を果たすべき構築物、系統および機器の設計似たいして、適切な要求を課すための基礎を定めることを目的とする。重要度分類指針は、安全機能をPS(Prevention System:異常発生防止系)とMS(Mitigation System:異常影響緩和系)に分類し、PSとは、その機能の喪失により、原子炉施設を異常状態に陥れ、もって一般公衆ないし従事者に過度の被ばくを及ぼすおそれがあるものと、MSとは、原子炉施設の異常状態において、この拡大を防止し、又はこれを速やかに終息せしめ、もって、一般公衆ないし従事者に及ぼすおせれのある過度の放射線被ばくを防止し、又は緩和するものと定義する。そして、PSとMSに属する構築物、系統および機器を、その重要度に応じて3クラスに分類し、設計上考慮すべき信頼性の程度を区分している。クラス1は、合理的に達成し得る最高度の信頼性を確保し、かつ、維持する、クラス2は、高度の信頼性を確保し、クラス3は、一般の産業施設と同等以上の信頼性を確保し、かつ、維持する、ことを目標とされている。ところが、新規制基準では、外部電源は、「異常事態の起因現象となあるものであって、PS-1(クラス1)およびPS-2(クラス2)以外の構築物、系統および機器」と定義付けられ、PS-3(クラス3)に分類されてしまった。また、外部電源は、耐震設計上の重要度分類においても、Sクラス、Bクラス、Cクラスの分類のうち、最も耐震強度が低いCクラスに分類されてしまった。

エ 使用済み燃料ピットの不十分な防護
福島第一原子力発電所では、使用済み燃料の冷却にも失敗した。原子炉格納容器のような堅固な施設に守られていない使用済み燃料は、損傷が始まれば、放射性物質がそのまま環境へ放出されることになるにもかかわらず、その耐震性は、Bクラスにとどめ置かれたままである。

オ 計器類の改良不足
福島第一原子力発電所事故では、原子炉内の温度計、水位計、圧力計等がメルトダウンのような過酷な条件に耐えられず故障し、運転員が炉内の状況を正確に把握できなかったため、大混乱を招いたし、その後の究明に当たっても大きな支障になっている。そうすると、今後原発を運転するためには、炉心が損傷する過酷な条件かでも、故障しないで正確な情報を伝える改良が不可欠なはずである。しかし、新規制基準では、計器類に特段の要求がされていない。

カ 立地審査指針の欠如
原子力安全委員会は、昭和39円5月27日、「原子炉立地審査指針およびその適用に関する判断のめやすについて」と題する決定をし(以下「立地審査指針」といいう。)、立地審査指針では、重大な事故の発生を仮定しても、周辺の公衆に放射線障害を与えないことを条件とし、過酷事故を超えるような、技術的見地からは起こるとは考えられない事故の発生を仮定しても、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないことを条件とした。
ところが、福島第一原子力発電所事故では、実効線量100mSvの等値線が敷地境界から20kmも30kmも離れた地点にまで及んでいる。
これは、福島第一原子力発電所の設置許可に当たって仮想された事故が極端に小規模で、発電所発電所の敷地外の放射線の被害が及ぼないように計算された結果であったのである。これを踏まえれば、本件原発についても、正確に事故想定すれば、その設置の当初から、立地審査指針に不適合であったことは明らかである。しかも、新規制基準では、立地審査指針が排除されており、立地審査基準に適合しない状況であるからこそ、排除されたものであって、極めて不当である。

(2)債務者の主張

ア 新規制基準の合理性
新規制基準は、その制定に当たって、原子力規制委員会下の3つの検討チームでの結果を踏まえたものである。これらのチームは、福島第一原子力発電所事故を受けて設置されたものであるし、各チームの会合には、原子力規制委員会担当委員や多様な学問分野の外部専門家らが出席し、それぞれ約8か月間の会合において議論が重ねられ、その上意見公募手続き(パブリックコメント)が2度にわたって行われた。したがって、新規制基準は、現在の最新の知見を集合した知的信用度の高いものである。
新規制基準における基準地震動の策定方法の基本的な枠組みは変更されなかったが、地震動の大きさに与えるパラメータについては、慎重な検討を求め、耐震重要度分類の要求事項は、従前の規制と変わっていないが、津波防護施設の分類上の重要度が向上した。津波対策については、基準津波の策定を要求する点で従前の規制と変更があった。ほかに、竜巻の想定、テロ対策について、改良された。債務者は、これらの新規制基準に基づき規制に、本件各原発が合致していることを確認した。
イ 共通要因故障防止の指針
新規制基準にいう「単一故障}とは、単につの原因によって一つの危機が所定の機能を失うことであるが、単に一つの機器だけの故障を想定しているのではなく、例えば、外部電源が喪失した場合において、非常用ディーゼル発電機が故障し、同発電機から電力の供給を受けるECCSの電動ポンプが全て機能を喪失するといった、従属要因による多重故障を含むものである。
ウ 

新規制基準において、原子力発電所の安全性を確保するために重要な役割を果たす「安全上重要な設備」について、発電所の通常運転に膣用な瀬得日に比べて拡大に高い信頼性を持たせることにより、安全性を確保している。地震時に原子炉の安全性を確保するために必要な電力の供給は、非常用ディーゼル発電機が担うこととされており、債務者は、本件各原発の非常用デーゼル発電機について、安全上重要な設備として耐震安全性を確保した。
エ 使用済み燃料ピットの防護が十分であること
使用済み燃料は、冠水さえしていれば崩壊熱は十分除去され、燃料被覆管の損傷にいたることはなく、その健全性が維持されることから、使用済み燃料ビットからの周辺環境への放射性物質の放出を防止するためには、冠水を保つことで十分である。そのため使用済み燃料ビットの給水設備については、安全上重要な設備をして耐震安全性を確認した。
オ 計器類につて十分な保護が与えられていること
新規制基準では、炉心の著しい損傷等の際に、原子炉の状態を把握するために必要となるパラメータ(1時冷却材の温度・圧力、加圧器の恣意等)を計測する計装設備が、事故時における温度、放射線、荷重等の使用条件においてその事故に対処するに必要な機能を有効に発揮するものであることが求められている(設置許可基準規則4条1項1号)。よって、新規制基準において、「計器類に特段の要求はされていない」との債権者らの主張は誤りである。
カ 立地審査指針に係る反論
そもそも、福島第一原子力発電所事故は、同発電所の自然的立地条件に係る安全確保対策(具体的には、津波に関する想定である。)が不十分であったため、同発電所の「安全上重要な設備」に共通要因故障が生じ、放射性物質が以上放出される事態に至ったものである。新規制基準は、福島第一原子力発電所事故を踏まえて策定されており、したがって、福島第一原子力発電所事故と同様の事態が生じることを当然の前提とする債権者らの主張は合理的ではない。

当裁判所の判断

(1)福島第一原子力発電所事故によって我が国にもたらされた災禍は、膨大であり、原子力発電所の持つ危険性が具現化した。原子力発電所による発電がいかに効率的であり、発電に要するコスト面では経済的優位であるとしても、それによる損害が具現化したときはには必ず優位であるとはいえない上、その環境破壊のおよび範囲は我が国を越えてしまう可能性さえあるのであって、単に発電の効率性をもって、これらの膨大な災禍と引換えにすべき事情であるとは言い難い。
債務者は、福島第一原子力発電所事故は、同発電所の自然的立地条件に係る安全確保対策(具体的には、津波に関する想定である。)が不十分であったために、同発電所の「安全上重要な設備」に共通要因故障が生じ、放射性物質が異常放出される事態に至ったもので、新規制基準が福島第一原子力発電所事故を踏まえて形成されていることから、福島第一原子力発電所事故と同様の事態が生じることを当然の前提とする債権者らの主張は合理的ではないと主張する(前記第2、5(2)カ)。

しかしながら、福島第一原子力発電所事故の原因究明は、建屋内での調査が進んでおらず、今なお道半ばの状況であり、本件の主張および疎明の状況に照らせば、津波を主たる原因として特定し得たとしてよいかも不明である。
その災禍の甚大さに真摯に向き合い、二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講ずるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。この点についての債務者の主張および疎明は未だ不十分な状態にあるにもにもかかわらず、この点に意を払わないのであれば、そしてこのような姿勢が、債務者ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとするならば、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えると言わざるを得ない。
福島第一原子力発電所事故の経過(前提事実(6)イ)からすれば、同発電所における安全確保対策が不十分であったことは明らかである。そのうち、どれが最も大きな原因であったかについて、仮に、津波対策であったとしても、東京電力がその安全対策の必要性を認識してさえいれば、同発電所において津波対策の改善を図ることが不可能あるいは極端に困難であったとは考えられず、防潮堤の建設、非常用ディーゼル発電機の設置場所の改善、補助給水装置の、補助給水装置の機能確保等、可能な対策を講じることができたはずである。しかし、実際には、そのような対策は講じられなかった。

このことは、少なくとも東京電力や、その規制機関であった原子力安全・保安院において、そのような対策が必要であるとの認識を持つことができなかったことを意味する。現時点において、対策を講じる必要性を認識できないという上記同様の事態が、上記の津波対策に限られており、他の要素の対策は全て検討し尽くされたかは不明であり、それら検討すべき要素についてはいずれも審査基準に反映されており、かつ基準内容についても不明確な点がないことについて債務者において主張および疎明がなされるべきである。
そして、地球温暖化に伴い、地球全体の起床に経験したことのない変動が多発するようになってきた現状を踏まえ、また、有史以来の人類の記憶や記録にある事項は、人類が生存し得る温暖で平穏なわずかな時間の限られた経験にすぎないことを考えるとき、災害が起きる度に「想定を超える」災害であったと繰り返されてきた過ちに真摯に向き合うならば、十二分の余裕をもった基準とすることに念頭を置き、常に、他に考慮しなければならない要素ないし危険性を見落としている可能性があるとの立場に立ち、対策の見落としにより過酷事故が生じたとしても、致命的な状態に陥らないようにすることができるとの思想に立って、新規制基準を策定すべきものと考える。
債務者の保全段階における主張および疎明の程度では、新規制基準および本件各原発に係る設置変更許可が、直ちに公共の安寧の基礎となると考えることをためらわざるを得ない。
(2)次に、本件で問題となった過酷事故対策の中でも、福島第一原子力発電所事故において問題となった発電所の機の維持のための電源確保について検討すると、債務者の考えによれば、例えば、基準地震動Ssに近い地震動が敷地に到来した場合には、外部電源が全て健全であることまでは保障できないから、非常電源系を置くことになる。我が国は、地震多発国であるものの、実際、本件各原発の敷地が毎日のように基準地震動Ssに近い地震動に襲われているわけでないから、その費用対効果の観点から外部電源についてはCクラスに分類し、事故時には非常用ディーゼル発電機等の非常用電源(Sクラスに分類)により本件各原発の電力供給を確保することとするものである。経済的観点からのこの発想が福島第一原子力発電所事故を経験した後においても妥当するのか疑問なしとしないが、その様な観点に仮に立つとすれば、電源事故が発生した際の備えは、相当に重厚で十分なものでなければならない。
ここで, 新規制基準に基づく審査の過程を検討してみると, 過酷事故発生に備えて, 債務者は, 安全上重要な構築物, 系統及び機器の安全機能を確保するため非常用所内電源系を設け, その電力の供給が停止することがないようにする設計を持ち, 外部電源が完全に喪失した場合に, 発電所の保安を確保し, 安全に停止するために必要な電力を供給するため, ディーゼル発電機を用意することとし, これを原子炉補助建屋内のそれぞれ独立した部屋に2 台備えることとしている。またそのための燃料を7日分,燃料油貯油そうを設けて貯蔵するとしたり,直流電源設備として蓄電池を置いたり,代替電源設備として空冷式非常用発電装置,電源車等を設けることとしたことが認められる (乙76)。また,原子力規制委員会の審査においては, これらの設置に加え, これらが稼働するための準備に必要な時間, 人員, 稼働する時間等にっいて審査し,要求事項に適合していると審査した(乙14の2)。ほかにも, 過酷事故に対処するために必要なパラメータを計測することが困難となった場合において, 当該パラメータを推定するための有効な情報を把握するための設備や手順を設けたり, 原子炉制御室及びその居住性等にっいて検討しており, これらからすれば,相当の対応策を準備しているとはいえる。
しかし, これらの設備がいずれも新規制基準以降になって設置されたのか否かは不明であり (ただし, 空冷式非常用発電装置や, 号機間電力融通恒設ケーブル及び予備ケーブル, 電源車は新たに整備されたとある。), ディーゼル発電機の起動失敗例は少.なくなく (甲80)、空冷式非常用発電装置の耐震性能を認めるに足りる資料はなく,また,電源車等の可動式電源にっいては, 地震動の影響を受けることが明らかである。 非常時の備えにおいてどこまでも完全であることを求めることは不可能であるとしても,また,原子力規制委員会の判断において意見公募手続が踏まれているとしても, このよ
うな備えで十分であるとの社会一般の合意が形成されたといってよいか, 躊躇せざるを得ない。

したがって, 新規制基準において, 新たに義務化された原発施設内での補完的手段とアクシデントマネジメントとして不合理な点がないことが相当の
根拠, 資料に基づいて疎明されたとはいい難い。

(3) また, 使用済み燃料ピットの冷却設備の危険性にっいて

新規制基準は防護対策を強化したものの,原子炉と異なり一段簡易な扱い(Bクラス) となっている。 安全性審査にっいては, 原子炉の設置運営に関する基本設計の安全性に関わる事項を審査の対象とすjきところ, 原子炉施設にあっては, 発電のための核分裂に使用する施設だけが基本設計に当たるとは考え難い。 すなわち, 一度核分裂を始めれば, 原子炉を停止した後も, 使用済み燃料となった後も, 高温を発し, 放射性物質を発生し続けるのであり, 原子炉停止とはいうものの, 発電のための核分裂はしていないだけといってよいものであるから, 原子炉だけでなく, 使用済み燃料ピットの冷却設備もまた基本設計の安全性に関わる重要な施設として安全性審査の対象となるものというべきである。 使用済み燃料の処分場さえ確保できていない現状にあることはおくとしても, 使用済み燃料の危険性に対応する基準と して新規制基準が一応合理的であることにっいて,債務者は主張及び疎明を尽くすべきである。また,その上で,新規制基準の下でも,使用済み燃料ピットにっいては,冠水することにより崩壊熱の除去が可能であると考えられるが, 基準地震動により使用済み燃料ピット自体が一部でも損壊し,冷却水が.漏れ,減少することになった場合には, その減少速度を超える速度で冷却水を注入し続けなければならない必要性に迫られることになる。 現時点で, 使用済み燃料ピットの崩壊時の減i水速度を検討した資料であるとか,冷却水の注入速度が崩壊時の漏水速度との関係で十分であると認めるに足りる資料は提出されていない。

 

 

 

 

本ブロガの感想


(1)債権者の主張について
(抑制された論調と感じた。もっと、切り込んでも良いのでは。)

ア 新規制基準の不合理性
新規制基準が成立した過程が明らかにされていない。その過程との関係での新規制基準の不当性を明らかにして欲しかった。

新規制基準が策定された経緯についての解説は、参議院 環境委員会調査室「原子力発電所の新規制基準の策定経緯と課題」参照
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2013pdf/20130903131.pdf

単一故障の論理が福島第一原子力発電所事故により崩壊している事実を明確にして欲しかった。

ウ 外部電源の重要度の不合理な低さ

重要度分類指針は下記で規定されている。
「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19900830002/t19900830002.html
原子力安全委員会決定
平成二年八月三〇日

即ち、福島第一原子力発電所事故を踏まえた見直しがされていない。と言うよりは、見直しの必要性を感じながら意図的に無視している。政府、電力会社の不作為である。これを債権者は訴えて良かったのではないか。
このような分類指針は、耐震設計重要度分類指針を含め、総じて、抽象的である。匙加減でどうともなると言うことができる。このようなアイマイな基準に人の命を預けることができるか。


エ 使用済み燃料ピットの不十分な防護
これもまた、福島第一原子力発電所事故でその防護の不十分さが万人に晒された。
同じ使用済み(あるいは使用中)燃料が、原子炉内では、圧力圧力容器、原子炉格納容器および原子炉建屋で三重に保護されていたが(それらの機能も、事故では破られたが)、なんと、燃料ピット中の使用済み燃料には一般ビルの建屋だけであった。したがって、水素爆発したとき、使用済み燃料中の放射性物質が大気中に放出された。
また、4号機の燃料プールが耐震不足により崩壊するような事態になれば、それこそ日本沈没に至るような瀬戸際にあった。
これらの事実に対しても、新規制基準はしらん振りを決め込んでいる。これで「世界一厳しい基準」か。

カ 立地審査指針の欠如
立地審査指針の「技術的見地からは起こるとは考えられない事故の発生」とは、何をいうのであろうか。今回のメルトダウンは、技術的見地から十分に起こりうる事故で、シミュレーションすらされていた。
設置審査基準は、極めて有力な、主張の肝である。

(2)債務者の主張について

ア 新規制基準の合理性
約15名の検討チームが検討しものであるから妥当な基準だというが、たった、約15人の専門家が決定した内容が
妥当なものであるとう証拠は無い。まして、一般人を委員に加えない委員会を開くこと事態がおかしい。このような重要な基準が原子力規制委員会の身内で決定している(2013年6月19日)。なぜ、国会の場で議論しないのか。
「新規制基準は、現在の最新の知見を集合した知的信用度の高いものである。」というが、誰がこの程度の説明で「ハイそうですか」と言うだろうか。
イ 共通要因故障防止の指針
例にあげている非常用デーゼル発電機の故障こそが単一故障である。この時、2台目の非常用デーゼル発電機も一台目と同一の原因(例えば、地震、津波)で故障する「共通要因故障」の場合を考慮すべきである。二台の非常用デーゼル発電機が同時に故障することは無いとの考えは通用しない。(このことは、福島第一原子力発電所事故で現実になった。)

ウ 外部電源の重要度の不合理に低くない
「地震時に原子炉の安全性を確保するために必要な電力の供給は、非常用ディーゼル発電機が担うこととされている」とは、どのような根拠で言っているのか。軽油の備蓄量等、関連事項のシミュレーションは十分か。

福島第一原子力発電所事故の第一原因は、外部電源の鉄塔が倒壊し、外部電源が遮断されたことである。
その証拠に、同じ福島第二原子力発電所では、外部電源の一系統が辛うじて残ったためになんとか危機が避けられた。

新規制基準では、外部電源の確保の対策をとらず、外部電源が遮断された場合の対策をしている。
例えば、家の耐震性不足が判明して、テントを数個、購入する態度と似ている。誰もこのような態度を是としないだろう。

エ 使用済み燃料ピットの防護が十分であること
「冠水さえしていれば」と仮定おくこと自体、安全設計思想に反している。自衛隊がヘリコプターから決死の覚悟で給水した映像を決して忘れられるものではない。
オ 計器類につて十分な保護が与えられていること
よくもこういう反証ができるものだと電力会社の雇われ弁護士を哀れに思う。まして、相手の主張が誤りであると言うとは。
カ 立地審査指針に係る反論
技術的見地からは起こるとは考えられない事故の発生を仮定しても、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないことを条件としたものであって、安全確保しているから大丈夫という反論が通らない要件である。福島はだめで高浜は大丈夫などという反論の通用する要件ではない。

当裁判所の判断について
(1)福島第一原子力発電所事故の原因究明がなされない状態での新規制基準であることを認識すべきことを指摘している。
(2)非常用ディーゼル発電機の信頼性に疑問を提示。また、計器類の欠陥について疎明されていないことを指摘している。
(3)使用済み燃料ピットの冷却設備の危険性について指摘している。
但し、原子力の憲法である立地審査指針に関し、債権者が指摘した、「カ 立地審査指針の欠如」に対する判断をしていないことが悔やまれる。
以上