日本政府には、一般人の追加被曝線量を年間一ミリシーベル以下にする責務があり、現状は、一部の地域とは言え、その責務を果たさず、違法状態である。
環境省の線量基準20ミリシーベルトの根拠を同省作成の資料で見ると(2014年6月作成)、
QA13 避難指示基準及び同基準の見直しの基準を年間 20 ミリシーベルトとした経緯は何ですか
放射線防護に関する国際基準として広く認められている考え方である年間20ミリシーベ
ルト~100ミリシーベルトの範囲のうち最も厳しい値に相当する年間20ミリシーベルトを
避難指示の基準として採用されました。
東京電力福島第一原発事故においては、放射線防護に関する国際基準として広く認めら
れている国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方を基本に、放射線防護に関する国内外の
専門家の意見も踏まえつつ、放射線防護の措置が講じられてきました。
避難については、住民の安心を最優先し、事故直後の1 年目から、ICRP の示す年間20
ミリシーベルト~100ミリシーベルトの範囲のうち最も厳しい値に相当する年間20ミリシ
ーベルトを避難指示の基準として採用されました。
(ICRPを引き合いに出して、正当性を主張しようとしているが、年間20ミリシーベルト~100ミリシーベルトは、緊急被曝時、即ち、原発事故時の値で、「いわゆる直ちに影響が生じるレベルで無い(元枝野官房長官)」値である。もともと、住民の健康を考慮したものでないことは、その性格から明らかである。
これを避難指定解除の基準にすること自体、間違いである。
ところで、ことあるごとにICRPの名前が出てくるが、ICRPは、長崎、広島の内部被曝の一定期間、調査させず、ブラジルの放射線事故の死傷者の公表を握り潰し、チェルノブイリの事故の死傷者数の公表をソ連政府、ククライナ政府と共に握り潰す等々、数々の悪事を重ねた組織である。要するに原発推進の組織である。
更にまた、国会事故調の調査によると、ICRP基準そのものが、日本の原子力村の本体である電気事業連合会の望むように作られたことが、その電気事業連合会の資料から明らかになっっている(崎山比早子氏、「終わりない危機」))。
そのICRPの基準に沿い物事判断することが如何に危ういことか判断すべきである。
QA14 空間線量率の毎時 3.8 マイクロシーベルトを年間被ばく線量 20 ミリシ
ーベルトに相当すると考える根拠は何ですか
1 日の滞在時間を屋内16 時間、屋外8 時間と想定し、また、屋内における木造家屋の低
減効果を考慮して推計しています。
1 日の滞在時間を屋内16 時間、屋外8 時間と想定し、また、屋内における木造家屋の低
減効果を考慮して、空間線量率から年間被ばく積算線量を推計しています。
具体的な計算方法は、以下のとおりです。
年間被ばく積算線量の推計式
年間20ミリシーベルト
=1日の被ばく線量 × 365 日
↓
屋内での被ばく線量 [ 3.8マイクロシーベルト × 16時間 ×0.4(低減効果) ]
+
屋外での被ばく線量 [ 3.8マイクロシーベルト × 8時間 ]
※1日の滞在時間を屋内16 時間、屋外8時間と想定
※1 木造家屋の低減効果0.4は、IAEA がまとめた「Planning For Off-Site Response to
Radiation Accidents in Nuclear Facilities(IAEA TECDOC 225)」によるもの。
※2 上記計算式では、①内部被ばく、②放射性物質の物理減衰やウェザリング効果を考慮
していない。これは、①による線量増加分と②による線量減少分が相殺されると仮定して
いるため。
(内部被曝をこのように、無視し、単純化することができるのであろうか。内部被曝こそ、問題ではないのか、内部被曝は、一過性のものではなく、現在の日本人に生涯に亘り継続する。この計算方式は、原子力施設周辺の住民の自然放射線以外の放射線被曝の年間限度線量1ミリシーベルトでも採用されている。
基本的に、このような安全限度では安全係数を入れて考えるのが安全思想に沿うものであるのに、一律に、屋外8時間を想定し、低減効果0.4としているのは問題である。
屋外8時間を越えて屋外にいる人は、限度線量をその分越える。また、低減係数は、大邸宅かウサギ小屋程度の住宅か、周囲に森が近いか、高汚染地域か低汚染地域かで0.8~0.4程度にバラツクではないだろうか。0.4は下限値に近いと思われる。千葉の一戸建ての我が家では(簡易線量計の計測によるが)、0.7程度である。窓に近付くとレベルが上がり、風呂場が住宅内では一番高い。勿論、居室の中央、二階が低い。
低減係数0.7で計算すると、許容被曝線量は、3.8マイクロシーベルト/時間ではなく、2.85マイクロシーベルト/時間である。今の政府の基準の0.75倍である。)