Miyuki Museumブログ

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Miyuki Museumのひとりごと

つれなき美女

2008-11-14 | 絵・デザイン
(Fri)
男女を描いた絵画ではとっても魅力的に思う一枚☆
吸い込まれるように惹き付けられた記憶。



『つれなき美女』
ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
(1849~1917)イギリス/ラファエル前派

鎧で身を固めた騎士。
騎士の首に髪を絡ませる森の中の美女。
二人の表情からそれぞれの想いが伝わってきそうで
口からこぼれ出る言葉も聞こえてきそぅ。
背景の自然の緑にも溶け込んで…。
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これはイギリスの詩人、キーツの詩をもとに描かれたとされる作品。

詩をご紹介clover

つれなき美女/ジョン・キーツ

どうしたのだ 見事な鎧に身を固めた騎士よ
かくも独り寂しく蒼ざめてさまよっているのは?
湖の菅の葉は枯れ果て もう鳥も鳴かなくなったというのに

どうしたのだ 見事な鎧に身を固めた騎士よ
そんなに憔悴し 悲しみに打ち拉がれているのは?
リスの穀倉には蓄えが満ち溢れ 
収穫のときももう終わってしまったというのに

ユリのように青白な君の顔は 
苦悩と熱病のような汗で じっとりと濡れている
薔薇色に輝いていたと思われる君の頬も
今は色褪せ 見る影もないではないか

私は緑の草地で一人の美女に出会った
その美しさは比類なく そうだ まさに妖精の娘といえた
その髪は長く垂れ その足は軽やかで
その目は妖しげな光を湛えていた

私は花輪を編んで彼女の頭を飾ってやり
馥郁たる花の腕輪も腰帯も作ってやった
彼女は 私を恋しているかのように
私の眼をじっと見つめ 呻き声をあげた

私は彼女を馬に乗せて静かに駈けたが
終日私の眼には何も入らなかった
彼女が横ざまに腰をおろし
絶えず妖精の歌を口ずさんでいたからだ

彼女は甘い草の根や野生の蜜や甘露を探してくれ
異様な言葉で私に囁いた

「私は貴方を愛しています……心から」と

彼女は私を魔法の洞窟に連れてゆき
涙を流してはため息をついた
その怪しい光を湛えた眼を閉ざしてやった
……四度 接吻を繰り返しながら

やがて彼女は私を眠らせてくれた
私は夢を見た
だが なんと悲しいことか
それがこの冷たい丘の中腹で見た
最後の夢になってしまったのだ

夢の中には青白い王侯や武者たちが現れた
いずれも死人のように蒼ざめていた
そして叫んでいた

「あのつれない美女がお前を虜にしてしまったのだぞ」と

暗がりの中に 死の形相もすさまじい彼らの唇が浮かび
大きく口を開いて凄惨な警告の叫びを上げていた
私は眠りから覚め 気がつくと
この冷たい陸の中腹にいるのが分かったのだ

私がこのあたりから去ろうとせず
一人寂しく蒼ざめて さまよっているのはそのためなのだ
湖の菅の葉は枯れ果て
もう鳥も鳴かなくなってはいるのだが


~イギリス名詩選より~

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