映画と周辺

レンタルDVD映画の勝手なインプレッション。車や音楽、その他もろもろ脱線予定。。。池袋の定点観測もする。

容疑者 室井慎次

2006-11-09 20:03:11 | 映画
殺人事件の容疑者の警官が取り調べ中に逃走し、車にはねられ即死する。捜査を指揮していたのは室井慎次だが、取調べ中に暴行を受けたという遺族の告発により、室井は責任を問われ逮捕されてしまう。その裏には警視庁と警察庁の権力争いが見え隠れする・・・。





「踊る大捜査線」シリーズのスピンオフというものを初めて鑑賞した。他の作品の出来がどうかは知らないが、意外といいじゃん、というのが率直な感想。
物語はかなりハードな展開を見せる。「踊る・・」のメインテーマでもある<警察官僚と現場捜査との温度差>をもっと深いところまで踏み込んだような印象。官僚トップの権力争いに巻き込まれる室井や新宿署の捜査員や弁護士などなど。
要領が悪く不器用を絵に描いたような東北大出身の室井慎次。彼のキャラクター性をうまくいかして、意外とまともな映画になっている。弁護士役の田中麗奈もかなりイイ。彼女の演技力があそこまでとは正直思っていなかったので、ちょっとびっくりしたぐらい。


それに比べて、ある意味ベテランの哀川翔はヒドすぎる。滑舌の悪さは天下一品で、本気で何言ってるかわからない。邦画はセリフが聞き取りづらい、というのはよくあることだが、大体前後の流れで自分なりに補完できるものだ。それでも何言ってるかわからないというのは相当だと思う。彼のセリフまわしのヒドさがこの映画の印象をかなり悪くしている。
もう一人、悪徳弁護士の灰島の役作りもちょっとやりすぎ。八嶋智人が悪いとは思わないが、あまりにもリアリティに欠けていて、真摯な映画のタッチが台無し。


ラスト、ずっこけ感がなきにしもあらずだが、トータルで見れば良質な映画だと思うよ、コレ。



ブギーマン

2006-11-06 18:50:29 | 映画
幼少の頃、クローゼットから現れた謎の化け物ブギーマンに父親をさらわれた過去を持つティム。それがトラウマとなって、大人になった今でも悪夢や幻覚に悩まされ続けている。
てなわけで、小さい頃に育った古家でブギーマン退治をしちゃおうって話。



ブログという公の場で映画を批判する場合、それなりのポリシーと自信を胸に批判してる(つもり)。すげーヒットしてみんなが絶賛してるのに自分はそうでもなかったりとか、もっとイイ映画が作れる監督だったり、もっと優れた演技ができる俳優のはずなのに、いまいちぱっとしなかったりとか・・・。そういう映画に出会ってしまったときに、なんか義務感のようなものに駆られて、ついついブログで毒を吐いてしまうことがある。

今まで生きてきた中での映画体験で、自分なりに嗅覚は鍛えてきたつもり。観客に素晴らしい2時間を体験をさせてあげようという意気込みに溢れた作品は、最初の30分で大体わかる。逆にサービス精神に欠けた孤高のアート映画みたいなものは、これはもう監督のマスターベーションを見てるようなもんで、あれこれ批判する気も起きない。

反社会的な内容ではらわた煮えくり返ったとか、金儲けしか考えていない製作スタイルが目に余ったとか、過去のヒット映画のいいとこどりが鼻についたりとか・・・。批判の衝動に駆られるタイプの映画はいくつもあるが、ホラー映画に関してはどうしても甘くなってしまう。基本的にオタクなんだよね、ホラー作る人って。
映像制作そのものが好きな人が多い。そういう作家に対しては、とりあえず次がんばれ、と言いたくなる。

怖がらせ方の演出がどうしたとか、話の展開に何のひねりも無いとか、まあ突っ込みどころはいくらでもある。でも結局はスキルが足らないだけなわけで・・・。そんな映画についてあれこれ言ってもしょうがないよなー、と思う次第。



強いて言えば、
監督はクライマックスを「死霊のはらわた2」っぽくしたかったんだろうか?製作のサム・ライミへのリスペクトもわかるが、もうちょっと自分のカラーを出したほうが良かったね。



この映画、ぶっちゃけて「つまらない」です。主人公が実家に戻った時点で、これはマジメに観ちゃいけないと悟りました。
こういう、超がつくほどのくだらない映画を観ておくことも経験です。そう思えばそんなに腹は立ちません。


ブロークバック・マウンテン

2006-11-02 15:14:47 | 映画
ブロークバック・マウンテンで羊の放牧の仕事をするうちに、愛情に芽生えるジャックとイニス。放牧の期間も終わり、お互いそれぞれの生活に戻るが、ジャックからの一通の葉書が、二人を再びブロークバック・マウンテンに向かわせる。



まず目に付くのがロケーションの美しさ。マットペインティングかと思わせるような雄大な背景に圧倒される。物語としては正統派のストレートな恋愛もので、主要な登場人物も少ないが、ブロークバック・マウンテンそのものも主要キャストの一人といってもいいぐらい。

もちろん美しいだけじゃなくて、ジャックとイニスの心をかき乱し、ほっとさせ、イニスの妻を嫉妬させる存在としてのブロークバックマウンテン。間違いなく、この素朴で不器用な恋愛映画の中心にいる。

「タクシー・ドライバー」のNY、「ソナチネ」の沖縄、「シックス・センス」のフィラデルフィア・・・。その場所が映画のカラーを決定してしまうようなものはいくらでもあるが、場所そのものが登場人物のエモーショナルな部分を突き動かすような映画はなかなか無い。もちろんNYの病んだ雰囲気がトラヴィスを凶行に走らせたとは言えると思うが、この映画ほどシンプルじゃない。エキセントリック過ぎる性格だったり、逃げてきたヤクザだったり、自分が既に死んでいる存在だったりと、かなり特殊な状況とその置かれた場所。

一方、「ブロークバック・マウンテン」はその美しすぎる存在自体が物語を転がしていく。映画冒頭からたっぷりと時間をかけて雄大な景色を見せ付ける。いわばキャスト紹介みたいな感じか。観る側からしてみればそこでその“登場人物”の人となりを把握するわけで、その後の物語の展開にも破綻を感じない。


出会った思い出の場所の人里離れたブロークバック・マウンテンで、不倫の逢瀬を重ねる二人。
煮え切らないイニスに対して、「俺たちにはブロークバック・マウンテンしかないのか!?」とジャックが問い詰めるシーンは胸に来る。


久しぶりに、恋愛映画を観たという気になった。
言うまでもないと思うが、ジャックとイニスは男同士です。