◆リード:反抗挑戦性障害のAさん(通常学級在籍)が、□月はじめのある日、石を投げて窓ガラスを割るなど大荒れした。校長も出張中で、放課後、私が保護者と対応した。その後の顛末記。
2009.11.5 窓ガラスを割った反抗挑戦性障害のAさんへの対応 その3 第662号(ここをクリック)
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前々号からの続きである。(前号及び前々号を読んでから本号を読むことを勧める。)
【前々号及び前号のあらまし】
反抗挑戦性障害のAさんは、(特別支援学級にいる)亀を見たいのに、「5時間目の学習が始まったからダメ」と、私に断られ、大荒れした。
箇条書きに再録すると……
①教室の戸を何度も激しく叩く。
②「開けろ!」と大声を何度も上げる。
③○年生教室の、廊下に飾ってある粘土作品を壊し、欄間から投げつける。
④グランドへ出て、そこから2階にある特別支援教室に向かって石を投げ、厚~い窓ガラスを割った。
⑤ 特別支援学級で学習していたCさんが、そのガラスの破片でケガをした。
⑥迷惑放送(全校に大きな声で関係のない放送をする)をしそうになるが、指導員さんが止める。
⑦クールダウンさせようとするも、脱走。教務室にあった、収穫したばかりのお米をばらまく。
⑧指導員さんが捕まえようとするも、卓球台を倒し、外を逃げ回る。
午後2時以降に限っても、これだけ大荒れした。
そして、午後3時半、Aさんのお母さんが来た。
校長先生は不在。教頭先生は、私に保護者の対応を任せるという。
さあ、一体どう対応したらよいのか!!
校長室には、既にAさんのお母さんが待っている。
じっくりと考えている時間はないのである。(前号より)
教室の窓ガラスは割れ、その破片でケガをした子供もいる。
しかも、当の本人は「先生が悪い。」と言う。
読者のみなさんなら、どう対応しますか?
(すぐに先を読まないで、3分ほど考えてみてください。)
この後、Aさんの母親と面談し、結論として次のように対応することとなった。(詳しくは前号を参照のこと)
① Aさんのお小遣いから3万円を弁償する形で、明日夕方お母さんが本人を連れて謝りに来ること。
②ガラスの破片でケガをしたCさんに、今日、お母さんが本人を連れて謝りに行くこと。
【翌日の対応】
翌朝、さっそく□年生の教室へ行き、粘土作品を壊したことを謝らせた。
(本来担任の仕事であるが、担任の言うことを聞かないのだから、私が指導した。)
ガラスの破片でケガをしたCさんに聞くと、昨夜、Aさんは、お母さんと一緒に謝りに来たという。
あと最大の問題は、ガラス代3万円の弁償である。
私は、この日の午後出張だったので、その後の様子は、校長先生から聞くこととなった。
お昼休みに、昨日の段取りでよいかどうか、お母さんから確認の電話が入ったそうだ。
そして、校長がその通りでよいと答えた。
午後6時、母親がAさんを連れて校長室に来られた。
Aさんが、3万円の入った封筒を、謝罪の言葉とともに、校長先生に差し出した。
校長先生は、3万円の入った封筒を受け取り、1枚ずつ紙幣を数え、確認したそうだ。そして、
校長「壊すと弁償しなくちゃいけなくなるんだから、やっちゃだめなんだよ。」
と言ったそうである。(3万円は、Aさんに知られないよう、後で親に返金した。)
かくて、学校側とお母さんが協力して、「責任を取る」ということを、Aさんに学ばせることができた。
【Aさんの変容】
その後のAさんの変容であるが、急激に問題行動がなくなるなどということは、もちろんない。
しかし、問題行動の歯止めにはなっている。
○ 家庭科室にあったはさみで、たわしを切っていたAさんを見つけ、
私「これ以上切ると、また弁償してもらうよ。」
と言うと、Aさんはたわしを切るのをぴたりと止めた。
○ 同様に、フライ返しをチャンバラのように使っているのを見つけ、
私「壊したら、また弁償だよ。」
と言うと、Aさんはぴたりと止め、元の場所に片づけた。
○ その後、5時間目が始まると、Aさんは、授業の邪魔をしに来ることはなかった。
もし責任をとらせるという一貫した対応をしなかったら、Aさんの問題行動を止めることは、むずかしくなっていただろう。
問題行動をなくすことはできない。しかし、その後に適切な対応を取ることで、問題行動を減らすことはできる。
問題行動は、指導のチャンスなのであり、子供を成長させるよい機会なのである!
【関連記事】あったかい家族日記 「家族の広場」
子供が学校で故意にモノを壊したら……
特別支援学級で子供は成長する! 590号
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◆キーワード:1 保護者への対応 2 反抗挑戦性障害 3 問題行動
◆留意点・その他:
・翌々日、特別支援教室に遊びにきたAさんにこう話しかけた。
私「3万円も払うなんて、大変なことになったんだって。」
Aさん「うん、おこずかいから出した。」
私「大変だったね。先生も、学校の物を壊すようなことをしたら、必死にやめさせるようにするし、Aさんも気をつけようね。」
・ところで、家庭で反抗的なわが子に手を焼いている親は少なくないはずだ。そんな親のために、きっと大変役立つであろう本を紹介する。
『ADHDのペアレントトレーニングーむずかしい子にやさしい子育てー』という本である。著者のシンシア・ウイッタムは、アメリカ、UCLA神経精神医学研究所スタッフ。クリニカル・ソーシャル・ワーカーである。
訳者あとがきには、次のように書いてある。
「まったくのところ、子どもはわがままで、寄るとさわるとけんか騒ぎ、うるさくて、汚しやでもんくばかりいい、叱れば泣く、わめく、すねるetc.手に負えない存在です。日頃家族の中でバトルが繰り返されている家族の生活を少しでも平和的に過ごせるように、は私たちの願いであります。
さてこの訳本の原題は、”Win the Whining War & Other Skirmishes" であり、副題として”family peace plan"「ファミリー・ピースプラン」とつけられているのがなんとも嬉しいではありませんか。本書は特にADHDの子どもをもつ親を対象に書かれたものではありませんが、日々しつけに困難しているADHDをもつ子の親にはたいへん参考になると思い翻訳にとりかかりました。
お読みいただいておわかりのように、親をはじめ子どもたちのまわりにいる大人にとって扱いにくい、育てにくい子どもたちがより好ましい行動がとれるように、そして好ましい行動をふやすように具体的な対処の仕方が順を追って構成されています。……」
つまり、ADHDばかりでなく扱いにくい子どもへの具体的対処法が載っている本なのである。ここに紹介されている方法は、学校現場においても、扱いにくい子どもに対応するうえで、大変有効な方法である。
わが子とよくバトルしている家庭はもちろん、わが子の対応に手を焼いている親たちに私は強く推薦したい。
読んで学べるADHDのペアレントトレーニング
ショップ: 楽天ブックス
価格: 1,890 円
2009.11.5 窓ガラスを割った反抗挑戦性障害のAさんへの対応 その3 第662号(ここをクリック)
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【前々号及び前号のあらまし】
反抗挑戦性障害のAさんは、(特別支援学級にいる)亀を見たいのに、「5時間目の学習が始まったからダメ」と、私に断られ、大荒れした。
箇条書きに再録すると……
①教室の戸を何度も激しく叩く。
②「開けろ!」と大声を何度も上げる。
③○年生教室の、廊下に飾ってある粘土作品を壊し、欄間から投げつける。
④グランドへ出て、そこから2階にある特別支援教室に向かって石を投げ、厚~い窓ガラスを割った。
⑤ 特別支援学級で学習していたCさんが、そのガラスの破片でケガをした。
⑥迷惑放送(全校に大きな声で関係のない放送をする)をしそうになるが、指導員さんが止める。
⑦クールダウンさせようとするも、脱走。教務室にあった、収穫したばかりのお米をばらまく。
⑧指導員さんが捕まえようとするも、卓球台を倒し、外を逃げ回る。
午後2時以降に限っても、これだけ大荒れした。
そして、午後3時半、Aさんのお母さんが来た。
校長先生は不在。教頭先生は、私に保護者の対応を任せるという。
さあ、一体どう対応したらよいのか!!
校長室には、既にAさんのお母さんが待っている。
じっくりと考えている時間はないのである。(前号より)
教室の窓ガラスは割れ、その破片でケガをした子供もいる。
しかも、当の本人は「先生が悪い。」と言う。
読者のみなさんなら、どう対応しますか?
(すぐに先を読まないで、3分ほど考えてみてください。)
この後、Aさんの母親と面談し、結論として次のように対応することとなった。(詳しくは前号を参照のこと)
① Aさんのお小遣いから3万円を弁償する形で、明日夕方お母さんが本人を連れて謝りに来ること。
②ガラスの破片でケガをしたCさんに、今日、お母さんが本人を連れて謝りに行くこと。
【翌日の対応】
翌朝、さっそく□年生の教室へ行き、粘土作品を壊したことを謝らせた。
(本来担任の仕事であるが、担任の言うことを聞かないのだから、私が指導した。)
ガラスの破片でケガをしたCさんに聞くと、昨夜、Aさんは、お母さんと一緒に謝りに来たという。
あと最大の問題は、ガラス代3万円の弁償である。
私は、この日の午後出張だったので、その後の様子は、校長先生から聞くこととなった。
お昼休みに、昨日の段取りでよいかどうか、お母さんから確認の電話が入ったそうだ。
そして、校長がその通りでよいと答えた。
午後6時、母親がAさんを連れて校長室に来られた。
Aさんが、3万円の入った封筒を、謝罪の言葉とともに、校長先生に差し出した。
校長先生は、3万円の入った封筒を受け取り、1枚ずつ紙幣を数え、確認したそうだ。そして、
校長「壊すと弁償しなくちゃいけなくなるんだから、やっちゃだめなんだよ。」
と言ったそうである。(3万円は、Aさんに知られないよう、後で親に返金した。)
かくて、学校側とお母さんが協力して、「責任を取る」ということを、Aさんに学ばせることができた。
【Aさんの変容】
その後のAさんの変容であるが、急激に問題行動がなくなるなどということは、もちろんない。
しかし、問題行動の歯止めにはなっている。
○ 家庭科室にあったはさみで、たわしを切っていたAさんを見つけ、
私「これ以上切ると、また弁償してもらうよ。」
と言うと、Aさんはたわしを切るのをぴたりと止めた。
○ 同様に、フライ返しをチャンバラのように使っているのを見つけ、
私「壊したら、また弁償だよ。」
と言うと、Aさんはぴたりと止め、元の場所に片づけた。
○ その後、5時間目が始まると、Aさんは、授業の邪魔をしに来ることはなかった。
もし責任をとらせるという一貫した対応をしなかったら、Aさんの問題行動を止めることは、むずかしくなっていただろう。
問題行動をなくすことはできない。しかし、その後に適切な対応を取ることで、問題行動を減らすことはできる。
問題行動は、指導のチャンスなのであり、子供を成長させるよい機会なのである!
【関連記事】あったかい家族日記 「家族の広場」
子供が学校で故意にモノを壊したら……
特別支援学級で子供は成長する! 590号
nice!を戴くことは、とても励みになっています。よかったらnice!をお願いします。
◆キーワード:1 保護者への対応 2 反抗挑戦性障害 3 問題行動
◆留意点・その他:
・翌々日、特別支援教室に遊びにきたAさんにこう話しかけた。
私「3万円も払うなんて、大変なことになったんだって。」
Aさん「うん、おこずかいから出した。」
私「大変だったね。先生も、学校の物を壊すようなことをしたら、必死にやめさせるようにするし、Aさんも気をつけようね。」
・ところで、家庭で反抗的なわが子に手を焼いている親は少なくないはずだ。そんな親のために、きっと大変役立つであろう本を紹介する。
『ADHDのペアレントトレーニングーむずかしい子にやさしい子育てー』という本である。著者のシンシア・ウイッタムは、アメリカ、UCLA神経精神医学研究所スタッフ。クリニカル・ソーシャル・ワーカーである。
訳者あとがきには、次のように書いてある。
「まったくのところ、子どもはわがままで、寄るとさわるとけんか騒ぎ、うるさくて、汚しやでもんくばかりいい、叱れば泣く、わめく、すねるetc.手に負えない存在です。日頃家族の中でバトルが繰り返されている家族の生活を少しでも平和的に過ごせるように、は私たちの願いであります。
さてこの訳本の原題は、”Win the Whining War & Other Skirmishes" であり、副題として”family peace plan"「ファミリー・ピースプラン」とつけられているのがなんとも嬉しいではありませんか。本書は特にADHDの子どもをもつ親を対象に書かれたものではありませんが、日々しつけに困難しているADHDをもつ子の親にはたいへん参考になると思い翻訳にとりかかりました。
お読みいただいておわかりのように、親をはじめ子どもたちのまわりにいる大人にとって扱いにくい、育てにくい子どもたちがより好ましい行動がとれるように、そして好ましい行動をふやすように具体的な対処の仕方が順を追って構成されています。……」
つまり、ADHDばかりでなく扱いにくい子どもへの具体的対処法が載っている本なのである。ここに紹介されている方法は、学校現場においても、扱いにくい子どもに対応するうえで、大変有効な方法である。
わが子とよくバトルしている家庭はもちろん、わが子の対応に手を焼いている親たちに私は強く推薦したい。
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