goo blog サービス終了のお知らせ 

晴れときどき・・・

旧街道あるき、古戦場巡り、城攻め、図書館通いの4本立ての日々を綴ります。。

The Best of Heroine in 源氏物語 2

2013-01-19 07:29:47 | 源氏物語
 光源氏は終生、紫の上をナめてました。
何しろ、自分が子供の頃から引き取って育てたという自負が
ありますし、そもそも藤壺の女御の代替品なのですから。
どこか軽んじているし、逆に甘え過ぎている処もあります。

 この人、恋愛を沢山しているくせに、
女の怖さを判ってないフシがあります。

 紫の上はその生涯で、三度の愛の苦難に立ち向かいます。

 一度目は光源氏が須磨流拓中に「明石の上」に手ぇ付けた時です。
つまり単身赴任中の夫が赴任先で浮気して子供まで作ったって話です。
しかも、源氏は政争に破れ不遇をかこっての須磨行きでしたので、
一人で泣く泣く耐えていたのに、酷い裏切りなんです。
しかも、生まれた子供は「あなたが育ててねー」っと連れてくる・・・。

 二度目は、須磨から帰還し、いよいよ源氏の栄華が始まる頃、
六条院の御殿も完成し、源氏の浮気癖も落ち着いてきた時に
持ち上がった「朝顔の斎院」との結婚話です。
「朝顔の斎院」は源氏と同い年。
実際何かがあった訳ではないのだけれど、
彼らは青春の記憶を共有しているのです。
これは幼な妻の紫の上からすると心穏やかではありません。

 そして三度目は、女三宮降嫁事件です。
幼な妻だった紫の上もそろそろ中年というお年頃に
差掛かろうというときに、選りによって、
若くて高貴な女性と源氏が正式に結婚してしまいます。
長年、公私共に「源氏の妻」として扱われてきましたが、
紫の上とは正式な婚姻関係ではなかったのです。
その彼女にとって一番痛いところを突かれてしまったのですね。

 これは堪えました。
紫の上は病がちになり、起きられなくなってしまいます。
それでも、源氏は「あなたほど幸せな人生はありませんよ」なんて事を
ぬけぬけと言ったりします。

 私はこのときの紫の上の「さはみずからの祈りなりける」という返答に
大変な衝撃を受けました。

 極訳すれば、「悲しみだけが友達でした」

「雀の子を犬君が逃がしつる」と泣きながら走り出てきた
無邪気な女の子が、恋をして、愛を知って、
そして失望して、最後は愛した人にそう告げるのです。

 着物の柄にしても、香合わせのセンスにしても、
現代的で華やかなものが好きだった人でした。
命が萌え出る春が大好きだったその人が、出家を望んだのです。
そこに彼女の悲しみの深さと絶望の大きさが読み取れます。

 「出家するなんて絶対やだ!」と慌てる源氏は、
彼女に死なれて初めてその存在の大きさに気がつくのです。
何もかも遅いのです。

いやぁ紫式部、意地悪です。

The Best of Heroine in 源氏物語 1

2013-01-18 07:29:53 | 源氏物語
 源氏物語をはじめて手にしてからもう30年以上経ちます。
これだけ何回もしつこく読み返す小説は他に、ないです。

 しかも年とともに好きな登場人物に変化があったりして
毎回読み返す度に新鮮な気持ちになれますです。

 そこでちょっと次に読み返すときの為に
現時点での私が好きな女君について書いておこうかしらんと
思い立ちました。

 ベスト10とか書いて10人書けなったら情けないので
そこら辺は適当で終わらせていただきますので悪しからず・・・。

 で、栄えある第一回、
つまり40代後半時点でのベストヒロインですが、
これは、文句なしにこの人「六条御息所」です。

 この方は主人公光源氏のパパ、「桐壺帝」の弟のお嫁さんでした。
女の子を一人産みましたが、その後死別。
有り余る経済力をバックにして、美しく、、教養高く、
未亡人生活を満喫しておりました。

 当時、貴族の青年達の間では、彼女の御殿がある六条へ文を送ったり、
ご機嫌伺いに詣でるのが、流行の最先端だったわけです。
所謂ここが彼女の「モテ期」でした。
上手に寄って来る男性を捌き、サロンの女王でした。

 それなのに、あぁそれなのに、彼女の心へ土足で踏み込む
向う見ずな年下の男性が現われます。
おそらく彼女は「恋愛ごっこ」は上手だったけど、
本当に恋をした事がなかったのでしょう。

 「光源氏」が凄いのは彼はいつも本気で恋愛ができる
超・恋愛体質の持ち主だってことです。
目の前にいる女性の事が、目の前にいる間は本気で大好きなのです。
「六条御息所」と出会った若い頃は特にその傾向が顕著です。
馬鹿かってぐらいに、迷いが、ない。

 だからこそ、絶頂期にあった「六条御息所」は
彼の直球勝負に敢無く陥落しちゃったんですね。

 好きになればなるほど、苦しくなります。
世の常とはいえ、彼には正妻がいる、
他にも沢山の女性の影がちらつく。
悩んで、悩んで、思い詰めても、
どうしても彼を嫌いになれない自分(涙)

 心はいつしか身体を離れて彷徨い出します。

 源氏は、内心「キモ~っ」とか思うくせに、
いよいよ彼女が彼を断ち切ろうとすると、
未練たっぷりに会いに行っちゃう。
それでまた懊悩は深くなるばかりの、生き地獄・・・。

 御息所が伊勢へ下る辺りから亡くなるまでのくだりは
若い頃は、なんて未練がましい中年女だと飛ばし読みとか
しておりましたが、年齢を重ねるに従って、その切なさ辛さに
気持ちが寄添うようになりました。

「決して娘に手ぇ出すなよ」という御息所の遺言を
スレスレで守っちゃう源氏に救われる気がして、
読者を見据えて書いている、
紫式部ってやっぱ凄いです。