エレキの若大将

若大将シリーズレビューも第6作目。
おそらく一番知名度が高いと思われる【エレキの若大将】。

とにかくこの作品は前半のエレキ合戦の部分が非常に勢いがあっていいんだよね～。
当時はビートルズやベンチャーズなどのブームで、エレキギターが若い人たちの憧れだったんだろうなぁと思わせてくれる作りになってる。
そのブームを加山雄三がこの映画で後押しした形になってるんだろうね。
で、そのエレキ合戦だけど、若大将バンドのメンバーがスゲぇ。
加山若大将、田中青大将に加え、エレキの神様寺内タケシ、初期ランチャーズドラムスの二瓶正也(若大将シリーズでは常連だけど)、そして黒沢年男！
ま～黒沢年男はちゃんと弾けてないけどね。でもこの顔ぶれはホントに凄いと思うよ。
あと曲ね。
【ブラック・サンド・ビーチ】と【夜空の星】。
【ブラック・サンド・ビーチ】は、コレ本当に60年代の曲か？って思わせるほどの勢いを持った曲だし、【夜空の星】は加山ナンバーの中では個人的に一番のお気に入りの曲だし。
この時代にこれだけの曲を作れたってことは、加山雄三が国外の音楽シーンをきっちり研究していたっていう証でもあるんじゃないかな？
それに寺内タケシの編曲の腕もあって、当時の歌謡界とは一線を画した曲に仕上がってると思う。


【ブラック・サンド・ビーチ】演奏中の石山新次郎とヤングビーツ。
でも、黒沢年男のギターの持ち方があからさまにおかしいと思うんだけど。





この作品で一番好きなシーン。
ジェリー藤尾に脅された青大将が大ポカをカマすんだけど、それをフォローするかのようにいきなり若大将が歌いだす！
ココのシーン、マジでかっこいいよ。
さすが若大将！って言いたくなるくらいに。
でもよく考えたら、エレキ合戦なのに歌を歌っちゃうってのは反則ですな。





寺内タケシも本領発揮！
ギター演奏の部分だけなら、完全に若大将を食っちゃってるね。




前半部のエレキ合戦が勢いで勝負なら、後半部はムードで勝負…なのか？(笑)
この作品でついに加山雄三の代名詞ともいえる曲【君といつまでも】が登場するんだけど、そのシーンがちょっと…ねぇ。
コレについては加山雄三本人も語っていたことなんだけど、チョット唐突な展開だなぁって思っちゃう。
いい感じのムードを出そうとしてのことなのかもしれないけど、やっぱおかしいよ、って突っ込まれるよな～これじゃ。


雄一：「澄子さんのことを考えながら作った曲があるんだ。聴いてくれる？」
と言ってるシーン。
周りには人も結構いるところなんだけど、(次に続く)





歌い始めたら場面が変わって、いきなり二人だけの世界だし。(笑)
しかも【澄子さんのことを考えながら作った曲があるんだ。聴いてくれる？】と言ってる以上、初めて聴かせるはずなのに、デュエットしてるってやっぱり変だよな～。
この場面については加山本人も納得出来ずに監督と相当モメたらしいけど、監督の「コレは映画なんだから」の一言で強引にすすめられたらしい。
そのせいなのか、怒ってるような表情に見えるね。
直前のシーンの顔と比較すると、とても繋がってる場面とは思えんよ。




ストーリー上のことで、この作品は他のシリーズ作品とは決定的な違いがひとつある。
それは、若大将の実家のすきやき屋【田能久】が一度倒産してしまうこと。
そして若大将が【君といつまでも】をレコードリリースしてその売り上げで【田能久】を再建する、というストーリーになっているんだけど、これがなかなか興味深い。
何故かというと、このストーリーが加山雄三の今後の人生を暗示しているかのように思えるから。
加山雄三は若大将シリーズが終了したあたりで多額の負債を抱えることになるんだけど(茅ヶ崎パシフィック倒産の件ね)、その負債を自己の芸能活動によって完済してしまうわけ。
この展開がすげぇ似てるな～って。
もちろん当人はそんなことになるなんて夢にも思ってなかっただろうけど。


雄一：「このレコードが売れたおかげで、田能久を再建することができました。」
と言って、【君といつまでも】を歌い始めようとする、エンディングでのシーン。
でもホントにそんな状況が本人にも訪れるなんて…ねぇ。




突っ込みどころが満載な作品なので今回は澄ちゃんのこととか、スーパー若大将モード全開のスポーツ大会のこととか(今回はアメラグ)に触れなかったけど、そのあたりも他のシリーズ同様に良い味を出してるんでご心配なく。
山ん中で歌うところを除けば(笑)、うまく仕上がってる作品だと思うよ。
見る側も「コレは映画なんだから」と思ってみればおk。
ウエーハッハッハ　ウエーハッハッハ　ウエーハッハッハ