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第Ⅶ章 各部の納め1:屋根 1.屋根の役割       

2022-11-14 16:46:37 | 同:屋根

                 

                (2022.11.14 21時  PDF9頁(123頁)、図「①準耐火45分」の図の軒先と野地板無垢材表記をはずしました。)

                (2022.11.15 10時  PDF6頁(120頁) 表「防火地域」の階数・面積にミスがありました。「2≦階数、100㎡<延面積の場合」)                   

Ⅷ 各部の納め1:屋根

1.屋根の役割

木造軸組工法は、木造軸部の建て方終了後、直ちに屋根を架ける点に特徴がある。

これは、年間を通して多雨の日本に向いた工法である。

2×4工法ログハウス組積工法では、壁・床下地の施工が先行する。床下地の先行は、作業足場が確保できる点で、施工上軸組工法より有利ではあるが、屋根工事が最後になるため、その間の雨に対する養生が必要になる。

 

屋根の役割 1.降雨への対応(屋内への雨水の侵入防止軒の出による外壁への雨の吹付け防止

      2.環境形成(視覚効果による建物まわりの環境形成:家並み・街並みの形成上、重要な役割を持つ)。なお、地域によっては、防火:延焼防止の対策が要求される。

1)降雨への対応

  屋根設計の基本的な留意事項:水(雨水)の性質に逆らわないこと。

  雨水の性質 1.上から下へ流れる、ただし、毛細管現象の生じる場所では上にも流れる。

        2.風の強い所では、風圧で逆流し吹き上がる。

  屋根形状、勾配、軒の出は、建設地の風雨の状況建物用途、使用屋根葺き材によって異なる。

 

  例1 瓦屋根寺院建築では、当初(奈良時代)は、降雨量の少ない中国建築の緩い屋根勾配にならっていたが、順次わが国の降雨に見合う勾配に変わる。見えがかりの点も考慮されたようである。

唐招提寺 金堂(奈良市、奈良時代・八世紀後半創建) 鎌倉時代に、屋根勾配を変更したのではないかと推定されている。

当初推定建物正面図(左)と 現状(右) 図は共に奈良六大寺大観 唐招提寺一 浅野清氏(岩波書店)より              

現在の唐招提寺 金堂 古建築入門(岩波書店)より

(奈良時代の緩い屋根勾配の事例:新薬師寺本堂 古建築入門(岩波書店)より

 

 

  例2 茅葺き屋根は、材料の性質上、緩い勾配は不可能である。また、寄棟屋根が多い。寄棟屋根は、雨のあたる外壁面を少なくできる。 

椎名家(茨城県かすみがうら市) 図は日本の民家1 農家Ⅰ( 学研)より 文字・着彩は編集によります。

 

 

  例3 金属板が普及する以前、風の強い地域では、風下側の吹き上りを防ぐため、3寸5分程度の緩い勾配の板葺屋根多い(釘が貴重品であったため、石を置いて葺き材を固定)。

渡邉家(新潟県岩船郡関川村) 正面図 日本の民家5 町屋Ⅰ、 同背面屋根・石置屋根詳細 日本の民家2 農家Ⅱ(学研)より 

  

 

  例4 土塗壁を表しにする場合、風雨から外壁を保護するために、軒の出を大きくし深い軒を造る工夫がされる。

     肘木出組二重垂木出桁   →時代が下ると、本来の目的をはなれて、格のシンボルとなる例が現れる。

〈寺院建築の「軒の出」の変遷〉  図は日本建築史図集1989年版(彰国社)より  

a法隆寺東室(ひがしむろ)8世紀奈良時代)  奈良県生駒郡斑鳩町いかるがちょう     

 組物がなく、(垂木だけの最も簡単な軒。一軒ひとのきと呼ぶ。

  奈良六大寺大観 法隆寺1(岩波書店)より

b法隆寺伝法堂(でんぽうどう)8世紀奈良時代) 

 地垂木(ぢだるき)先端に木負(きおい)を渡し、飛燕垂木(ひえんだるき)を掛ける。二軒(ふたのき)と呼ぶ。

  奈良六大寺大観 法隆寺5(岩波書店)より

c法隆寺東院(とういん)礼堂(れいどう)1231年鎌倉前期

 二軒(ふたのき)だが、外から見える地垂木・飛燕垂木化粧材。桔木(はねぎ)上に束立で掛けた野垂(のだるき)屋根面を支える。二軒 時代が下がると、化粧の地垂木・飛燕垂木は細身になる。  図中の文字「野垂木」は編集によります。 奈良六大寺大観 法隆寺5(岩波書店)より          

       

 

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