1)降雨への対応
例4 土塗壁を表しにする場合、風雨から外壁を保護するために、軒の出を大きくし、深い軒を造る工夫がされる。
〈出桁(だしげた):梁又は腕木を持ち出してその先端に桁を渡して垂木を受け、軒天井を張る。せいがい造り、せがい造りとも呼ばれる。〉 写真・図は滅び行く民家 屋根・外観(主婦と生活社)より
▼栃木県郡芳賀郡益子町 農家 厚く葺いた茅や雪の重みに耐えるためと軒先の造りを豪華にみせるため、大戸口の上部は二重せがい構えとなっている。
▼群馬県吾妻郡長野原町 養蚕農家 2階を十二分に活用するために通路は屋外に張り出して造る。その上部の軒もせがい造りとなっている。
▼長野県諏訪地方(寒冷高地)農家 1間半の軒は、壁の保護と共に、収穫物の霜除けの場を確保する。図中の文字は編集によります。
付録 せがい造り(はね出し2階)
・富沢家 養蚕農家(群馬県吾妻郡中之条町 1790年:寛政2年)
外観 日本の美術№287(至文堂)より
養蚕農家で、広い土間・馬屋・ゆか上5室からなり、2階はほぼ全面を蚕室にあてる。蚕室の通路を屋外に設け、2階床梁を1階柱通りからはね出し、せがい造りとしている。
平面・正面出桁・断面詳細図 日本の民家2 農家Ⅱ(学研)より
・中山道木曽路 奈良井(ならい)宿(長野県塩尻市奈良井)
中部地方や近畿の町屋や宿場に多い切妻平入り(ひらいり)の家では、人の目線を考慮して、2階を出桁とし軒天井を貼る家が多い。
奈良井宿の町並み 日本の美術№287(至文堂)より
中村家正面 中村家では、猿頭(さるがしら)付きの板庇を吊る。 日本の美術№167(至文堂)より
中村家・手塚家 断面 2階床と軒先に出桁が用いられている。 図は日本の民家5 町家Ⅰ(学研)より▶
例5 防火を重視する土蔵では、軒下部分からの延焼を考慮し、また軒下部の塗籠(ぬりごめ)(土を塗り込む)の施工の難しさから、一般に軒の出は少ない。
西川家(滋賀県近江八幡市)の土蔵の軒と屋根の仕様
屋根本瓦葺下拵(したごしら)えの工法(部分)
土壁詳細
屋根・軒廻り
図・写真は重要文化財 旧西川家住宅(主屋・土蔵)修理工事報告書(滋賀県)より