見出し画像

gooブログのテーマ探し!

おまけのおまけ イギリス「王室の性モラル」

 「王室の性モラル」 一部引用編集簡略版

  もちろん、多くのイギリス人が王室を誇りにしている。王室は基本的によいものであり、イギリス社会に形と安定をもたらし、国に品格を与えていると考えている。たしかにチャールズ皇太子とダイアナ妃だけではなく、アンドリュー王子、アン王女の離婚や不倫騒ぎは、一過性のものかもしれないが、王室を深く傷つけた。
  イギリスにはつねに王制廃止論者が存在してきた。イギリスでは公に王制を廃止することを主張することに対して、タブーが全く存在していない。それだけ人々のあいだに、民主主義がしっかりと根を降ろしているのだ。
  しかし、王制を廃止して共和国に改めようと主張する者は、ほとんどの場合、自分へ向けるべきである個人的な不満を王制へ向けている。その証拠に右であれ左であれ、人生に成功している者から、このような声を聞くことはめったにない。

  今日、イギリスの女王は政府に対して「意見を聞く、警告する、励ます」という三つの役割しかもっていない。いまやヨーロッパの立憲君主制度のもとの国王は、ハンカチ意外に鼻を突っこむことを許されないというが、もちろんイギリスもそうである。

  このところイギリスの王室は、スキャンダルにまみれている。チャールズ皇太子は昔の恋人と不倫を楽しんできた。ダイアナ妃は生前、テレビに出演して不倫を働いたことを認めたし、恋人と自動車電話で愛を囁いているやりとりを録音されてしまった。アン王女は再婚したし、アンドリュー王子のセーラー妃も、恋人ができたうえで別居した。
  しかし、イギリスの王家の性モラルが紊乱(びんらん:みだれること)しているのは、王家の本来の姿に戻ったということだ。いったい王家の人々が中産階級の人々と同じような退屈きわまりない生活を送っているのが、自然な姿なのだろうか。

  イギリス王家の紋章には、「ゴッド・アンド・ライト」(神とわが権力)という言葉が刻まれているが、王権神授説に因るもので、王や王家の人々はどのようにわがままに振る舞ってもよいというものだ。チャールズ皇太子の先祖の王や王族は贅沢三昧を楽しみ、勝手気ままに生きたものだった。
  歴代の王や、女王はみな似たようなものだ。イギリスの現在の女王はエリザベス二世だが、エリザベス一世(在位1558~1603年)は生涯独身で通したものの、愛人のエセックス伯爵を処刑している。

  イギリス王家が中産階級の模倣をするようになったのは、ビクトリア女王(在位1837~1901年)の治世に入ってからだ。産業革命が進んだおかげで、中産階級が出現しただけではなく、マルクスをはじめとする物騒な過激主義者が跳梁(ちょうりょう)するようになったからだった。女王が没して17年後に、ビクトリアの従弟のニコライ二世がロシア革命によって殺された。
  ビクトリア女王は質素な生活を重んじた。しかし、広大な贅を尽くした宮殿のなかで、ハンカチ一枚や下着一着を節約するというのは、なんと偽善的なことだろうか。紋章にはライオンがあしらわれているが、百獣の王であるライオンが兎や鼠の真似をすることはないのだ。

  現在のエリザベス女王の代まで、中産階級の道徳律が守られてきた。いま、チャールズ皇太子をはじめとする子の世代が、王者や王族らしく堂々と振る舞うようになっているのである。
  もっとも、王族のスキャンダルはマスコミが発達するようになったことから、外に知られるようになった。それに1970年代に性の解放が進むようになった結果、鍵穴から覗く”キーホール・ジャーナリズムが登場するようになったからである。

参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
 加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「伝統国家イギリス」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事