モグリッチョのフィールドノート

八丈島の自然などを紹介しています。

オザキヒシガニ

2024年06月12日 | 甲殻類

学名:Parthenope ozakii

 

 甲は“おにぎり”のような三角形をしており、甲幅:10mmほどで体の厚みは薄く、はさみ脚が長く発達しています。眼の中間後方に棘のように先端部が尖った突起があるのが特徴的です。カラーフォームは白地にピンク色の模様がありますが、白一色或いはピンク一色の個体もいるようです。

 種小名の “ozakii” は、郷土生物研究家/尾崎 光之助氏への献上名なのかな?

 ウミウシを探している際にたまに見かけるのですが、夜行性で日中は転石の下などに隠れていることが多いようです。この日は曇天で透明度も良くなく、海中が薄暗かったため徘徊していたのかも知れません。

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カクレモエビ属の仲間

2023年09月08日 | 甲殻類

学名:Alcyonohippolyte sp.

 

 体長:10mmほどで「ずんぐりむっくり」した体形をしており、脚部にはキノコ状の小さな突起が確認できます(投稿画像1,2段目は同一個体で、3段目はその脚部をトリミングしたものです)。イワスナギンチャクと共生しており両者ともにコンニャクのようなカラー・フォームで、エビの腰の部分にある焦茶色の模様はスナギンチャクの触手とそっくりです。

 投稿画像4段目の個体は体長:5mmほど。前者よりも体高が低くやや扁平な感じで、カラー・フォームはほぼ同じですが腰の焦茶色の模様が確認できません。脚部には先端部が球状の小さな突起が沢山確認できます(投稿画像5段目は4段目の個体脚部をトリミングしたものです)。前者とは体形,カラー・フォーム,脚部突起の形状に差異があるため、これは新たな未記載種!かとも思ったのですが、他種においても成長過程や個体間で差異が認められるものもあるため、結局のところ前者と後者は同一種であるという判断に至りました。これ等のエビはまだ未記載種であり別種となる可能性も残っているため、今後どうなるのかが楽しみでもあります。

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ベンケイガニ

2020年07月23日 | 甲殻類
学名: Sesarmops intermedium
 
 
 
 甲幅は3cm 程で、7月の夜に八重根漁港で移動中のものを確認しました。体全体が濡れており抱卵はしていなかったようなので、恐らくは海中に放卵後、巣穴に帰る途中の雌の個体だったのかも知れません。

 アカテガニによく似ていますが、眼竚纒福フ甲羅の縁に棘状突起(この突起を“歯”と呼ぶそうです)が1つ(青矢印)確認できることより、ベンケイガニと同定しました。海岸付近や河口付近の巣穴に生息する陸生のカニで、食性は雑食、夜行性で夜間、活発に活動するようです。脚には細く真直ぐな毛が生えており、これは陸上生活で獲得した触覚器官の一つなのかもしれません。同様なものは同じ陸生のカニのカクレイワガニでも確認できます。
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イソギンチャクモエビ

2019年08月26日 | 甲殻類
学名: Thor amboinensis
 
 
 体長:20cm 程、八丈島でもよく見かけるエビの仲間で、触手に刺胞細胞を持ったイソギンチャクと共生することで天敵から身を守っています。アンバーオレンジの体に白色の複眼と斑紋が独特なカラー・フォーム。体を「しゃちほこ」状に反って尾をピコピコと振る姿は何ともユーモラスで愛らしく、見ているだけで心癒されます。このカラー・フォームと仕草から観賞用としても人気があるようです。
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カクレイワガニ

2010年07月26日 | 甲殻類
学名: Geograpsus grayi
 
 
 
 乙千代ヶ浜トイレの海側にあるコンクリート製の大きな波除けの内側で確認しました。最初はイワガニかとも思ったのですが、よく確認すると八丈島に生息する数少ない陸生の“カクレイワガニ”で、既に命つき果てており体が乾燥しはじめていました。ちなみに八丈島ではこのカニは“オカガニ”という地方名で呼ばれていますが、現在では残念ながら地元の者でさえもこのカニの存在すら知らないという人が大多数なのが現実なのであります。海岸近くの石垣などに棲み夜行性なので人目につきにくい、というのも存在を忘れられる一要因なのかな?

 腹部を確認すると雌で沢山の卵を抱卵しており、産卵に海へ向かう途中だったようです。大きなコンクリート壁に進路を阻まれ帰る道も見失ってしまい、容赦なく照りつける真夏の直射日光とコンクリートの放射熱の灼熱地獄の中で、事切れてしまったのでしょうね。“行くも地獄、戻るも地獄”なのでありますよ…合掌。

 今更ながらに思うのですが “開発と自然保護” なかなか難しい問題でありますな。
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カナガメ

2007年08月27日 | 甲殻類
学名: Coenobita rugosus
 
 
 カナガメと言っても亀の仲間ではありませんよ。八丈島の方言でヤドカリの仲間のことをそう呼び、特にオカヤドカリの仲間の体色が青色から紫色の個体を青大将、白色の個体を白大将、赤みが差している個体を赤大将と体色によって呼び分けもします。投稿画像の個体はナキオカヤドカリではないかと思われます。

 陸生のオカヤドカリの仲間は海岸沿いに生息し、波打際で産卵して幼生は海中で成長し陸に戻って来て、体に合った小さな貝殻を背負って陸上生活を送るようになります。雑食性で海岸に打ち上げられた魚などの動物性のものからキャベツやキュウリなどの植物性のものまで何でも食べます。はさみ脚の指部(実際にものを挟む部分)は以外に小さいのですが、小さい分そこに力が集中するのか?挟まれるとペンチで挟まれたようで想像を絶する痛さです。しかもちょっとやそっとでは放してくれません。この強情さには閉口させられてしまいますよ。私もガキンチョの時によく挟まれましたhorori

 体に合った適当な貝殻が見つからなかった時は、洗剤の容器などのプラスチック製のキャップを背負っている個体も見かけます。この個体は貝殻ではなくカメノテの胴体部?を背負っており、まるで毛糸の帽子を被っているようです。そこから覗かせている愛嬌のある眼はこちらをうかがっているようで、それがまた何とも可愛らしいのであります。

 これらオカヤドカリの仲間は天然記念物に指定されてるから、捕って持ち帰っては駄目よ! その場で観察する程度にしてね。
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カメノテ

2006年12月21日 | 甲殻類
学名: Pollicipes mitella
 
 
 一見、貝のように見えますが甲殻類の仲間だそうです。八丈島でも普通に潮間帯岩礁で確認することが出来ます。

 八丈島では味噌汁の具として利用されることが多く、その身から出るダシが絶品です。この味噌汁をつくる際に他の具材にもこだわると、より一層美味しいものが出来上がります。その具材とは玉葱とジャガイモのことで、玉葱で甘味をつけ、ジャガイモはカメノテのダシ汁と玉葱の甘味を染み込ませることで美味しくなります。他の調理法には酒蒸しや網焼きなどがあり、どれも絶品です。

 以前、八丈島ではホテルや民宿などで宿泊客に食材としてカメノテを出していた時期があり、大量にカメノテがとられて数が激減したそうです。後先のことは考えず、目先の現金のためであれば根こそぎとってしまう。何事もほどほどが1番! そーありたいものですな。お互いに…。
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クリアクリーナーシュリンプ

2006年05月11日 | 甲殻類
学名: Urocaridella antonbrunii
 
 
 テナガエビ科ソリハシコモンエビ属の仲間で和名はまだついていないようです。体長:30mmほどで、「海の甲殻類」によると体表の赤班の数が、ソリハシコモンエビとベンテンコモンエビの中間であるとのことです。また、他のクリーナーシュリンプ同様、魚類をクリーニングするとこでも有名です。

 このエビは複数個体が同じ場所にいることが多く、そっと近づいて手を差し伸べるとヘリコプターのように泳いできて手の上にのり、クリーニングをしてくれます。野生生物が人間を恐れずに接してくれるのは、めったにないことなので嬉しくなってしまいます。

 そーいやぁ幼い頃、海に泳ぎに行って潮溜りに足を浸けていると、イソスジエビが足の角質を食べていました。それが少しくすぐったくて面白く、じーっと観察していた記憶が蘇ってきましたよyellow3
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ヒラテテナガエビ

2005年09月06日 | 甲殻類
学名: Macrobrachium japonicum
 
 
 はさみに剛毛が密生していないなどのことからミナミテナガエビと同定していましたが、たもしまさんのご指摘により、ヒラテテナガエビと同定し直しました。この個体は体長:80mmほどと大きく、八丈島では最大の淡水産のエビの仲間になります(アメリカザリガニは除く)。抱卵していることとハサミ脚が短いことより雌であることが分かります。左側のハサミ脚は欠損していました。

 この卵から孵った幼生たちが海から遡上して子孫を増やしていけるよう、この先もずっとよい自然環境を維持していきたいものです。護岸工事等による環境の変化(ある程度の工事は必要でだと思われますが、自然環境に配慮した工事をお願いしたいものです。予算等の問題もあってなかなか大変でしょうが…)、生活廃水などによる水質の悪化等にも配慮が必要です。

 撮影終了後、彼女には元いた場所へ戻って頂きました。お疲れ様でした。
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モクズガニ

2005年07月29日 | 甲殻類
学名: Eriocheir japonica
 
 
 甲長:約6㎝ほどの八丈島では最大の淡水産のカニです。河口や汽水域あるいは海域で繁殖活動が行われ、孵化したゾエア幼生は海を漂いながら脱皮を繰り返しメガロウパ幼生となります。暫らくすると淡水生活に耐えられる体となって海から川などを通って淡水域を目指し遡上をはじめます。このように淡水域で成長して海で孵化し、ある程度成長し再び淡水域を目指して遡上する回遊を“降河回遊”というそうです。
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