本と映画とわたしと

感想です。

「ボブという名のストリート・キャット」を読んだ。

2015-02-16 | 
ホームレスで薬物依存、売れないストリートミュージシャンの若者ジェームズと野良の茶猫ボブのセカンドチャンスの物語。

ロンドンのストリートに現れる若者と猫の姿は人目を引き、人気が出て、この本が出版されるに至ったという。私はテレビ番組で2人(1人と1匹)を知り、猫のボブのかわいらしさに魅かれこの本を手に取った。
しかし、ボブの写真は紹介程度しか載っていなかった。ボブの本ではなく、ホームレスで薬物依存の若者が立ちなおる物語だった。
 
ボブとジェームズの友情の話が基礎となっているので、心があたたまり、どうぶつ好きの人におススメできる。
今の状況を打破しようとしている人にも勧めたい。とくに地味で自信を失くしている人は共感できるだろう。どん底まで落ち、将来に希望を持てなかったジェームズが成長していく姿は生きるヒントを与えてくれる。

ある日突然、ジェームズのところに、ノラ猫(ボブ)が助けを求めるかのように現れる。

その時、ジェームズは薬物依存から抜け出すため薬物更生プログラムを実行中で、全く前を向いてなかったというわけではないが、将来に希望が持てるよう状況ではなかった。その日暮らしで、薬物が完全に断ち切れる見通しも立ってない。自分のことで精いっぱい。
弱った猫が目の前に現れても面倒見るのは難しかった。でも猫をほおっておくことができず世話をする。

結果として、ボブと一緒にストリートに出ると注目を集め稼げるようになった。だからといって、どこからか幸運の猫が現れて、セカンドチャンスをくれて幸せになったという簡単な話ではない。ボブを養うということはジェームズにとっては大変なことだったからだ。ジェームズは不当な扱いを受けてもへこたれることなく、ボブを守り、ボブもまたジェームズを信じ支え続けた。無理をしたから状況が変わったのだと思う。

すべてに人に、無理をして頑張れとはいえない。ただ今の状況を変えたいのならやはり努力が必要なのだとこの本は教えてくれる。

ジェームズはボブと一緒にいることで明日を考えるようになり、クリスマスを想うようになり、母親のことを思いやったり、先のことを考えるようになる。
ボブという家族ができて、大切なことに気付く。
「今まで自分は、自分に対してのみの責任を負い、自分の面倒だけを見ていればよかった。自己中心的に日々を生き抜くことだけを考えていた」と。

ロンドンの路上で暮らしは、人間としての尊厳や自分らしさその他あらゆるものを剥ぎとられてしまうとジェームズは話す。
この本には、生きていればイヤなこともたくさんあるのだとちゃんと書かれている。
世の中、いい人ばかりではない。でも悪い人ばかりでもない。いざという時、周りの人は助けてくれない。けれどやっぱりいざという時、人に助けてもらうことが大切。助けてくれない人はたくさんいる。けれど助けてくれる人もいるからもっと安心して生きてもいい。ジェームズとボブの暮らしぶりの中でそんなことをたくさん感じた。
そして、やはり人は見た目が大切。
ボブといることでジェームズの印象が変わり、人とのかかわりが増え、人生を好転したともいえる。ジェームズが本来持っている中身は変わっていないのだけれど、これもまた真実だなあと思うのである。

本の売上で得た印税ほとんどは動物動物救済基金に寄付されている。「おカネはボブと暮らしていける分だけあれば十分さ。これからは、人を支えていけるような生き方がしたい」

ジェームズはホームレスになった原因を自分でこう分析している。
「幼年期の境遇や家族とのぎくしゃくした関係が遠縁となり、ホームレスへの道へたどってしまったのだろう」と。
そして、ホームレス生活での寒さと孤独を紛らわすために薬物に手を出し依存症になった。
しかしその子ども時代のことが遠縁となり、ジェームズをあたたかい人間にしたともいえる。
そして、ボブがジェームズを見つける。ボブはジェームズのあたたかさをを見抜いたにちがいない。

長くなった話をまとめると、

ボブとジェームズは最高のパートナーだ。
パートナーがいるだけで頑張れる。幸せになれる。

人間がパートナーとは限らない。