本と映画とわたしと

感想です。

映画「グリーンブック」/人はかなり大人になってからも変われる。

2019-03-30 | 映画

映画館観賞(ネタバレあり)

気持ちが良い。心が洗われて映画館を出た。

ナイトクラブの用心棒トニーはイタリア系で、粗野で無学だけど腕っ節が強くトラブルの解決能力がずば抜けている。一方著名なピアニストのドンは黒人で物静かで知的だけど人を寄せ付けない雰囲気がある。この二人のロードムービーだ。

大人になってからでも人は変われるんだなと信じられた。みんな仲良くできるよ。

 トニーは黒人が使ったコップをゴミ箱に捨てるような人間だが、黒人ピアニストの運転手を務めることになる。ドンはトニーのこれまでの仕事の成果を認めて良い条件を提示して雇った。お互いの利益が一致した仕事の関係のみで旅にでる。行き先は黒人差別が色濃く残る南部で、ドンは覚悟の上でコンサートツアーを決めた。下品な男と上品すぎる男の組み合わせではじめはうまくいかないけど心を通わせるようになる。お互い大人なので必要以上に立ち入らない。熱くなりすぎない。助けるべきところは助ける。それがよかった。

ケンタッキーフライドチキンで感動するとは思わなかった。

油で手がベトベトになるのを嫌がって食べなかったフライドチキンを トニーに勧められてドンが食べるところが最高だった。私も食べにくいから今まであんまり食べようと思わなかったけど、ドンみたいに気取らずに食べたくなった。ユーモアは心を救う。こちこちに堅くなった心をほぐす。おいしいものもね。

成功した黒人は白人の仲間にも黒人の仲間にも入れない。ドンの孤独を知ったトニーは「さみしい時には自分からドアをノックしなければいけない」と云う。簡単じゃないことを行動に移したドンに涙が出た。トニーの奥さんも素敵。

グリーンブックとは黒人用のホテルやレストランをまとめたガイドブッグのこと。

白人と黒人を分けることが親切だと思っているところに根深さが見える。観終わってしばらくして映画のあたたかさが冷めてきた頃、あんなにうまくいかない、もっと大変だったはずと思いはじめる。それでもこの作中のユーモアと人のやさしさを信じたい。心の大切なところに置いておきたい映画になった。

『ロード・オブ・ザ・リング』でアラゴルン役をしていたヴィゴ・モーテンセンはトニーの役作りのために20キロ増量したという。かっこいいアラゴルンの見る影もなかったのも笑いどころかな。さすがだ。マハシャーラ・アリもよかった。

 


映画「ニュースの真相」/プロデューサーの目から見た真相

2019-03-30 | 映画
お家観賞(ネタバレあり)

映画「キャロル」のケイト・ブランシェットは美しかった。女性としても母としても一人の人間としても素敵でファンになった。

彼女が主役なので、かっこいいできる女をおおいに期待をした。今回はCBSニュースのプロデューサー役である。なのに美しい彼女はいなかった。「おばさん」呼ばわりに多少なりとも納得させられた。役柄に専念して美しさを全面に出してないの素晴らしいのかもしれないが残念だった。

プロデューサーのメイブスはニュースで、ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑をスクープする。放送直後からネット上で客観的証拠のメモが信憑性にかけると糾弾される。

このメモ書きを提供したバーケットは、嘘をついたと証言する動画に出演させられる。バーネットの妻がメイブスに自分たちの保身ために病気の夫を苦しめたと言う場面に共感した。の感情のわだかまりがメイブスとの間に生じているのも事を歪めたのかもしれない。正義のためなら何でも許されるわけではなく、メディアは自分自身にも厳しくあってほしい。

この映画は政治的立場がどちらであるかで意見が分かれるだろう。反権力思考の強い人ならブッシュ大統領ら権力からの圧力があり陰謀に負けたのだと読めるし、私はそうでないのでしっかり証拠の裏付けをとって報道するべき感じた。
放送される前からメイブスが先走っている気がし、モヤモヤしたまま真相が分からず無力感が残った。

ブッシュ大統領の軍歴問題はCBSによる誤報騒ぎで、うやむやになってしまった。権力に潰されてしまったとリベラルは主張しそうだが、もっと慎重に追い詰めてほしかった。メディアの責任は重い。証拠が間違っていたことで責任を取らされるのはさすがアメリカだったが。


原題「Truth」


真相も大切だが何が本当かわからない。なによりも未来を明るくしてほしいと願っている。