青山俳句工場05

俳句の今日と明日と明後日を語り合う。
見本誌ご希望の方は tosmiya@d1.dion.ne.jp まで。

青山俳句工場05第七十二号(2)

2017年06月10日 | 青山俳句工場05
「工員矢の如し」より。

第七十二回『テーマは「苦手なもの」。食べ物、飲み物、動物、植物、アレルギー、場所(高所など)、状況、行動、作業、乗り物、運動、音楽、文学、テレビ番組、人間のタイプ、人間関係、有名人、タレント、政治家、学生時代苦手だった教科、言われたら嫌な言葉、されたら嫌な行為など。こんなものいらない!と思うもの。苦手なものにまつわる思い出。私は苦手なものをこう克服した。好きだったものが一転苦手なものになった。など、ご自由にどうぞ。』

石川まゆみ◆苦手な動物は、蛇と百足。こう書くだけで「さぶいぼ(鳥肌)」が立ちそうです。
 もうひとつ苦手なものは、声が無駄に大きい人の長話。無駄に大きいというイメージは、一メートルほどの近くの人に対して、十メートル先の人に話すような声の人。しかも、周りで仕事をしている人もお構いなく延々と、きゃあきゃあと。
 言われたらきっと嫌な言葉は、「離婚じゃ!」。世のご夫婦、それを言っちゃあおしまいよ。言霊って、ほんとにありますからね。

伊藤幸◆何を隠そう、運動神経ゼロのわたくし。走りは無論の事、中でも腕立て伏せ、懸垂、これ等は一回も出来ない。一回もである。腕立て伏せをしようものなら伏せたまま、蛙を踏み潰したようにグシャッとなったまま。懸垂で鉄棒にぶら下がったら蓑虫ちゃんみたいにぶら下がったまま。「為せば成る!」そう云われ続け数十年、「成らぬものは成らぬ」のだ。
 父はオールマイティー、ノンプロ野球で名を馳せたらしくスポーツは何でも持ってこいの人であったが、どうも母似らしい。
 そういえば孫ちゃんも然り、逆上がりがどうしても出来ない。昨年「逆上がりできなくていいよ梨咲くよ」という句を詠んだ。運動神経ゼロの血は脈々と受け継がれている。……ああ神様、私に運動神経を与えてください……。

古知屋恵子◆異を唱えられないままイヤイヤそれをやり、異を唱えてやらない人に「ズルイ」という人。したいけどできないとあきらめているのに、それに挑戦する人を「ズルイ」という人。二枚舌とうわさ話。お金で物事を解決できると思っている人。自分の考えを表明せず後で人のせいにする人。理由に納得できないまま指示に従わされること。価値を見出せないことやものにお金を支払わなきゃいけない状況。暗黙の了解を人に強いる人。「それは必要」といってその隣りには住まない人(原発・墓地・ゴミ焼却所など)。

小松敦◆並んで待つことが苦手です。美味しいと評判のお寿司屋に出かけて行ってみたら行列していたので帰ると言って奥さんと喧嘩したことがあります。つい先日も評判のパン屋に立ち寄ってみたら並んでいたので帰ると言って彼女を怒らせたばかりです。でも、元旦の初詣などは並ぶと思って行きますし、並んでいる時間もいいものだと思うことはあります。予め覚悟を決めて並ぶとか、並んでいる時間に喜びを期待するような時はよいのです。が、よくわからずに行ってみたら並んでいた、というのはからきしだめです。ところで、そのお寿司屋には後日覚悟を決めて並んで食べました。とっても美味しかったのですが、あんなに並んで食べるくらいなら多少お金を出してでも並ばない旨い寿司屋を探したいと思いました。と、こんな風にくどくどと書くくらいですから、やっぱり並ぶのは苦手ですね。

佐藤鎮人◆苦手なものと言えば、やっぱり都会生活かな。そういえば友人の作家に言われたっけ。佐藤さんは都会では半分死んだようにしているが、自然の中では水を得た魚のように生き生きしていると。その友人が一生に一度でいい、自分で釣り上げた天然イワナの骨酒を飲んでみたいというので宮城県の渓流に同行した。薮漕ぎをして川に入ることになったが「僕は藪が苦手なんです」案の定、急斜面で滑落。餌の虫を手渡すと「それ苦手なんです」やっと釣り上げると「すみません、生魚を掴めないのです」。キャンプ場に戻り念願の骨酒を飲むときは実に一兆前。思わず一体どんな子供時代を送ったのと質問してしまった。得手不得手は誰にもあるもの。事実、彼のように都会生活を楽しむ能力を僕は持ち合わせていないのだから。顔は都会的なんだけど・・・・。

白井健介◆食べ物と飲み物については無いだろうと思います。逆に私が苦手と感じたなら、それは大多数の方が無理なものだよ、とすら言われる程です。はっきり苦手だと自覚するのは、物を捨てること、です。捨てられないんですよねぇ‥‥。あと高校に入って以降は数学、ですね。苦手というより、ほぼ興味が持てなくて。

芹沢愛子◆金子兜太先生が秩父道場で、「テレビでトランプ大統領の顔を見ると反射的に包丁を握りしめたくなる」と戦争の気配への恐怖を語った。学者から〈自己愛性人格障害〉とか〈サイコパス〉と言われるトランプの尖らせた口を見るとぞっとする。一番困るのは自分は平気で噓をつく(ポスト・トゥルースの時代とか)のに、「地球温暖化は嘘だ」とパリ協定を脱会したがるような感性だ。そしてプーチンに比べれば「政治的にはまるでおこちゃま」と言われるトランプや、日本の隣で権力をふるう「おぼっちゃま」が核のボタンを押したらと想像だに恐ろしい。温暖化以上の負荷が地球にかかってしまう。トランプに対して言われるような感情的、情緒的に行動してしまう性格の人は、たとえいい人でも話し合いができないので苦手です。時には、怒鳴ったり、殴ったり、泣きわめいたりできれば気持がいいかなと思うことも。

高橋洋子◆もう少しすると出てくる毒蛾の幼虫です。庭の至るところの木や葉っぱについていて、それこそウヨウヨと蠢めいています。しま模様があり、長い毛が、付いていてそれに触ると針のように刺さり、とても痒く赤く腫れ上がり広がります。ここ二、三年大発生しているのですが、これからの時期またあの毛虫を見るかと思うとぞっとします。

中村晋◆苦手なもの。整理整頓。とくに自分の作った俳句の整理ができない。以前はパソコンに打ち込んで置いたりしたけれど、いまはそれも面倒くさくて、ノートに書いて、そのまま。そして書きためたノートも散在していたりして。みなさん、自分の作った句をどんなふうにまとめているんでしょう? それから苦手なもの。選句。自分がいいと思う句が、他から見たらどうなんだろう、と考え始めるとわけがわからなくなってきます。かといって、自分の選句の基準というものを自分の中でがっちり固めてしまうのもつまらないなあと思うし、ほんとうにいつも揺れています。まあ、そこがいいところなんだろうけど、と思うんですけれど。その他にもいろいろ。乾杯前の長い話。甘ったるい声で甘ったるい歌詞を歌う歌手。ABE政権。

なつはづき◆嫌いなもの、と言われるとあれこれありますが、苦手となると…あ、ありました。犬、わんちゃんが苦手です。おかしなもので嫌いだとか苦手っていうと、向こうからやって来てしまうんですよね。数年前に勤めていたホームセンター、実はペット用品コーナーの担当でした。オープニングスタッフで採用され、配属発表されてみたらコレです。ペット同伴オッケーなお店だったので、担当ともなればそりゃもう毎日のようにわんこと遭遇するんですよ。「すいませーん。この子の服が欲しいので胴回り測ってくださいください!」ぎょえ!近寄るのも大変なのに寸法を測るですと?汗、汗汗汗汗…動揺して手が震え、何度も採寸していたメジャーを落としました。かと思えば、売り場で吠えられ、あひゃあ!とつい叫んでしまい、持っていた補充用の商品を全部床にぶちまけた事もありました。
 プライベートでもわんちゃんを飼っている友達が多くて、うっかり家に遊びに行って「わおん!」と言われること多々…。
 苦手は克服すべきか否か。というか、皆さんどうやって苦手なものを克服しているんですかね。犬に近づけば近づくほど苦手度が増します。克服は一生無理な気が…。誰か、わんちゃんと仲良くなれる方法を教えてください。

抜山裕子◆苦手なものは何かと問われて、では得意なものは何だろうと考えてみた。情けないことにこれというものが思い浮かばない。最近健康回復の為病院のリハビリを受けている。その一環としてアンケートを書かされた。病人相手だからと言うこともあって、精神状態に関する問いもある。『人と付き合うことが苦手である・知らない人の中に入っていかれない・人前で話すことが苦手である~~』等という設問に○×で答える形式。この項目は全て×だった。子供の頃は人前で意見を述べるという機会もあまりなかったし、どちらかと言えば大人しい子供だった。それが近頃は句会で話すことは苦にならないというより喋るのが楽しい自分でもズーズーしい人間になったなと、驚いている。色々な処に参加して、人と知り合って、歳を重ねてきた結果と思えば、歳をとるのも悪くない。
                           
藤田敦子◆「芋虫・毛虫」。蛇より苦手。小学生の時、友人の家の柿の木。もたれた幹にびっしり黒い毛虫が・・トラウマである。近所に植えてあった胡麻が一夜で葉がなくなった・・その大きく太い犯人たるや。学校の芋畑でも、悲鳴を上げて逃げた。なにより、アゲハの幼虫が直視出来ず、教科書のカラーページが開けなかった。そんな子供に、親は鬼である。理科研究のためにと、蚕を5匹貰ってきたのだ。益虫だろうが、白かろうが怖い。厳重に箱に入れ、桑の葉を入れてはすぐ閉める。観察どころではない。そうして繭が出来た。4つの繭が・・一つは黒く死んでいた。四隅しかなかったのだ箱には。悲しくて悲しくて詫びて泣いた。いじめや自殺の報道を見るとき、思い出す。理科研究よりも多くを学んだ夏だった。
 
山本幸風◆スピーチが苦手です。内容・順序を整理しておいたつもりでも、マイクの前に立つと、頭はいきなり真っ白、姿勢が変になって(背が高いから大抵マイクが低い)、自分が言った予定外の言葉に引っ張られ、話が思わぬ方向に迷走していく。若い頃から苦手で、そのうち慣れるだろうと思いながらここまで来てしまいました。なんとかならないものでしょうか。

青山俳句工場05第七十二号(1)

2017年06月10日 | 青山俳句工場05
参加者
有田莉多・石川まゆみ・石橋いろり・泉陽太郎・伊藤巌・伊藤幸・稲葉千尋
大澤十八番・岡村知昭・小野裕三・桂凜火・加藤昌一郎・川崎千鶴子
川崎益太郎・北上正枝・黒済泰子・小池弘子・古知屋恵子・小西瞬夏
小林八千代・小松敦・小宮豊和・近藤真由美・齋藤一湖・齊藤しじみ
笹岡素子・佐藤鎮人・佐藤千代子・篠喜美子・清水恵子・白井健介
鱸久子・関根かな・芹沢愛子・高橋洋子・蔦原説子・直野ふみえ・永井克明
中塚紀代子・中村晋・なつはづき・夏目るんり(初)・抜山裕子・野村眞理
帆万歩・平田恒子・平野菜穂子・藤田敦子・堀真知子・前塚満・増田暁子
松井麻容子・峰尾大介・宮崎斗士・望月士郎・山下一夫・山本幸風・渡辺惠子

「通信欄」より。

岡村知昭◆近況。春から夏へ、です。一日過ごしてると汗びっしょりになる日も出てきました。
 ゴールデンウィークのある一日、車を走らせているうちに「このままいけるところまで行ってみよう」と思い立ち、たどり着いたのは伊賀上野でした。はじめての街、というのは心浮き立ちます。駅前には大きな芭蕉像。街には忍者装束の家族連れがたくさん、なんだこれは、と思って聞いてみると、貸衣装で一日一〇〇〇円だそう。男子は青、女子はピンク。そして伊賀上野ですから「芭蕉翁記念館」にも入りました。記念館自体はそれほど大きくはないので、展示を見るのにさほどの時間はかからなかったのですが、じっくり見て行くうちに、芭蕉への興味がさらに増していきました。いつも鉄道を基準に作っている頭の中の地図を、微修正するいい機会でした。もちろん、俳句も作りましたよ。立夏目前、つつじが満開でした。
(宮崎→街には忍者装束の家族連れがたくさん、って凄いね。みんな小走りで観光するのかな。)

小池弘子◆近況。五月の連休は好天に恵まれ、農作業も畑仕事も疲れすぎるほど順調。そんな中毎年のことだが、毎日上空を飛ぶヘリコプター。ああ又遭難か。滑落死二名、骨折二名、救助されて一命をとりとめた者二名と新聞が報じた。
 目の前の剱岳、立山連峯はまだまだ真っ白だ。四月末にも雪は降ったばかり。都会の人は自信過剰と無知なるが故の命落しであり、家族や関係者には辛い現実となる。
 神々しい山々は人を阻んで寄せつけないのだ。
(宮崎→地元の方々もお辛いことでしょう。)

古知屋恵子◆はじめて「海程」の俳句道場に参加しました。とても刺激的な時間でした。金子兜太氏、宇多喜代子氏、池田澄子氏他、エネルギー溢れる年上の方々に接し、自分の未来がより楽しいものになる予感がしました。金子氏とは50才差。私も50年あれば何かを極められるかも。自分を磨きつづけようと決意を新たにしました。白黒木子という名でなく、絵を描く時と同じ、古知屋恵子で今後投句します。生まれてくるものをありのままに自分のものだと受け入れる覚悟で句を生んでいこうと思います。改めてどうぞよろしくお願いいたします。追伸 伊藤淳子さん、道場の写真ありがとうございました。
(宮崎→「エネルギー溢れる年上の方々に接し、自分の未来がより楽しいものになる予感がしました」何とも嬉しい一文です。古知屋さん、こちらこそ今後ともどうぞよろしく。)

清水恵子◆五月三日に、家の近くの交差点で、「アベ政治を許さない」のポスターを掲げる、七、八十代と思われる方々を見ました。憲法改正に危機感を覚え、いまだに活動を続ける平和への思いの強さに、頭の下がる思いです。その原動力はお孫さんへの愛情でしょうか。
 安倍首相は、戦争を実際に体験した世代の声に、もっと耳を傾けるべきだと思います。
(宮崎→同感です。)

芹沢愛子◆俳句工場の表紙を担当している美術家の古知屋恵子さん(俳号は白黒木子さん)が秩父道場に参加されました。作品展で何度か見ていた古知屋さんの紙芝居を、いつか海程の仲間にも見てもらいたいとの願いがかなって、夜の自由時間に鑑賞会を開くことができました。古知屋さんの紙芝居に合わせ、小松敦さんが原画のコピーをパソコンを通して映写するという方法をとりました。特別参加者の宇多喜代子さんが「決して声高でなく、淡々としているのがとてもいい」と感心されたように、ファンタジーを通して平和や自然や暮らしの大切さがしみじみと伝わってくる、素晴らしい作品とパフォーマンスでした。古知屋さんも反響の良さに刺激を受けたようで、息子さんが生まれて初めての一人旅を心から楽しまれていました。生まれ変わったつもりで俳号白黒木子をやめて、古知屋恵子という名前に統一すると言ってくれたのも嬉しかったです。いろいろなところで平和を訴える出前紙芝居ができるようになるといいですね。応援しています。
(宮崎→紙芝居、大好評で良かったです。僕は古知屋さんの紙芝居、それまでにも何度か見たことがあったんですけど、あの夜はまた特別な感慨がありました。沁みました。)

辻村麻乃◆青山俳句工場05第七十二号ご恵贈ありがとうございます。青山俳句工場05が届くとまず何故か工員矢の如しで皆さんの近況を読みます。そして持ち歩きながら選句。そして後からこれはこの方の句だったのか、と段階を経て何度も楽しめる雑誌だと思います。青山俳句工場05のご盛会をお祈り致します。
(宮崎→ご無沙汰しております。嬉しいお言葉どうもありがとうございます。佳き夏でありますように―。)

夏目るんり◆ずっと年下の俳句の先輩、なつはづきさんにお誘いいただき今号からお仲間に入れていただくことになりました。俳句を始めてようやく小学校卒業かなーというくらいの年数ですが三日坊主の私にしては驚異的です。たくさんのすてきな俳人の方々に出会えたお陰だと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
(宮崎→ご参加嬉しく思います。今後とも末永く、どうぞよろしくお願い申し上げます。)

松井麻容子◆近況報告。今、北陸新幹線が福井までのばす工事をしている最中です。嬉しいことですが、田舎ののんびりとした風景にドカン、ドカンと橋ゲタなど建ってしまうとちょっと残念な気持ちになります。限りなく広い空の田舎がちょっぴり減ってしまいました。でも、まだまだ圧倒的に田舎です(笑)。
(宮崎→「ちょっと残念な気持ちになります」‥‥その気持ちわかる。)