今日の川柳
15号指を加えるテレワーク
じゅうごごうゆびをくわえるてれわーく
Telework companies continue to operate as usual in the event of a disaster.
ふだんテレワーク志向の会社に軍配が上がる。
災害大国ならではの将来性。
おっ母さんあれがカジノと詫びを入れ
おっかさんあれががじのとわびをいれ
Mother, that's the casino that destroyed me.
お前が悪いんじゃない、病気だから仕方ないよ。
恐竜が俳句のお題夢現
きょうりゅうがはいくのおだいうゆめうつつ
At last, the dinosaur became the title of the haiku.
先日、NHKの俳句教室でお題になった恐竜。
恐竜が俳句のお題になるなんて芭蕉翁もびっくりしているだろう。
選者の先生もかなり苦戦しておられた。
【参考】
お題「恐竜」 特選句 NHK HPより
選者:夏井いつき
落着きのなき恐竜もゐて小春 板柿せっか
進化の過程で様々な特性を得ていった「恐竜」たち。
中にはこんな恐竜もいたかもしれません。
忙しなく周りを見回したり、飛び跳ねている姿を想像すると愉快。
冬の最中のふっと暖かさの差す「小春」が一層彼らをそわそわさせそうな気がしてきます。
第六絶滅期最中にゐて涼し 寺沢かの
ある時期に多くの生物種が同時に絶滅することを「絶滅期」と呼ぶそうです。
最も近くに起きた第五絶滅期は約6600万年前。
恐竜たちもこの絶滅期で滅びました。
そして現在、地球は「第六絶滅期」を迎えているそうです。
驚愕と同時に「死」という無常を冷静に受け止める作者。
肉体だけでなく心理にも及ぶ「涼し」。
ユリノキの花恐竜の目の高さ 野村かおり
ユリノキは15メートルほどにも成長する大きな木。チューリップのような大ぶりの花をつけます。
「ユリノキの花」を見上げ、俳人は夢想します。
恐竜がいたらこれくらいの高さかしら、枝ごと花をむしって食べるのかしら。
カガクとの出会いが俳人の想像をもっと楽しくしてくれます。
恐竜は死んだ蛙は生き延びた 平本魚水
ばかばかしいけどこんな率直な句も好きだなあ!
巨大な「恐竜は死んだ」、しかし小さな「蛙は生き延びた」。
大小を対句表現で並べることで詩を生み出す型。
恐竜たちがいなくなった大地に次々と増えていく「蛙」は小さな身体で世界に音を発し始めます。
恐竜の肌は虹色かも素風 ひでやん
近年の技術発達の結果、昔はわからなかった恐竜の色までが判別できるようになってきました。
ひょっとしたら「虹色」の恐竜もいたかもしれない、なんて驚きです。
秋の風は色なき風、素風とも呼ばれます。恐竜に生えた色とりどりの羽毛を素風はそっと戦(そよ)がせていたのかもしれません。
恐竜の骨に噛み跡夏の空 くま鶉
夏空の下での発掘。「恐竜の骨」に見つかった不自然な凹み。
これは他の恐竜が噛みついた跡だ、と断定される。
そこから科学者たちの思考は広がっていきます。彼らはどんな生態だったのか。
襲った恐竜の数や種類は。尽きることない科学者たちの探求心を吸い込んで夏空は青く広がります。
化石竜の眼の穴の闇秋の声 高橋寅次
組み上げられた恐竜の骨格標本。
本来眼球が収まっているべき眼窩(がんか)はぽっかりと闇があるばかりです。
「秋の声」は天文の季語でありながら、心理的わびしさをも含んだ季語。
「目の穴の闇」を吹き抜ける風、あるはずのないその物音まで聞き止める俳人の聴覚。
恐竜の胃石ごろごろはたた神 中山月波
恐竜たちは食べたものを胃の中で砕くために石を飲み込み、「胃石」として体内に留めているそうです。
発掘と共に出て来る「胃石」の数々。
かつて恐竜の胃の中でこの石たちが「ごろごろ」と肉も骨も砕いていたという事実に驚きます。
「はたた神」の轟(とどろ)きもごろごろと発掘現場をどよもす夏の日。
小鳥来てひろびろ恐竜の眉間 香野さとみ
恐竜は進化の過程で大きな身体を捨て、空を飛ぶ力を手に入れました。
そして現在の鳥へと姿を変えていったのです。
今窓辺にくる「小鳥」の鮮やかな羽色も恐竜たちから受け継いだ色彩かもしれない。
もし恐竜たちの時代にも「小鳥」たちがいたら、恐竜の広い眉間にも止まったかもしれない。
時代を越えた俳人の色鮮やかな夢想。
図鑑よりプテラノドンの飛びて雪 きさらぎ恋衣
一読、飛び出す図鑑を想像しました。寝る前の読書でしょうか。
ページを開くと立体に立ち上がって空を飛ぶ「プテラノドン」。
外には静かな雪が降っています。
楽しい気分のまま眠りに落ちた夢の中では本物のプテラノドンが空を飛んでいるのかも。
恐竜 佳作
万緑や恐竜の影隠しけり 野中泰風
灯火親し化石に翳す拡大鏡 腹胃
滴りやコバルトの羽閉じ込めて 板柿せっか
恐竜といたでで虫の琥珀かな 播磨陽子
時の日や恐竜の糞掘り当てり 島立隆男
恐竜の羽根の色して色鳥来 中岡秀次
恐竜の卵に罅や大夕焼 青海也緒
虹見ればきっと優しくなる恐竜 清水風流
籐椅子は揺るる進化論すら定まらぬ 松浦麗久
春の雪始祖鳥の目の開きけり 穀雨
足跡の化石の三つ春の月 亀田荒太
竜の首丸く畳まれ合歓の花 霞山旅
爽やかや恐竜と居るゴビ砂漠 花紋
囀りに混じる咆哮らしきもの 井上三重丸
恐竜の極彩色の鶏冠炎ゆ みねらる
森のごと恐竜の骨遠花火 クラウド坂の上
ブロントサウルスの足跡湖へ大夕焼 あまぶー
ブラキオサウルスみたいな橋を走る夏 あいだほ
白亜の夏竜の色とりどりの生 しかもり
あの蜃気楼眠れる恐竜のいびき ヒカリゴケ
火食鳥の爪恐竜の爪油照 ゆすらご
ハンマーとタガネ仕舞いて麦茶かな 宇田建
夏の月白き化石のキンと鳴き 宮のふみ
遠花火今なお卵抱く化石 桑島幹
八月十五日恐竜は骨晒す 斉藤浩美
胃袋に石の記憶の良夜かな 土井探花
優しい竜でした抱卵の霜夜 富山の露玉
恐竜と鰐と駝鳥と赤まんま 椋本望生
傷だらけの恐竜の爪冬籠り 芍薬
遠雷やプテラノドンの骨密度 あみま
恐竜吼える吼える銀河の疼くほど ぐ
恐竜の系統樹枝先には小鳥 くりでん
たゆとうて海竜の子を成す良夜 けいこ
ユタ暑し恐竜に三百の骨 さるぼぼ
春光や紅き羽毛の竜番い しかもり
竜の骨撫でる熱砂の音のさやか しゃれこうべの妻
恐竜の目脂あふるる夜長かな しゅんや
恐竜の卵今宵の月の罅 どかてい
青鷺の恐竜だつたこゑの池 ときこ
中生代の岩をけずりて滝落つる ひなた
亀鳴くや隕石落下後の世界 ゆすらご
恐竜の色にも似たり朱夏の夢 よだか
恐竜の糞はつるつるレモン水 安宅麻由子
槌音や熱砂噛みつく歯の化石 一斤染乃
膝を折る恐竜 長き夜の抱卵 榎並しんさ
恐竜の爪先ほどの石竜子かな 佳山
その中に翼竜の子も小鳥来る 樫の木
春を待つ太古の竜の血は琥珀 岩のじ
おろろおろろと恐竜哭くや夏の月 久我恒子
鉤爪の抱卵地平線ぬくし 宮武みかりん
恐竜の生まるる水辺星月夜 玉響雷子
風の死は化石とならず石を蹴る 綱長井ハツオ
梅雨晴間コプロライトに紅散りて 克巳
満月へ恐竜求愛の叫び 彩楓
恐竜の新樹にからむ長き首 斎乃雪
はじまりは小さな欠けら山滴る 坂井見居代
剣竜の昂りのまゝアロエ咲く 次郎の飼い主
白南風や恐竜前傾に走る 小泉岩魚
灼かれゆくトリケラトプスの首に傷 小野更紗
暴龍の足跡のいま青泉 雪井苑生
馬乳酒を飲み干すバヤンザクの夏 池之端モルト
風の秋トリケラトプスは夢を見る 天弓
月光やモササウルスの胎にゐて 田尻武雄
炎天や恐竜の背は放熱す 播磨陽子
日盛りやタールピットの青光る 飯村祐知子
満月をあく海竜の子宮口 比々き
恐竜に母性泰山木の花 片野瑞木
亀鳴くや竜の化石に二次性徴 北野きのこ
魚捕らえた翼竜ら夏暁へ 打楽器
朧夜や子を抱く恐竜の乳房 満る
恐竜の黴かもしれぬ背の福毛 福村まこと
進化とは存外速し時鳥 播磨陽子
プテラノもイグアノも「ドン」西瓜食む 渡邉竹庵
ダークマター降る白亜紀や星冴ゆる 中島容子
恐竜の知性母性や夏の露 大村真仙
霾や記憶現すゴビ砂漠 蒼介
山河けふ竜を飲み込む氷かな ちびつぶぶどう
野尻湖のナウマンゾウや水草生ふ ときめき人
日盛りやコプロライトに虫とまる 乙子女
刺しやすき皮膚はあるまじジュラ紀の蚊 古田秀
みゆうみゆうと子恐竜鳴く夏原野 宙のふう
海竜の腹に胎児や望の月 田辺みのる
下闇を血の香追ひゆく獣脚類 彼方ひらく
丹波竜化石も孕む栗の里 ふわりねこ
恐竜の癌に呻くか夏の夜 京野さち
川柳しま専科 2019
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