だいすき

基本的に自分の好きなものについて綴っていきます。嫌いなものやどうでもいいこと、さらに小説なんかもたまに書きます。

『S・B・R』最新刊

2007年03月08日 00時24分43秒 | 漫画やアニメが好き
 荒木飛呂彦先生が書く『スティール・ボール・ラン』の最新刊を読んだ。

 凄すぎ!

 いや、マジで!

 最後に載っていたエピソード。あれは凄いよ。僕ああいうの大好き。もう、ワクワクが止まらない。

 あるものを求めて主人公達が訪れた場所には怪しげな少女がいた。
 少女はどこかおかしかったけれども、主人公達はそのからくりにすぐに気づいて求めていたものを手に入れた。
 そして、そこからこのエピソードはスタートする。
 最新刊で語られたのはルールと状況。
 その場所で主人公達は欲しかったもの以外のものも手に入れた。というか、押し付けられた。返却は不可。普通に考えれば手にして困るものではないんだけど、そこはほら、普通じゃない。
 そこで手にしたものは、その日のうちに使い切らなければならない。そうでないと、主人公達には悲惨な末路が待っている。
 さらに、敵が迫っている。その数十一。
 一頭の馬に全員で乗り、足音を誤魔化して忍び寄る奇妙な敵が。

 いつも思うのだけど、荒木飛呂彦先生はルールと状況作りが抜群にうまい。もちろん作画やキャラの造形も秀でているのだけど、僕としてはこのルールと状況作りの巧みさを推していきたい。
 荒木先生はインパクトを大事にする。まぁ、他の多くの人もそうだろうけど、このインパクトの大きさも他の人と比べたらずば抜けているだろう。
 今回はまず、追っ手が来る所から状況作りが開始された。主人公のひとりがいち早く追っての存在に気づき、パートナーに伝えるのだが、この情報を最初間違って伝えるのだ。
 つまり敵の策に最初は騙されるわけだ。
 といってもすぐに気づき訂正するから、この段階では主人公達にさしたる危機は迫ってはいない。
 主人公達は追っ手から逃れつつ、目的のものを手に入れようと急ぐわけだが、ここで奇妙な人物が登場する。
 見るからに怪しげな少女はどうやってだかはわからないが、主人公のひとりの大事なものを盗み、自分の家に持ち帰ってしまう。
 ここまでの読者の食いつきはそこそこだと思う。そこそこ悪い、ではなく、そこそこ良いだ。
 何故なら、良し悪しを判断するほどの情報がまだ提示されていない。わかるのは謎だけ。主人公たち同様の疑問を抱き、追いかける主人公達の行方を知るためにページをめくる。
 そこででてくるのが少女の家だ。家もそうだが少女の言動も奇妙奇天烈ない。おかしな事だらけなのだが、ふたつだけわかることがある。
 ひとつは、物語の流れからいって主人公達の探し物はここにあるだろう、ということ。
 もうひとつは、少女の言動がある有名な物語をなぞっているということ。
 この二つは主人公達もすぐ気づく。そして、物語通りの行動を取って、目的のものを手に入れる。
 ここで読者は警戒するだろう。このまま終わるはずがない、と。
 この警戒というやつが大事なんだ。別に警戒でなくても構わないのだが、冒頭で読者の心を揺さぶる。警戒でなく、安堵でも不安でもいい。
 とにかく読者の心の平静を崩さないといけない。それこそが読者の心を掴む、ということに他ならないからだ。
 そして語られるルールの説明。
 普通であれば飽きるシーンだけどそうはならない。警戒している読者の心はもう普通ではないから。
 そら、きた! とばかりに食いつくだろう。
 さらにラストのカットでは追いすがる敵の不気味な姿を描いて、状況の再確認を読者に迫る。
 これで完璧。次はどうなるんだろう、と続きを読まずにはいられない。

 とまぁ、口で解説するのは簡単なんだけど、実際に書くのは難しい。
 これに憧れ果敢にチャレンジする人たちが沢山いるけれども、そのほとんどが失敗しているくらいだ。
 ちなみに僕が感じる失敗作の中には、コアなファンも多いだろう有名作品が多数含まれているので、詳しくは書かない。
 とにかく、ルール説明。さらには駆け引きのドキドキ感を与えてくれる漫画はそう多くはないよ。

 そういう意味で僕は荒木飛呂彦先生を尊敬しているし、先生の描く漫画が大好きだ。

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