ショートショート 『 虫 』

「虫」

「たいへんな事になった」
今日、何度、この言葉を口にしたことだろうか。

阿相総理は、緊急事態と判断し、各方面にひそかに指示をだした。

原因はわかっていた。
そう、虫なのだ！新種の虫！
生物学者からの報告では遺伝子配列を調べた結果、こいつは宇宙から飛来した異星の生物の可能性もあるらしい。

日本中で突然現れたこの被害。

緊急事態で現在、日本は世界中から隔離状態にある。
特にアメリカ側の判断は迅速だった。


…そんな事はどうでもいいんだと総理は、心の中で毒づく。

その…虫が…その…つまり人間のお尻に。
その…虫が…その…つまりお尻の穴に。




虫は肛門から入り込んで大腸に寄生し、その後、その触手を伸ばし全身に広がる恐ろしい生物。

外科的に取り出すことは不可能、薬剤で始末も出来ない。

だが…不思議なことに、患者は特に命の心配もなく、病気になるわけでもない。

いや！むしろ逆で、取リ憑かれた人間は寄生されたときに持っていた持病は改善され、心も体も全くの健康体　になる。




末期的な癌、様々な病気、その他、精神的疾患さえも改善するのだが…

…そんな事はどうでもいいんだと総理は、心の中で毒づく。

この虫に寄生された政治家には大問題なのであり、致命的になってしまうのだ。
すでに寄生された外務大臣、官房長官は現在、虎の門病院で隔離入院中だ。

寄生されれば私の政治家生命は終わりだ…
他の国内の政治家も、世界各国の政治家も同じ思いのはずだ…



そう！大問題！なのだ。



この　虫　に取リ憑かれた人間は、ずべて　正直者　になってしまうのである…



《　お　わ　り　》