もんくうさぎのブログ

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スウェーデンについて②

2015-01-17 16:14:02 | 国際・政治
教育制度

 スウェーデンの義務教育は7歳から16歳までの9年間。その9年間で、子供は基礎学校という学校へ通う。
 そして、その上に高校、大学もしくは職業大学と続くわけだが、これらの学校および義務教育前の0年生クラス、すべて学費は無料である。加えて、大学以上を除き、給食も無料、学用品も一部支給される。
 ほとんどが公立だが、私立のフリースクールもある。これは基礎学校プラス高校の期間が対象。驚くべきことに、このフリースクールの学費も無料。で、フリースクールはそれぞれユニークな学習法をやっていて、ある学校では、日本じゃ当たり前の一斉授業がなく、ほとんど生徒の「自習」中心なのだという。生徒自身が自分の時間割を作り、自分の好きなペースで勉強を進めていく。教師はときどき助言を与えるだけ。先生楽じゃん、と思った人、かなり洞察力が低いですぞ。生徒の自主性に合わせた指導というのが一番難しい。いつでも疑問に答え、かつ学習意欲をそがないためにの教科に対する完璧な知識と生徒を把握する力が必要だ。こういうフリースクールの先生はおそらくかなりレベルが高いはず。
 日本じゃ私学というと、こういうフリースクール系は例外なく学費がべらぼうに高い。お受験を意識した私学もあって、これはエスカレーター式、スパルタ式(?)いずれも親子双方覚悟がいる選択だ。一方スウェーデンには大学入試というものがない。受験地獄とは無縁の社会らしい。だから、公立か私立か、どっちを選ぶのか、これはまったく子供自身の好みの問題といえる。それでも、人気あるフリースクールは入学希望者が殺到する。どうやって選抜するかといえば、待ち時間の長さで決めるとか。すなわち、申し込み期間が長かった人から優先的に入学させるのだ。
 公、私立、両方を通じて、スウェーデンの義務教育の中心にあるのが、「自立を学ばせる」ということである。この社会で生活するためには何が必要か、自分はどういう形でこの社会に参画していくのか、そのためにはどのような考え方が必要か。これはすべての教科に共通している。
 例えば社会科。すべての教科書が、「民主主義とは何か」で始まる。そして次のような項目が並ぶ。①民主主義と権力 ②民主主義の成長 ③社会の問題 ④経済 ⑤国際協力 ⑥地球の開発 ⑦国際的視点 ⑧労働生活と将来 ⑨マスメディアと広告
 ⑧で書かれていることが、けっこうぐっとくる。労働の意味を問う箇所にこうある。「私たちはなぜ働くのでしょうか。たぶん働くことに意義があるからでしょう。私たちは誰かに必要とされ、それが自分のため、他人のために意味があるこということが重要なのです。その意味が感じられないとき、仕事はただお金を稼ぐためだけのものとなり、つまらなくなります」
 高校に入ると、職業へのアプローチはより具体的になる生徒たちは、全国共通の18のコースから自分の道を選択する。それは職業プログラムとして、①児童・余暇活動 ②建設・施設 ③電気・エネルギー ④自動車・輸送 ⑤商業・事務 ⑥工芸 ⑦ホテル・ツーリスト ⑧工業技術 ⑨天然資源 ⑩レストラン・食料品 ⑪水道・建物 ⑫看護・介護。高等準備プログラムとして①経済 ②芸術 ③人文 ④自然科学 ⑤社会科学 ⑥技術である。
 スウェーデンに入試はないのだが、やはりここでの何らかの「選抜」は避けられない。で、何で判定するかというと、学校の成績。これは毎日の小テストや課題のレポートの点数の積み重ね。だから、希望の高校コースを目指している生徒にとっては、日々の学校生活は気が抜けない。とは言うものの、一度選んだコースが自分にあわない、途中で進路変更するのは比較的簡単。とりあえず選んで、自分にあわなかったら変更してOK,どんどんいろんなことを体験してみて自分の道を見つけろ、というのがスウェーデンの教育の根幹にあるようだ。

 自立を促す、という言葉からは、ややもすると冷たい響きがする。が、スウェーデンの教育がやってる自立を促す教育は、冷たいどころか、手厚く、子供に対する暖かさが感じられる。そして、自分の道を早く見つけ出すことで、自分はこれを選んだが、人はこっちを選択したというように、社会にある多様な価値観に気付かされる。昔、日本で「世界でひとつだけの花」という曲がヒットしたが、この歌詞内容は、いわば現在の日本社会の裏返しだ。みんな均一にみなされた上で競争させられる社会だからこそ、この曲の歌詞に強烈なあこがれを抱くのだ。スウェーデンでこの曲の歌詞は受け入れられるだろうか。自分の花を咲かせるため徹底的にリアルな教育をしている国で、人々はこの曲をどう捉えるか興味がある。