心が満ちる山歩き

美しい自然と、山に登れる健康な身体に感謝。2019年に日本百名山を完登しました。登山・街歩き・温泉・クラシック音楽‥‥

南アルプスの三千メートル峰をめぐる(10) 聖岳の山頂へ

2016年10月27日 | 中央アルプス・南アルプス


千枚岳(2,880m)・悪沢岳(3,141m)・赤石岳(3,121m)・聖岳(3,013m)
(つづき)

 頂上が見えたと思ったらまだ頂上ではなかったというのが2回あった後、やっと山頂の標識らしいものが見えました。思わず両手を挙げて、バンザイを叫んでしまいました。長い登りが終わったことの安心感もさることながら、聖岳のピークが「聖」の字にふさわしい特別な場所だったからということもあったと思います。
 去年は加賀の白山で御来光を臨み、百数十人はいたであろう山頂で、神主さんの掛け声でいっせいに万歳三唱が行われました。もし山頂に自分一人しかいなくても、自然にバンザイが出たに違いありません。聖岳や白山の頂上のような場所は数えるほどしかないでしょう。
 早朝は曇っていた空が次第に晴れてきました。頂上に辿り着いたのを祝福するかのように晴れてきた‥‥物語のようなことが本当に起こるんだなと思いました。
 東側には雲の上に富士山、西側にはやはり雲の上に御嶽の頂上。間近には昨日登ったばかりの、果てしなく大きな赤石岳。そして山と山の間に小さくたたずむ、百間洞山の家の紅色の屋根。


 「よほど、正直に判断しているつもりでも、また芸術についてべつだん考えたこともないから、偏見だとか固定観念などもっていないと思っても、じつは大人になるまで目にふれ耳にしてきたすべてが、知らず知らずのうちに、膨大な知識・教養になっているのです。それらは、物ごとにたいして目をひらく力にもなっています。しかしその反対に、ものを自分の魂で直接にとらえるという、自由で、自然な直観力をにぶらせていることもたしかです。
 (岡本太郎『今日の芸術』(『岡本太郎の宇宙Ⅰ 対極と爆発』から)ちくま学芸文庫)

 登山を初めてまだたったの5年ですが、その間に色々な日本アルプスの山々を見て、山頂に立ってきました。今ではつい登ったことのある他の山と比べてしまいますが、それでも聖岳には他の山にない魅力があると確信できます。聖の山頂は広すぎず狭すぎず、立派さと開放感を併せ持っています。5年たっても、「自由で、自然な直観力」はにぶっていないと思います。そして、聖岳のような素晴らしい山に登った時にはいつも、こつこつ山登りを続けてきてよかったと心から思います。





 (登頂:2016年9月上旬) (つづく)



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